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姫「お願い……助けてぇっ……!」1/2




姫「お願い……助けてぇっ……!」




1 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 21:34:52.14 ID:PhEYd7Yi0
キンッ! キンッ!

ある王国の城の中庭で、剣を交える音が響き渡る。

一人は王国の親衛隊長、もう一人はこの国の姫であった。

隊長「姫、今日はこのくらいにしておきましょう」

姫「うん」

隊長「しかし、姫の上達ぶりはすばらしい。もうすぐ私も抜かれてしまいそうです」

姫「やっぱり分かる? 私って天才かもね」



2 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 21:35:36.60 ID:0puuTv4p0
姫の悲鳴
なんっつてww



元スレ
姫「お願い……助けてぇっ……!」




3 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 21:36:47.89 ID:PhEYd7Yi0
姫の自画自賛は、あながち過信というわけでもなかった。

彼女は武芸の才能に長けており、特に剣術はすでに城内でもトップレベルにあった。

父である国王も、せがむ彼女に一軍を与えたほどである。
(といっても、国内のパトロール部隊のような小規模なものであるが)


執事「いやはや、姫様はお強くなられて……。
   男子のお世継ぎ様が早世されてしまったので、国王様も頼もしいでしょうな」

大臣「ふん。少数とはいえ、女に兵を任せるとは国王陛下もどうかしておる。
   まったく……」ブツブツ


4 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 21:39:38.15 ID:PhEYd7Yi0
稽古を終えた姫に、兵士が駆けつけてきた。

姫「どうしたの?」

兵士A「ノース地方のビレッジ村を、山賊の集団が占拠したという情報が!」

姫「山賊ですって!? ふふっ、面白いじゃない。腕が鳴るわ」

姫「隊長、さっそく出撃するわよ!
  急がないと、またあいつらに手柄を取られてしまうわ!」

隊長「はっ!」

姫のパトロール部隊の実質的な長は、親衛隊長である。
国王から姫を守るよう、姫には内密に命じられていることはいうまでもない。


5 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 21:42:22.47 ID:PhEYd7Yi0
ビレッジ村──

山賊たちは村長の家でたむろしていた。

山賊A「ケッ、もぬけの殻とはな。殺しが楽しめるかと思ったのによ」

山賊B「まぁいいじゃないっすか。適当に金品奪い取ったらズラかりましょう。
    自警団のヤツらが来るとヤバイですし」

見張り役の山賊が駆けつけてくる。

山賊C「この村に兵隊が向かってきてますぜ!」

山賊A「なんだと!? まさか自警団か?」

山賊C「いや、ありゃあ姫が作ったとかいうパトロール部隊です。
    ご丁寧に隊列整えて向かってきてます」

山賊A「ビビらせんじゃねぇよ。
    あんな小娘のために作られた、お遊び軍隊なんざ怖かねぇ。
    ちっと世の中の厳しさってのを味わわせてやるか」



7 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 21:43:24.87 ID:PhEYd7Yi0
ビレッジ村の外──

隊長「静まり返っていますね……」

姫「私たちが来たって気づいて、逃げちゃったのかしら?
  せっかくここまで来たのに張り合いがないわね」

隊長「姫、いかがいたしましょう?」

姫「突撃よ、突撃! もしかしたら、まだ残党がいるかもしれないし」

隊長(少し危険な気もするが……)
  「よし、全軍突撃っ!」

馬に乗った姫と隊長を先頭に、村の入り口に突撃をかける。

しかし、入り口には罠がしかけられていた。


8 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 21:46:45.02 ID:PhEYd7Yi0
山賊A「それ、引っ張れっ!」

グイッ!

