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紳士「お暇でしたら保健室の先生になってみませんか?」1/5

紳士「お暇でしたら保健室の先生になってみませんか?」


紳士「お暇でしたら保健室の先生になってみませんか?」



1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 02:55:52.84 ID:XELzicwT0
男「保健室の、先生……?」

紳士「はい、ご興味はありませんか」

男「興味はあるが……いやいや、お前は誰なんだ」

紳士「これは申し遅れました」

紳士「私、紳士です」

男「深夜の人の家に不法侵入する紳士があってたまるか」

男「出ていかないと警察に通報するぞ」

紳士「女学校なのですが」

男「やります」




 


元スレ
紳士「お暇でしたら保健室の先生になってみませんか?」



4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 03:06:52.54 ID:XELzicwT0
紳士「貴方も紳士のようですね、話が早くて助かります」

男「半分冗談だ。で、お前は誰なのか」

紳士「うーん、紳士だと言っているのに」

男「納得できるわけないだろう」

紳士「強いて言うのであれば、職業斡旋家でしょうか」

紳士「ちょっと特殊なやり方をしていますが」

男「なんで俺の部屋にいる」

紳士「まあまあ、そういきり立たずに」

紳士「せっかくやると決まったのですし、本日はご就寝なされてはいかがですか」

男「いや、そこははっきり――」

紳士「朝起きれば、分かりますよ」

ぷつりと、意識が途切れた


5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 03:13:57.31 ID:XELzicwT0

何かがおかしかった

男「む……?」

もぞもぞと手を動かして
おかしなものの正体を突き止める

男「ない」

紳士「お目覚めですか、おはようございます」

男「俺の……あれがないぞ」

紳士「おや?」

男「息子がいない」

男「ふくらみがある」

男(女)「なんじゃぁああぁああこりゃぁああああああああああッ!!」

紳士「落ち着いてください」

紳士「さびしい一人暮らしとはいえ一戸建てではないのですから、朝はお静かに」

男(女)「なんで女になっているのか」

紳士「中々胸の方も大きいですね」



 
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 03:27:08.38 ID:XELzicwT0
紳士「ああ、もう始業の時間が迫っていますね」

紳士「着替えはこちら、持ち物はこちら。ささ、急いで」

男(女)「いやいやいやいや、いやいやいやいや」

紳士「いやいやしないでください。遅刻は嫌いでしょう貴方」

男(女)「ぐぬぬ、遅刻は確かにしたくないが……」

男(女)「だってこれ! おかしいだろ!」

紳士「説明は後でいたしますから」

紳士「今は夢だとでも思って、とにかく支度をしてください」

男(女)「くそ、後で絶対説明しろよ!」



 
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 03:41:25.66 ID:XELzicwT0
紳士「似合っておりますよ」

男(女)「さ、様にはなってるな……」

紳士「はい。では、行き先はこの地図の通り」

男(女)「その学校ならバスで行けるな」

男(女)「だが、行ったらどうすればいいんだ?」

紳士「こちらをお読みください」

男(女)「ほ、保険の先生お仕事ノート?」

紳士「マニュアルのようなものです」

ぱらぱらと捲ってみる

男(女)「可愛い字、書くんだな」

紳士「……人は見かけによらないというものです」


 
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 03:57:47.92 ID:XELzicwT0
近くのバス停から二十分
俺は目的の場所で降りる

男(女)「とりあえずギリギリ遅刻じゃないな」

男(女)「……まずはえっと、校長室でタイムカードを切ればいいのか」

男(女)「職員室じゃないんだな」

てくてくと歩いて、校門

男(女)「……女子高等学校、ね」

私立の学校とあって、公立と比べればどこか花のある校舎だった

男(女)「むむむ」

だがそれよりも、ちらほらと見える生徒の全てが女性だという点が、どうにも気になって仕方ない

男(女)「とりあえず校長室は……」

俺は「保険の先生お仕事ノート」に目を落としながら、校舎に入っていくのであった



 
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 04:11:15.23 ID:XELzicwT0
男(女)「おはようございます」

校長「おはようございます。ギリギリですよ」

男(女)「す、すいません」

校長室が分からず、少し手間取ってしまったのだ

男(女)(タイムカードは、あれかな)

ICカードを挿入する形式になっており、俺は持ち物のなかにあったそれを挿入する

男(女)「では、失礼します」

とくに校長の返事は無かった

男(女)「とりあえずこれでいいんかな」

男(女)「さて次は……、保健室に移動して白衣を着る、か」

男(女)「……」

男(女)「どこだよ保健室」

また手間取りそうだった


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 04:18:41.48 ID:XELzicwT0
既にHRが始まる時間がせまっているからか、校舎には生徒が増えてきた
俺はいまだに保健室が見つからない

男(女)(聞くしかないかな……)

俺は手っ取り早く、近くにいた眼鏡の女の子に声を掛けた

男(女)「あの……、保健室ってどこだっけ」

女の子は驚いた顔をしていた

眼鏡娘「え……? あ、えっと、あっち……、すぐそこ、です」

男(女)「お、ありがとう」

眼鏡娘「は、はいっ、では……っ」

女の子はそそくさと立ち去ってしまった

男(女)「うーん、俺、怪しいのかな」


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 04:28:40.38 ID:XELzicwT0
保健室は、校舎一階の端っこにあった

男(女)「角部屋か。窓が多くていい」

ちなみに俺の部屋、205号室も角部屋である

男(女)「白衣白衣っと……」

がさがさ

男(女)「これか、よし」

男(女)「白衣は初めてだが、気がひきしまるな」

男(女)「……」

ふと落ち着いて、思う
状況の違和感が、ものすごい

男(女)「……どうなってんだろうなあ、俺」



 
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 04:35:08.29 ID:XELzicwT0
とりあえず俺は、目先の仕事をこなす事とした

男(女)「まずは水質検査ね」

保健室の棚から、簡易水質検査キットとやらを取りだす

男(女)「こいつで毎日水道水の検査、か」

ノートには、簡易的な水質検査は毎日行うとかいてあった
他に月一のものと半年に業者と共に行うものがあるらしい

男(女)「保険室の先生って、仕事してるんだな」

正直、保健室で一日ダラダラとでもしているのかと思っていた

男(女)「それじゃあ行こうかね」



 
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 04:43:56.12 ID:XELzicwT0
ついでに校内を見回ろうと思って、保健室をでた
HRの時間だからだろう、廊下に生徒はいない

軽く歩いてから、手近な水道で蛇口をひねる

男(女)「む?」

ビーカーに水を入れて色の確認をしている時だった

眼鏡娘「あ……」

男(女)「どうした、HRの時間だろ、今」

眼鏡娘「あ、えと……」

男(女)「……?」

眼鏡娘「……、た、体調不良、ですっ」

男(女)「あ、なるほど」


23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 04:56:08.72 ID:XELzicwT0
男(女)「とりあえず、……えーと、そうだ。熱をはかって」

保健室に彼女を連れてきてすぐ、俺はノートを見る

男(女)(どどどどどうすりゃいいんだ)

内心、焦りまくりであった
なにせ俺は保健室の先生の仕事などしたことがないずぶの素人である

男(女)(えーと、なんだ、まず、ああ、保健室利用カードに名前を書くのか!)

男(女)「こ、ここ、これに君の名前を書いて」

眼鏡娘「は、はい」

男(女)(つ、次は……えっと……)


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 05:05:47.44 ID:XELzicwT0
男(女)「くそお……」

眼鏡娘「あ、あの、どうしました……?」

男(女)「え? あ、いや、なんでもないぞ……!」

ピピッ

男(女)「い、いくつだ?」

眼鏡娘「……36度2分です」

男(女)「平熱か……、えーと」

平熱の場合は、しっかり顔色を伺う
生理かどうかも確認

男(女)「なっ」

眼鏡娘「……?」

男(女)「い、いや……。えーと、今日は、あの日か?」



 
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 05:18:40.50 ID:XELzicwT0
眼鏡娘「あの日……?」

眼鏡娘「あ、ああっ、違います」

男(女)「そそ、そうか……」

男(女)(なら、なんでだろう)

ノートを読み進める

男(女)「……ふーむ」

眼鏡娘「あの」

男(女)「ん?」

眼鏡娘「先生、男の人みたいな話し方、するんですね」

男(女)「えっ」


27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 05:30:12.67 ID:XELzicwT0
男(女)「よ、よく言われるんだよねそれー」

男(女)(ばれたらまずい、とは言われて無いけど……)

実は男です、とは言えるわけが無い
俺は隠すことにした

男(女)「もっと女らしくしなきゃ、いけないよね」

眼鏡娘「い、いえ、私は、好きです……よ?」

男(女)「あ、あはは……」

男(女)(す、好き!?)

初めてそんな事をいわれたので、俺は顔が赤くなる
隠すために、ノートに目をおとした

男(女)(え、えーと、えーと……)



 
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 05:38:31.78 ID:XELzicwT0
ガラッ

黒髪「あ、やっぱりここにいたんだね」

眼鏡「ふえっ」

黒髪「ほら、これ」

眼鏡「あ……」

黒髪の、少し目の釣りあがった少女が、無愛想に差し出したのは
可愛らしい、髪留め

黒髪「取られてたんでしょ」

眼鏡「……貸してって、言われて」

黒髪「またそんな。貴方が自分のためにつけてきたんでしょ、これ」

黒髪「嫌なら、ちゃんと言わなきゃ」

眼鏡「う……」


 
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 05:44:25.09 ID:XELzicwT0
男(女)(ああ……)

保健室の用途は、生徒の体調不良や怪我の手当てをすることだけではない

男(女)(そういうこと、だったか)

一時間目開始のチャイムが鳴った

黒髪「教室戻るよ」

眼鏡「……」

黒髪「せっかく久しぶりに学校へ来たのでしょう。保険室の先生にも迷惑かかるよ」

眼鏡「……うぅ」

男(女)「あー」

男(女)「そういうことなら、まだいてもいいぞ……こほん、いいよ」



 
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 05:55:45.21 ID:XELzicwT0
黒髪「先生、甘やかしちゃだめです」

男(女)「しかしこの子も色々あるようだし。ここは多目に」

黒髪「だって、今ままで学校にほとんど来て無いんですよこの子」

男(女)「だからこそじゃないか」

男(女)「久しぶりに来たなら、まずは学校に慣れるところから始めようよ」

眼鏡「あう……」

黒髪「しかし……」

男(女)「ね? ここは俺――こほん、私に免じて」

黒髪「……むう」

黒髪「……分かりました」

黒髪「あんまり長居しちゃ、ダメだからね」

眼鏡「……! あ、ありがとうっ」



 
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 06:11:30.08 ID:XELzicwT0
昼休みになった

男(女)「んー、案外仕事ってあるんだな」

朝の水質調査にはじまり、校内の見回り、全校生徒の出欠席の確認及びまとめ
そして怪我をした生徒への応急処置
とりあえずここまでは、素人でも見よう見まねでなんとかはなった

しかし教育委員会から送られてきている文書の事務処理や、掲示物の作成となると、難しい
俺はノートに向かいながら、午前中の大半をすごした

男(女)「読みながらいけば、なんとかなるかな」

黒髪「先生」

男(女)「うお」

黒髪「気づいていなかったんですか?」

男(女)「ああ、すまん――じゃなくて、ごめんなさいね」

黒髪「……。あの子は?」

男(女)「そこのベッドで寝てるよ」


39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 06:19:00.78 ID:XELzicwT0
黒髪「……ぐっすり寝てますね」

男(女)「そうだね」

黒髪「朝はちょっと、厳しくしちゃったかな……」

男(女)「ん?」

黒髪「学校に来るだけで、きっと精一杯だったんだなって」

黒髪「この寝顔みると、そう思って」

黒髪「……」

男(女)(うお!?)