入り口部分に埋められていたロープがピンと張られ、
姫と隊長が乗っていた馬をつまずかせた。

姫「きゃあっ!」ガクン

隊長「姫っ!」バッ

隊長は馬から飛び降り、姫の下敷きになることにより、姫を落馬から救った。
ほとんど捨て身で地面にダイブした隊長のダメージは大きかった。

隊長「うぐっ……! 姫、ご無事ですかっ……」

姫「た、隊長っ!」

兵士A「ま、まずいっ!(騎馬の二人だけ突出してしまっている!)」
兵士B「二人に追いつけっ!」

山賊A「こうもあっさりかかるとはな。平和ボケしすぎだぜ、アンタら。
    よし、おめぇら、姫を狙え! とっつかまえろ!」


9 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 21:48:50.91 ID:PhEYd7Yi0
山賊D「うひょ~、剣なんか構えちゃって可愛い~」
山賊E「へっへっへ、まだガキだがこりゃ上玉だぜ」

姫「くっ……甘く見ないでよね!」

ザシッ! ザンッ!

山賊D「ぐわぁっ!」
山賊E「ぎゃっ!」

姫は二振りで、山賊二人を斬り倒した。

山賊B「な……ウ、ウソだろ!?」

山賊A(おいおい、マジかよ。姫が剣術をかじってるってのは知ってたが、
    一流の腕じゃねぇか!)

姫「さぁ、かかってきなさい!」



11 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 21:52:52.10 ID:PhEYd7Yi0
姫はさらに3人を斬り倒す。

山賊A(チッ、後ろの兵士たちが追いついてきたら面倒だな)
   「おもしれぇ、俺が相手してやらぁ」

姫(どうやらコイツがリーダー格ね。コイツをやっつければ、なんとかなりそう)

山賊A「そりゃあっ!」

棍棒で殴りかかる山賊A。が、姫はひらりとかわし、棍棒を叩き斬る。

姫「(よしっ!)さぁ、どうやら私の勝ちね」

山賊A「それはどうかな……?」ニヤ

山賊Aはあらかじめ右手に握っていた砂を、姫の目めがけて投げつけた。

姫「!」
 (し、しまっ──!)

山賊A「ようし、姫さえ捕えちまえば、こっちのもんだ!」


12 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 21:55:41.70 ID:PhEYd7Yi0
トスッ

山賊Aの首に矢が刺さった。

山賊A「がっ……!」ドサッ

狙撃手「命中ゥ~♪」

姫「───!(いったい何が起こってるの!?)」

兵士A「あ、あれは……!」
兵士B「自警団の連中だ! いったいいつの間に……!」

山賊B「こ、これって──」

山賊C「俺たち囲まれてるんじゃ……」

姫を包囲していたはずの山賊たちは、いつの間にか別の集団に包囲されていた。

副団長「よぉ~し。王国軍の奴らが、いい目くらましになったな」

団長「一気にカタをつけるぞ」


13 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 21:59:53.30 ID:PhEYd7Yi0
自警団はあっという間に、残る山賊たちを片付けてしまった。

副団長「ふん、あっけねえもんだ」
団長「大丈夫か?」

隊長「いつつ……君たちには助けられてしまったな。ありがとう」

姫「ふ、ふん。いつもいつも、私の手柄取りのジャマしてくれちゃって!
  あんな連中、あなたたちが来なくても私一人でもやっつけられたわ!」

団長「………」

団長「手柄……か。
   姫という身分にありながら、民のために東奔西走しているアンタを
   これまで少なからず尊敬していたが、とんだ見込み違いだったらしい」

姫「な、なんですって!」

団長「しかも助けられたのに、礼をいおうともしない」

姫「あなたたちがいなくたって勝てたのに、なんで礼なんか──」

団長「俺たちに、じゃない。アンタを落馬から救ったのはだれだ?」

姫「!」

団長「今のままじゃ、アンタのやってることは一生ままごとだよ。
   ──じゃあな」

自警団団長は部下たちを連れて、退却していった。


14 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 22:02:43.23 ID:PhEYd7Yi0
姫たちも城に戻った。
負傷してベッドに横たわる隊長に、姫が謝る。

姫「ごめんなさい、私のせいで……」

隊長「いえ、姫様にお怪我がなく何よりです。
   私の怪我も大したことなかったので、今日一日休めば復帰できます」

姫「──にしても、腹が立つわ! いつもいつもなんなのよ、アイツらは!
  私が駆けつけた時には、大抵アイツらが終わらせてるんだもの!
  今日もジャマされちゃったし……」

隊長「彼らは『自警団』といって、
   あの団長が各地から腕利きを集めて結成した私兵集団です」

隊長「サウス地方にちょっとした要塞のようなアジトを構えており、
   ほとんど自給自足のような生活をしながら、
   この国の治安を自発的に守っている組織です」

隊長「団長の出自は不明ですが、副団長はなんとあの──」

姫「もういいわ。聞きたくない」ガタッ

隊長「す、すいません」

姫(ままごとだなんて……このまま黙ってなんかいられない!)