彼女は、眠っている少女の頬にキスをした

黒髪「あっ……」

しまった、というように両手で口を覆う
ゆっくりと俺の方を見た

黒髪「い、今の、秘密ですよ……」

男(女)「わ、わかった……」


40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 06:24:39.49 ID:XELzicwT0
男(女)「ただいま」

紳士「おや、遅かったですね」

男(女)「仕事が良くわからなかったんだよ」

紳士「それはそれは」

紳士はふふっと笑う

男(女)「それもこれも、全部お前の所為だろ!」

紳士「おお、胸倉を掴まないでください」

男(女)「さあ洗いざらいはいてもらうぞ、これはどういうことだ」

紳士「まあまあ、おちついて」

紳士「せっかくの初勤務ですし、私不慣れながら、お祝いにと夕食を作っておきました」

男(女)「な……」

男(女)「女の子にも……食事を作ってもらった事無いのに……」

なんだかとても、力が抜けた



 
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 06:32:02.18 ID:XELzicwT0
男(女)「何が悲しくておっさんの料理に出迎えられなきゃいかんのだ……」

紳士「でも食べているではありませんか」

男(女)「うるせー……」

紳士「ふふふ」

男(女)「ったく。ほら、ごちそうさまだ」

紳士「お粗末さまでした」

男(女)「お前が女だったら、と思わずにはいられない」

紳士「これはまた。貴方が女ではないですか、男女の食事ですよ」

男(女)「……」

紳士「おやおや怖い顔をしなさる」

男(女)「さあ教えろ、これはどういうことだ」

紳士「ふむ……」


43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 06:45:16.44 ID:XELzicwT0
紳士「貴方はどう思いますか?」

男(女)「聞いてるのは俺だ」

紳士「ううむ手厳しい」

紳士「分かりました、お教えしましょう」

紳士「実はコレ、魔法なんです」

男(女)「魔法?」

紳士「はい、魔法です。貴方の妄想をかなえる魔法です」

紳士「なりたいと思いませんでしたか? 女子校の保健室の先生」

男(女)「そりゃ、まあ……」

紳士「それを叶えただけなんですよ」

男(女)「……」


44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 06:50:36.52 ID:XELzicwT0
男(女)「嘘だろ」

紳士「おや」

自称紳士の男は、微笑む

男(女)「ほらな、その顔。やけにあっさりしすぎている」

男(女)「本当は違うんだろ」

紳士「なるほど。いえいえ、これは嘘ではありませんよ」

男(女)「……じゃあ、何か隠してる」

紳士「さて、どうでしょう」

どうやらこいつは、これ以上この問いに答えるつもりはなさそうだった

男(女)「……分かった。質問を変える」

紳士「懸命です」

男(女)「俺はこの姿から、戻れないのか」


45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 06:56:59.47 ID:XELzicwT0
紳士「はい? あ、ああ。戻れますよ」

男(女)「戻れないのか、やっぱりな――えっ」

紳士「戻りますか?」

男(女)「え、あ、はい」

しゅわん

男「あ、あれー……」

男「どうなってんだ?」

紳士「あまり嬉しくない事なので言っていませんでしたが」

紳士「やめるのも自由なんですよ」

男「な……」

紳士「言ったでしょう、あなたの妄想を叶える魔法だと」

紳士「やりたい時に、やればいい」


46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 07:04:35.33 ID:XELzicwT0
紳士「まあもちろんその姿では警備的な意味であの学校には入れませんし」

紳士「当然ですが、時間だって進みます」

紳士「つまり貴方が行かなければ、あの学校の養護教員はいなくなります」

紳士「それだけのことです」

男「……汚いぞ」

紳士「おやおや、何がでしょう」

遅刻は嫌いである
もちろん、仕事をふけることも、嫌いである
そして、なにより――

男「帰れ。お前が何者かしらないが、俺は降りる」

少女の顔が、浮かぶ

紳士「貴方がそうおっしゃるならば、はい」

紳士「ですが望めば――また、なれますよ」

そういって、紳士はふっと消えた


47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 07:16:35.08 ID:XELzicwT0
翌朝

男(女)「……」

なりたいと思っただけで、体はどちらにも変えることができるようだった

男(女)「汚い、あいつ本当に汚い」

男(女)「俺がやめられないの分かってて……」

昨日、全く説明もなく学校に向かわせたのは、きっとこのためだ
一度でも行って、学校と関わらせれば、簡単にはやめられないだろうと

……まんまと策略にはまってしまった

男(女)「あーくそ、むかつく」

男(女)「行ってくるからな! 帰ってきたらちゃんと飯くらいつくっておけよ!」

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 07:30:16.74 ID:XELzicwT0
保健室

男(女)「あー、もう。はめられたままじゃ悔しい」

男(女)「あいつの隠してる事、絶対暴いてやる」

そのためには、とにかく今はこの仕事を続けるしかなかった

男(女)「仕事を、覚えよう……。その場しのぎってわけにはいかないからな」

男(女)「えーと、ノートに書かれているのは……」

応急処置の方法や、保健室の備品の場所、時間の使い方
そのほか文書にどう答えるべきだとか、学校行事でやる事についてなどなど
仕事に関するデータが一通り、まるでメモのように書いてあった
が、生徒に関する部分――つまり、カウンセリングのことだけは抜けている

男(女)「これはもう自分で対処していくか……」

男(女)「とりあえず、それ以外の仕事で最低限乗り越えられるものは揃っているってことだな」


50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 07:36:10.69 ID:XELzicwT0
男(女)「……とはいえ、コレだけではだめか」

素人の俺には、基本的な知識が圧倒的に足りなかった
これでは特殊なケースや緊急の事態に対応できない

まずは、養護教諭としての知識を詰め込まなければ

幸い保健室だ、参考書は大量にある

男(女)「……む、結局当面の仕事はその場しのぎで、知識を蓄える事が優先か」

男(女)「仕方ないが、悔しいな」

やると決めた事にはこだわる性質である

男(女)「さてっと、考えるのもそこそこに、仕事をやっていこう」


51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 07:44:22.25 ID:XELzicwT0
男(女)「ん」

水質検査を終えて、保健室に戻ってくると、扉の前に少女がいた

眼鏡「えと……」

男(女)「君か」

眼鏡「は、はい、えと」

男(女)「はいろうか」

眼鏡「め、迷惑じゃありませんか……?」

男(女)「そのなんだ、あんまり気にするな」

男(女)「私も、保健室登校やったことあるし、な」

眼鏡「……あ、ありがとうございます」


52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 08:02:57.21 ID:XELzicwT0
男(女)「さてっと……」

俺はまず、出欠席の確認に取り掛かる

男(女)(秋から冬にかけてはインフルエンザに注意、か)

欠席率が二割を超えたら、教委に連絡しなければならない

男(女)(今日はとりあえず、問題なさそうだな)

教師の取った出席確認を、手書きでまとめる

男(女)(これ、エクセルでやった方が早いんじゃねーかな)

男(女)(あとで作っておこう)

男(女)「あ。君、一年生なんだ」

眼鏡「え? はい、そうですけど……」

男(女)「あ、いや。ここにほら、名前かいてあったから」

眼鏡「あ、これ出席簿……。保険室の先生が、まとめてるんですね」

男(女)「そういうことです」



 
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 08:10:52.16 ID:XELzicwT0
眼鏡「あはは、休んでるの、ばれちゃいますね」

男(女)「そうだなあ……」

彼女の名前を見ると、ずらりと×印が並んでいる

男(女)「まあそういう人もいる。今は来てるんだからいいよ」

眼鏡「うう、先生甘いです」

男(女)「君が甘えているんだろう」

眼鏡「あう」

男(女)「ところで……、君のクラスのこの子」

男(女)「ちょうど一週間くらい前から休んでいるようだけど、どうしたんだ?」


55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 08:20:57.91 ID:XELzicwT0
眼鏡「その子はえっと確か……、謹慎させられているらしいです」

男(女)「謹慎? なにかやったのか」

眼鏡「たぶん。でも私は学校に来ていなかったので、詳細は……」

男(女)「そうか……」

男(女)「まあそれならそれでいいか」

男(女)「今日も、寝る?」

眼鏡「い、いえ。今日は勉強をしようと、思います」

眼鏡「皆より、遅れているので……」

男(女)「……そっか」

順調に彼女は、復帰への道を進んでいるようだ
嬉しくなった

男(女)「私も勉強しなきゃいけない事があるからな、一緒にがんばろう」

眼鏡「はいっ」


56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 08:24:36.76 ID:XELzicwT0
二時間目が終わった休み時間

黒髪「あ、やっぱりここにいた」

男(女)「やあ。君は元気そうだな」

黒髪「体調管理には気をくばってますから」

黒髪「それで。貴方も、元気そうね」

眼鏡「あ、あう……」

黒髪「……怒らないから。おびえないでよ」

眼鏡「……」

黒髪「勉強、してるの?」

眼鏡「は、はい」

黒髪「教えてあげようか」

眼鏡「え……?」


57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 08:33:09.43 ID:XELzicwT0
黒髪「ちょっと見せて」

眼鏡「はい……」

黒髪「ふむ……」

黒髪「……貴方、要領わるいって言われない?」

眼鏡「え、あ、はい……」

黒髪「あ、ご、ごめん。そ、そんな気を落とさないでいいから」

黒髪「その、ちゃんと追いつけるように教えてあげるから……」

黒髪「どう、かな?」

眼鏡「でも……、悪いです……」

黒髪「気にしなくていい。私は大丈夫」

眼鏡「う、えと……」


58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 08:39:11.11 ID:XELzicwT0
男(女)「教えてもらったらどうだ?」

男(女)「一人でやるより、知ってる人に教えてもらった方が捗るよ」

黒髪「うん。だから、ね?」

眼鏡「え。と……」

眼鏡の少女はうつむいて、もじもじとしたあとに

眼鏡「お願い、します……」

そう言ったのだった

黒髪「お願いされます」

無愛想な顔をしていた少女もまた、にこりと笑う

それを見て、俺は思った

男(女)(女の子って、いいなあ)

がぜんやる気がでたのだった




 
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 08:55:21.09 ID:XELzicwT0
男(女)「帰ったぞー」