15 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 22:04:00.57 ID:PhEYd7Yi0
その日、姫は悔しさのあまりなかなか寝つけなかった。

団長『とんだ見込み違いだったらしい』

団長『助けられたのに、礼をいおうともしない』

団長『今のままじゃ、アンタのやってることは一生ままごとだよ』

目をつぶると、あの時の悔しさがよみがえる。

姫(私だって……ちゃんと私なりに色々と考えて……!)

姫(なんであんなこといわれなきゃならないのよ……!)

姫(悔しいよ……でも何も言い返せなかった……)



17 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 22:07:39.29 ID:PhEYd7Yi0
翌日──
いつも早起きで元気に起きてくる姫が、一向に部屋から出てこない。

執事(いやはや、姫様はどうされたのか……)

執事(親衛隊長の話では、昨日山賊相手に苦戦したということだったが……。
   まだ落ち込まれてるのだろうか……?)

執事(うぅむ、心配だ……。せめて食事くらいはしてもらわんと……)

執事(スイマセン……。姫、開けますよ!)コンコン

執事「し、失礼します……」

ガチャッ……

姫はいなかった。



19 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 22:11:03.43 ID:PhEYd7Yi0
城 謁見の間──

執事「国王様、姫様がいなくなってしまいました! 申し訳ございませんっ!」

国王「な、なんじゃと!? ……ゴホッ、ゴホッ!
   くっ……兵を動員して探し出さねば……ゴホッ、ゲホッ!」

大臣「陛下、それはいくらなんでも姫君を甘やかし過ぎではないですか?」

国王「な、なに?」

大臣「小規模といえど、姫君は一軍を預かる身です。
   それがこんな失踪騒ぎを起こし、あげく捜索に兵を動員したとあっては、
   兵たちに示しがつきませんよ」

国王「では……どうしろというんじゃ」

大臣「放っておきましょう。ま、あのお方のことだ。
   どこかでのんきに遊んでいるんじゃないですかね、ハハ」

国王「わ、分かった……大臣がそういうならそうしよう……ゴホッ」

執事(なんということだ。クソッ……大臣め。
   国王様がご病気を患ったとたん、どんどん強気に出てきている。
   いったいなにを考えているんだか……)


20 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 22:14:25.44 ID:PhEYd7Yi0
自警団アジト──

団員たちは昼食を取っていた。

副団長「昨日はよかったなぁ。村人の被害が一人も出なくて。
    みんな俺らの指導通り、村を捨てて避難してたみたいだな」

団長「ああ、本当によかった」

副団長「でもよ、お前ちょっと姫さんにキツくいいすぎたんじゃないか?」

団長「………」

すると、二人のところに見張り担当の門番がやってきた。

団長「どうした?」

門番「あの、アジトの門の前に団長を出せ! と騒いでる輩がいまして……。
   いくら帰れといっても聞かないんです」

副団長「なんだよそりゃ?」

団長「行ってみるか」ガタッ


21 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 22:17:32.23 ID:PhEYd7Yi0
自警団アジトの門──

門番「アレです」

甲冑「俺はここの団長と一騎打ちで勝負したい! 団長を出せっ!」ガチャガチャ

団長「………」

副団長「オイオイ、なんだありゃ。チビのくせに、鎧だけはやたら豪勢だな。
    無視した方がいい。きっとただのイカレ野郎だ」

狙撃手「ここから肩でも撃ち抜いて、追い返すってのはどうです?」

団長「いや、受けてやろう。門を開けろ」

門番「は、はい」

副団長「大丈夫かよ、もし罠だったら──」

団長「もしアレで罠のつもりなら大したもんだ」

門番「じゃあ、開けますよ。お気をつけて!」ガタンゴトン


22 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 22:20:03.40 ID:PhEYd7Yi0
アジトの門が開かれ、中からは団長と副団長の二人が出てきた。

甲冑「………!」ビクッ

副団長「安心しろよ、タイマンだ。俺は手出ししない」

甲冑「よ、よし……いざ尋常に勝負!」チャキッ

団長「来い」チャッ

甲冑「──ってりゃああっ!」

ビュオッ!