紳士「お帰りなさいませ」

紳士「お食事になさいますか、お風呂になさいますか、それとも……」

男(女)「皆まで言うな」

紳士「おや、そちらの気はお持ちではないですか」

男(女)「あるかそんなもん」

紳士「いやはや、しかし私が女でも、それはそれで百合百合ですよ」

男(女)「薔薇より百合のがいいよ。俺は」

紳士「ううむ、どちらもすばらしいのですが……」

男(女)「やめろ」

紳士「仕方ありません。では、とりあえず食事の用意をいたしましょう」


61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 09:01:31.75 ID:XELzicwT0
男「ふう……」

風呂に入る時は、さすがに男の姿に戻った
女のままでは、どうにも気恥ずかしい

紳士「お背中お流ししましょうか」

風呂の曇りガラス越しに、紳士のシルエットが浮かぶ

男「嫌です」

紳士「裸の付き合いは仲を深めると言うのに……」

男「お前と仲を深める気はない」

男「っていうかだな、なんでお前は俺の部屋に住み着いてるんだよ」

紳士「貴方が仕事をやり遂げるか、確認しなければいけませんので」

男「……お前、何者なんだよ」

紳士「紳士ですってば」

男「言うと思った」



 
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 09:23:34.30 ID:XELzicwT0
翌日の事であった

男(女)「お?」

眼鏡「あれ?」

黒髪「ち、ちょっと放しなさい」

ツインテ「今日は放しませんっ」

黒髪「ここ、保健室だから。静かにしなさい」

ツインテ「じゃあ静かに放しませんっ」

黒髪「ああもう……」

男(女)「どうしたんだ?」

ツインテ「貴様か! お姉様をいつもいつも保健室によぶのは!」

男(女)「え? いや……」

黒髪「だーもう! 私が自分できてるって言ったでしょう!」



 
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 09:30:25.15 ID:XELzicwT0
ツインテ「ぐううう」

男(女)「お、おい、この子は……?」

黒髪「うちのクラスの子で同級生」

男(女)「はあ。なのにお姉様なのか」

ツインテ「だってお姉様の方が一個上だもの」

黒髪「ああもう余計な事を……」

眼鏡「そ、そうなんですか……?」

黒髪「そうよ。貴方と一緒、一年遅れて高校に入ってるの」

眼鏡「知ってたんですか!?」

黒髪「知ってたわよ」

黒髪「……だから、気になってたんじゃない……」

眼鏡「え……?」

黒髪「なんでもないわ」


 
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 09:35:29.17 ID:XELzicwT0
闖入者は、ツインテールを揺らしていた

ツインテ「おいそこの眼鏡」

眼鏡「は、はひ」

ツインテ「貴様だなあ、お姉様を保健室に――ぐう」

両頬が、ぐいと掴まれる

黒髪「だから、私が勝手に来てるの。いいでしょ」

ツインテ「ふうー」

黒髪「ち、ちょっと! 息を吹きかけないでよ!」

ツインテ「ぷはっ! ……ここに来て何してるんですかっ」

黒髪「……はあ。勉強よ勉強。貴方の嫌いなね」

ツインテ「なななな……」

黒髪「とりあえず、保健室にいたいなら声のトーンを下げなさい」

ツインテ「ううう」



 
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 09:40:56.78 ID:XELzicwT0
ツインテ「全く、私に全然構ってくれないかと思ったらこんな事してたんですね」

黒髪「それは謝るわ。でも休み時間しかできないから……」

眼鏡「あ、あの、無理はしなくても……」

黒髪「いいの。無理して無いから」

ツインテ「私が無理してます!」

黒髪「ああ、それはごめんねってば……」

ツインテ「先生はどう思いますか!」

男(女)「え? んー……」

男(女)「そうだな、君がもう少し静かになって、で、ここに一緒にいればいいと思う」

ツインテ「むう、声大きいですか私」

男(女)「声は小さくなったけど、保健室らしくない騒がしさ」

ツインテ「直球で言われるとキますね……っ」

 
76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 09:45:33.65 ID:XELzicwT0
ツインテ「分かりました静かにしています」

黒髪「そうして。じゃあ、勉強始めようか」

眼鏡「は、はい」

開かれていた教科書に、二人は目を落とす
一人は目を落とさない

ツインテ「じーーー」

黒髪「えーと……、ここはね」

眼鏡「はい」

ツインテ「じーーーー」

黒髪「こんな、かんじ」

眼鏡「あ、なるほど……」

ツインテ「じいいいいい」

黒髪「声にでてるうるさい」

ツインテ「きゃんっ」



 
79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 09:51:08.72 ID:XELzicwT0
黒髪「ごめんね、今日は早めに切り上げるわ」

眼鏡「い、いえ、私のことはいいので……」

黒髪「後は先生、任せます」

男(女)「はいよ」

黒髪「ほら、いくよ」

ツインテ「わあお姉様優しい!」

黒髪「貴方がうるさいからでしょうが」

ツインテ「うー手厳しいお姉さまも素敵」

黒髪「今日は構ってあげるから。でも次もし保健室で騒いだら」

黒髪「……分かってるわね」

ツインテ「わ、わあ……、マジギレの顔もす、素敵、だあ」

黒髪「分かった?」

ツインテ「はい……」



 
86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 10:02:56.55 ID:XELzicwT0
男(女)「すごい子がいるもんだ」

眼鏡「あはは……、元気でしたね」

男(女)「うむ。まあ、ああいうのも女子高生らしいのかな」

眼鏡「そうですね」

男(女)「それじゃあ、作業に戻るよ」

眼鏡「あ、先生……、あの」

男(女)「ん?」

眼鏡「ここ、さっき教えてもらいそびれちゃったんですけど……」

男(女)「ん、見せてみろ」


87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 10:08:37.90 ID:XELzicwT0
放課後

男(女)「うーんむ……」

まさかこんなことになるとは

眼鏡「すう……すう……」

男(女)「一応、女同士だが……」

少女は、俺の膝の上で、安らかな寝息を立てていた
まるで警戒心の無い寝顔である

男(女)「う、うーむ……」

隣で勉強を教えていたら、突然ことりと倒れてきたのである

男(女)「う、うーむむむ」

この姿でいると自分が男だというのをふと忘れてしまいそうになるが
こうなると男である自覚がむくむくと……

男(女)「実際に起き上がるモノがなくてよかった……」


88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 10:12:17.53 ID:XELzicwT0
黒髪「……ッ!」

なんとなく予想はしていた

男(女)「し、静かに……」

黒髪「ち、ちょちょちょっと! なにしてるんですか!」

声のボリュームは非常にしぼってあるのだが、その荒さは猛々しい

男(女)「いや実はだな……」

黒髪「な、なんて役得……! ああ今日私が教えていれば……!」

黒髪「交代してください」

男(女)「ど、どうやって」

黒髪「交代してほしいです!!」

男(女)「お、起こしてもいいなら……」

黒髪「だめです」

男(女)「じゃあどうするんだよ……」


89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 10:15:10.86 ID:XELzicwT0
眼鏡「ふ、ふえ……?」

黒髪「起きちゃったじゃないですかっ!」

男(女)「私のせい!?」

眼鏡「あ、おはようございます……」

黒髪「おはよう。もう放課後よ」

あ、いつものクールな彼女に戻った

眼鏡「わ、す、すいませんっ」

男(女)「いやいいけど……、俺は、ね」

黒髪「……。ほら、帰るわよ」

眼鏡「あ、は、はい」

わたわたと、帰り支度をする

眼鏡「そ、それじゃあ先生、さようならっ」

男(女)「はい、さようなら」






91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 10:29:58.20 ID:XELzicwT0
そんなこんなで、数日はあっというまに過ぎていった
少女達の姿に、時たま目的を忘れそうになりながらも
俺は一日の仕事をさっさと終わらせては、勉強を続けたのだった

そしてそれは金曜日の放課後のことである

眼鏡「あの、先生」

男(女)「んー?」

眼鏡「私、来週から教室に行こうと思います」

男(女)「お!? 本当か!」

眼鏡「はいっ」

眼鏡「勉強はまだおいついていませんけど、教室で彼女に教えてもらえれば、少しは負担も……」

男(女)「あー、ツインテの元気な子がいるからな。教室でなら騒げるし」

眼鏡「はい。それに……ここにずっといて甘えていてもいけないなって、思って」

少女は初めてあったときとは違う、明るい笑顔を見せた

男(女)「……そう、だな」

俺は保険室の先生になって初めて、嬉しい、と思ったのだった


92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 10:34:41.20 ID:XELzicwT0


男(女)「なあ、やっぱ何にも教えてくれないのか」

紳士「大体答えるとおもいますが」

男(女)「いつもごまかしてるだろ」

紳士「ははは、気のせいでは」

男(女)「ったく……」

男二人――正確には、俺は女の姿をしているから違うのだが――小さなテーブルを囲んで夕食をとる

紳士「どうです、保健室の先生というのは」

男(女)「まあ素直に認めるのもアレだが……」

男(女)「面白い、かな」

紳士「それはよかった。あ、おかわりしますか」

男(女)「お願いします」


93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 10:40:21.35 ID:XELzicwT0
男(女)「だがいつまで続くんだ?」

紳士「貴方が望むなら、いつまででも」

男(女)「妄想だからか」

紳士「はい」

男(女)「うーむ……、男に戻ったら、終了じゃないのか?」

紳士「貴方にとっては、終了でしょうな」

男(女)「学校を無視すれば、ってことか」

紳士「はい」

男(女)「汚いなあ」

紳士「その言葉は心外ですよ。……ああ、お風呂わきましたね」

紳士「どうぞ」

男(女)「先入っていいよ。いつも俺だし」

紳士「……では、間を取って一緒に」

男(女)「先入ってくる」

紳士「ああ……悲しみ」



 
97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 10:56:07.31 ID:XELzicwT0
火曜日、昼休み

男(女)「今日も教室にいけたか」

眼鏡「はい、なんとかっ」

黒髪「来ちゃえば何とかなるものよ」

ツインテ「私とお姉様が構ってあげてるからね!」

眼鏡「あはは、ありがとうございます」

どうやら三人は仲良くやっているようで、俺は安心した

男(女)「ん」

生徒が一人、扉のあたりに立っていた

男(女)「どうぞ、いらっしゃい」


98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 11:01:00.47 ID:XELzicwT0
しかし入りづらそうな様子である
俺はそれを察するとすぐに、そちらへと向かった

男(女)「どうしたのかな」

金髪「……」

その少女は金髪――というかブロンドの髪をしていた
目は力強く、俺を見返す

まるで見定められているようだった

金髪「保健室では……」

男(女)「うん」

金髪「相談をさせていただいても、良いのでしたわね……?」

男(女)「構わないよ。秘密は守る」

金髪「……分かりました。放課後に、時間を取っていただけますでしょうか」

男(女)「うん、分かった」



 
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 11:07:24.11 ID:XELzicwT0
黒髪「あまり、保健室に堪らない方が良いかもしれないわね」