副団長(速いっ! コイツ、強いな……!)

甲冑「うわっ……」トトッ

一撃目を振り下ろした甲冑がよろける。

すかさず、団長は甲冑の剣を叩き落とした。

勝負あり、である。

副団長(あれ、あんまり強くなかった……)


23 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 22:23:13.41 ID:PhEYd7Yi0
甲冑「……俺の負けだ。好きにしろ」

団長「慣れないものを着てくるべきじゃなかったな。重い鎧に着られてるぞ」

副団長「ん?」

団長「ままごとの次は、チャンバラごっこでもしたくなったか?」

甲冑「……バレてたのね」ガチャッ

甲冑は兜を外し、正体を明かした。

副団長(姫さん!?)

姫「なんで分かったの? 甲冑を着て、声だって頑張って変えたのに」

団長「声を変えたって……少し鼻声にしただけだろうが。
   背丈も同じだし、剣のクセも全く同じだった」

副団長(それなのに全く気づかなかった俺っていったい……)


24 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 22:25:49.79 ID:PhEYd7Yi0
姫「………」

団長「城の人たちには無断で来たのか?」

姫「………」コクッ

団長「だろうな……。どうする、このまま帰るか?」

姫「………」フルフル

団長「……とりあえずアジトに寄ってくか?」

姫「………」コクッ



26 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 22:29:28.67 ID:PhEYd7Yi0
自警団アジト内──

自警団とは、団長が行き場のない者や、腕利きを集めて作った組織である。
いってしまえば、寄せ集め所帯だ。

ゆえに華々しい活躍にもかかわらず、国の上位層からは煙たがられている。

まして姫が一人で訪ねてくるなど、前代未聞の事件であった。

ガヤガヤ… ワイワイ…

「おいおい、姫様が来たってよ!」 「え、マジ?」 「なんでなんで?」

「団長と一騎打ちしたって」 「すげーなオイ」 「あたしも見たいわ」

副団長「お前ら、見世物じゃないぞ! 散れ、散れっ!」シッ シッ

団長「気を悪くしないでくれ。悪い奴らではないんだが──
   なにせ上流階級とは無縁の奴らばかりでな」

姫「へ、平気よ、このくらい」

副団長「おいおい、ここに一人いるだろ? 上流階級がさ」

団長「お前は元、だろ」


27 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 22:32:07.32 ID:PhEYd7Yi0
団長の部屋──

女僧侶「紅茶でよろしいですか? 姫様(ホンモノだぁ……)」ドキドキ

姫「う、うん……」
 (こんな清楚な人もいるんだ。本当に色々な人がいるのね、ここ)

団長「──さてと。アンタ、俺にいいたいことがあって来たんだろ?」

姫「……そうよ! 昨日は散々好き勝手いってくれちゃって!
  私だって、ちゃんと国民のことを考えて……!」

団長「なにもアンタのやってること全てが間違ってるといったわけじゃない」

団長「高貴な身分であるアンタが、自分たちのために駆けつけてくれる。
   それだけで勇気づけられる人間は大勢いるだろう。
   城でふんぞり返ってる連中なんかより、俺はよっぽどアンタを尊敬している」

団長「──ただし」


28 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 22:36:01.06 ID:PhEYd7Yi0
団長「今この国にどのくらい野盗や山賊の類がいるか知っているか?
   大きなグループがいくつあって、どこを縄張りにしてるか知っているか?」

姫「そ、それは……」

団長「アンタが助けに来てくれて喜ぶ国民の姿は見たことはあっても、
   今まさに悪党どもの脅威に晒されてる国民の姿はほとんど見たことないだろ?」

姫「───!」

団長「おそらく、これまで負傷なんて数えるほどしかしてないだろう。
   それが全部、自分の剣術が優れてるからと思ってないか?」

姫「………!」

団長「あの隊長がいなかったら、今頃アンタは墓の下にいるかもしれないな。
   あの人はアンタの安全に相当気を配ってるはずだ」

姫「………」

姫はうつむいたまま、全く言い返すことができなかった。


29 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 22:39:24.21 ID:PhEYd7Yi0
姫「わ、私は……」