眼鏡「そうですね……、入りづらくなってしまいます」

男(女)「まあ、ほどほどにしてくれればいいよ」

男(女)「君達が全然来なくなると、それはそれでさびしい」

ツインテ「ふっふっふ、私達の偉大さが分かったようですね!」

黒髪「貴方が一番うるさくて保健室に入りづらくしてるんだっての」

ツインテ「はうああ、直球は効きますわああ……」

眼鏡「あはは……、で、でも私も一緒だよ」

黒髪「そんなことないよ、一番静かだもの」

ツインテ「眼鏡ばっかりかばって! 私も眼鏡かけてきてやる!」

男(女)「と、とりあえず、そろそろ昼休みも終わりそうだよ」

黒髪「ん、本当。それじゃあ、そろそろ私達も戻ります」

男(女)「はい、またね」



 
102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 11:13:41.56 ID:XELzicwT0
放課後

金髪「どうも」

男(女)「待ってたよ、こちらへどーぞ」

金髪「……はい」

ブロンドの髪をひらりとたなびかせて、少女は座る

男(女)「綺麗な髪だね」

金髪「自慢の髪ですわ」

男(女)「自慢できるだけある。私のとは比べ物にならないもの」

金髪「貴方のも、そう卑下するものではないですわ」

男(女)「そうかな」

金髪「ええ」

男(女)「それは嬉しいな。……それで、今日はどうしたのかな」

金髪「……はい」


103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 11:17:15.77 ID:XELzicwT0
金髪「単刀直入に、申し上げます」

男(女)「どうぞ」

金髪「……女性が……、その。女性に恋をするのは、おかしいでしょうか」

男(女)「女性が、女性に?」

金髪「……はい」

男(女)「なるほど、ね」

男(女)(ああ……)

いつかは来るかもしれない、と思っていた
女子校であれば、起こってもおかしくないとは思っていた

男(女)(同性愛の是非、か)

分かっていても、これは……むずかしい



 
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 11:28:25.07 ID:XELzicwT0
金髪「女子校だから、でしょうか」

金髪「私は男というものを知らないからでしょうか」

金髪「私は……、おかしいのでしょうか」

男(女)「……ふむ」

自身が経験していないからこそ、どう答えるべきかしばし悩む

男(女)「いや」

だから、俺自身思っている事を言った

男(女)「おかしい、なんてことはない」

先生として、こう答えるのはもしかしたら、間違っているかもしれないのだが

男(女)「好きならそれでいいと、私は思う」

男(女)「だけど、その相手がどう思うかは、私には分からないな」


106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 11:33:52.40 ID:XELzicwT0
紳士「どうしました、元気がないようですが」

男(女)「学校でな」

あの後、少女と二言三言の他愛無い会話を交わし、彼女は頷いて去っていった

男(女)「同性愛について、生徒に聞かれたんだよ」

紳士「愛があればどんな障壁も乗り越えられましょう」

男(女)「そうは言うが、現実は厳しい」

男(女)「高校生にそれでいいと言ってしまうのは、相談を受けた大人として、どうかな、と」

紳士「ふふ、先生として、悩んでおられますな」

男(女)「そりゃあ、今は先生だからな」

紳士「そうでした。くっくく」

男(女)「何がおかしい」

紳士「いえ。あれほど嫌がっていたのに、今では先生なのだな、と」

男(女)「ふん」



 
108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 11:43:54.08 ID:XELzicwT0
紳士「まあ。そうですね、そういったものは経験で覚えていくものでしょう」

男(女)「そんなもんかね」

紳士「そんなものです」

紳士「ということで、私と」

男(女)「なんでそうなる。っていうか前々から思ってたけど、お前そっちの気あるのか」

紳士「いえ、両刀というだけです」

男(女)「あるんじゃねーか」

紳士「専門じゃないですよ」

男(女)「はあ……」

男(女)「結局、どうしたもんかなあ」

紳士「ふふ、貴方は立派に先生へとなっていっていますね」

紳士「……本筋から逸れていくことにも、気がつかず」

男(女)「え?」

紳士「いえ、なにも。……さあ、夜も深い。終身の時間ですよ」



 
110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 11:57:57.94 ID:XELzicwT0
眼鏡「先生、どうしたんですか?」

男(女)「あーいや。色々保健室の先生は大変だなーって」

男(女)「で、今日は本物の体調不良か」

眼鏡「あはは……、はい」

男(女)「君一人だけだと、最初を思い出すな――ん?」

金髪「失礼します。体調不良、ですわ」

男(女)「ん、了解。じゃあまず熱を測ってみようか」

昨日の事はデリケートだ
向こうから触れてこない限りは持ち出さないようにと思って、俺はそう受け答えた

金髪「ええ」

眼鏡「あ……」

金髪「おや……?」

金髪「どこかで見た顔と思えば、中等次代の同級生ではありませんか」

男(女)「ん、なんだ、知り合い?」


111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 12:04:08.29 ID:XELzicwT0
眼鏡「ど、どうも……」

金髪「どうも。あまり喋らなかったから、覚えて無いかもしれませんわね」

眼鏡「お、覚えてます」

金髪「あら、嬉しい。……ん? でも同い年なのにこの学校では見かけなかったような」

眼鏡「私あの、一年遅れて……」

金髪「ああ、なるほど。ふふ、大変でしたのね」

眼鏡「は、はい」

ピピッ

金髪「37度1分……ふむ」

男(女)「少し熱があるな。堰と鼻はでるか? それと頭痛」

金髪「いえ、そういった症状は」

男(女)「ふむ。なら少し横になっていくといい」

金髪「そうさせていただきます」


112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 12:08:44.41 ID:XELzicwT0
眼鏡「すごい、大人っぽい人」

男(女)「ああ、そうだな」

くすっと、彼女がはいったベッドのほうから、笑い声が聞こえた

男(女)「喋ってたら邪魔になっちゃうな」

眼鏡「あ、あの、私も横になってもいいですか……?」

男(女)「ああ、どうぞ」

眼鏡「あ。ありがとうございます」

彼女も横になると、保健室にはとても静かな空気が流れた
二つの寝息が、ベッドを囲うカーテンを越えて聞こえるようだった

男(女)「んーむ」

仕事に戻ろうかとおもったが、なんとなくうとうととする昼下がり
俺は勉強も仕事も少し後にして、手近にあった「保健室の先生お仕事ノート」を、手に取った


113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 12:12:50.45 ID:XELzicwT0
ノートは何度も見返した
まるでメモのように書かれた中身は、見慣れたものだ

男(女)「ん……?」

ふとそれに気づいたのは、パラパラと文章を読まずにみていたからか
最後のページを開いた、裏表紙
少し厚い紙に、くぼみがあるような気がした

男(女)「なんだろう」

俺はエンピツをとって、そこに色をつけてみる
案の定、くぼみの周りにのみ色がついて、浮き出るものがあった

男(女)「“先生あのね。を目指すために”……?」

男(女)(なんのこっちゃ)

新しい発見だったが、俺には良くわからなかった


114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 12:17:40.21 ID:XELzicwT0
栗毛「あ、あの、先生……っ」

ぼーとノートを見上げていたからか、訪問者に一瞬気がつかなかった

男(女)「お、おお、いらっしゃい」

可愛らしい栗毛の少女である

男(女)「体調不良?」

栗毛「いえ、その……、相談に」

男(女)「ん、了解」

保健室を利用する人数は、俺が始めてから数えて、大体一日平均二十人
そのうちの二割程度が、相談事だ
昨日のように難しい相談をする子もいれば、お話を聞いてほしいだけの子もいる

さてこの子には、どんな悩みがあるのだろうか


 
116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 12:20:46.31 ID:XELzicwT0
栗毛「秘密にしてくれますか……?」

男(女)「もちろん」

栗毛「そ、その。信じてもらえないかもしれませんが……」

男(女)「うん」

大抵こうして始まるのは、お化けがみえるだとか、霊を感じるだとか
そんなお話

栗毛「私……、いえ、僕は……、男、なんです……」

男(女)「うんうん、そうかあ……そ……へ?」

男(女)「ご、ごめん、もう一度」

栗毛「男、なんです」

男(女)「ここ、女子校だよね」

栗毛「……はい。だから、誰にも相談できなくて……」

これはまた、とんでもないのがいらっしゃった……


117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 12:29:20.89 ID:XELzicwT0
男(女)「そ、それ、本当……?」

栗毛「……はい」

顔からは、言われて見れば男かもしれない、と思う程度にしか分からない
ほとんど女性である

男(女)「し、失礼して」

胸を軽く触ってみる

栗毛「わ、んっ……」

男(女)「あ、あるじゃないか」

栗毛「これ、ぱっとです……」

と言って、栗毛の少女――少年は、パッドを取り出して見せた
そしてもう一度触らせられた

男(女)「……ない、っすねえ」

栗毛「はい……」

男(女)「な、なんでこんなことに」


 
119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 12:36:20.81 ID:XELzicwT0
栗毛「その、家の事情なのですが……」

栗毛「どうにも私の両親、というかお家が女性をほしかったらしくて」

栗毛「男として生まれた私は、このように……」

男(女)「戸籍どうなってんの」

栗毛「男です」

男(女)「学校に、入れなくない……?」

栗毛「ここの理事長と両親が知り合いでして……、私立ですし」

男(女)「ああ、そういう……」

絶句モノである。まさかこの女の園に、男が紛れ込んでるとは

男(女)(いや、俺も言えたもんじゃないな……)

そう思うと、妙に親近感が沸いてきた



 
121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 12:43:57.63 ID:XELzicwT0
栗毛「もう、隠すのも大変で……、誰かに相談しないとやっていけそうも無くて……」

男(女)「あ、ああ、そうだよな。まあそうなるよね、普通」

栗毛「もういっそ、だれかにばらして……、終わるなら終わるで、それもいいかな、とか」

女装したままもぐりこまされて、誰にも相談できないというのは想像を絶する辛さだったろう

男(女)「い、いや、さすがにそうなると大変だろう、家の問題なんだろ?」

栗毛「はい……、でも、もう、体も……」

確かに、高校生となれば男女の違いははっきりと別れてくる
どうがんばって隠しても、隠し切れない部分もでてくる

栗毛「もう……」

味方が、ほしかったのだろう

男(女)「わ、わかった。私は君の味方だ。絶対にばらさない」

栗毛「ほ、本当、ですか!?」

男(女)「ああ、絶対だ」

彼女(彼)のはりつめた表情は、すこし、ほっとした表情へと変わった



 
124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/10/30(日) 12:50:21.49 ID:XELzicwT0
男(女)「何を隠そう、実は俺も男だからな」

栗毛「ふえ? あ、た、確かに喋り方は男らしいですが……」

男(女)「あ、えーと、そうか、言っても分からんか……」

栗毛「き、気を使ってくださらなくても、大丈夫ですよ」

栗毛「学校に僕の事を知っている人がいると思えるだけで、とても楽になります」

男(女)「うん。いつでも来い。俺も男として相談にのってやる」

栗毛「あはは、それっぽいです」

男(女)「おう」

三時間目終了の、チャイムがなった

栗毛「あ、そうだ。授業でてなかったんだった」

男(女)「サボるのはあんまり良くない。ほら、解決したならさっさと戻れ」

栗毛「は、はい、ありがとうございましたっ」

男(女)「おう」


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