団長「なにも責めてるわけじゃない。
   ただ……俺は似たようなことをやってる身として、
   もう少しだけアンタに目を覚まして欲しかっただけだ」

団長「それだけ剣の腕と勇敢さがあるのに、やってることがお気楽道楽、じゃ
   もったいないからな」

団長「……すまない。他人に説教できるほど教養なんかないのに、いいすぎた」

姫「なによ、急に謝っちゃったりしてさ」

姫「でも……少しは勉強になったわ。今日は来てよかった」

団長「今から城に戻ると、もう夜だろう。近くまで送っていこう」

姫「……ありがとう」


30 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 22:42:38.94 ID:PhEYd7Yi0
団長が姫を送って行くというと、団員の格好のネタになった。

「団長、姫と駆け落ちですか!?」 「ヒューヒュー」 「逆玉っすね!」

「団長が次期国王かよ!」 「そうなったらこの国滅亡だな!」 「ピーピー」

狙撃手「うらやましい~」

女僧侶(年はちょっと離れてるけど、たしかにお似合いかも……。
    なんていうか、並んでる姿が絵になっているのよね)

副団長「オイオイ、姫さんと駆け落ちとか、さすがにまずいだろ~。
    まぁもう二度と帰ってこなくていいぞ。俺が新団長になってやるから」

団長「バカ、城まで送って行くだけだ。もう少し話もしたいしな」

姫「………」カァァ…


31 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 22:46:50.86 ID:PhEYd7Yi0
アジトを出た二人は、城下町近くまでたどり着いた。

団長「この辺でいいか?」
  (てっきり姫捜索隊が組まれてると思ったが……全く出会わなかったな)

姫「うん、ありがとね」

姫「──で、一つお願いがあるんだけど……聞いてくれる?」

団長「聞けることならな」

姫「また……あなたたちのアジトに行ってもいい?
  あの賑やかさがちょっと楽しかったし、もっと色々勉強させてもらいたいし、
  あなたから剣術を習ってみたいし……」

団長「……かまわない。ただし、今度からは無断で来るのはやめろ。
   ウソでもいいから、なにか理由をつけてから来るんだ」

姫「うん、分かった」

姫「あと最後に質問があるんだけど」

団長「なんだ?」

姫「あなたはなんで自警団を結成──」


33 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 22:51:17.07 ID:PhEYd7Yi0
団長(殺気──!)

団長「──構えろっ!」ザッ
姫「えっ!?」

ザザザザッ!

近くの茂みから、黒い影が4つ飛び出してきた。

暗殺者A「よく気づいたな。命をもらい受ける」ジリジリ

姫「なに、なんなの!? この人たちっ!」
団長「来るぞっ!」

4人の暗殺者が、二人の周囲を回り始める。

姫「速い……!」
団長「動きに惑わされるな。飛びかかってくる瞬間だけを、落ち着いて待て」
姫「はっ……はいっ!」

ババババッ!

4人の暗殺者が一斉に飛びかかってきた。


34 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 22:53:34.13 ID:PhEYd7Yi0
キンッ! ザンッ!

姫は落ち着いて暗殺者Dの鉄爪攻撃を受け止め、反撃で胸を切り裂いた。

暗殺者D「ぐあっ!」

団長は、暗殺者が飛びかかる瞬間に自らも飛び、空中で二人を斬り捨てる。

暗殺者B「げぇっ!」
暗殺者C「ギャアッ!」

暗殺者A「ちぃっ……!(せめて姫を殺──)」ダッ
姫(来るっ!)

残る暗殺者Aも、姫を狙ったところを、背後から団長の剣で貫かれた。

暗殺者A「ぐえぇっ……!」ドサッ


35 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 22:56:42.65 ID:PhEYd7Yi0
姫「な、なんだったの……こいつら……」ハァハァ

団長「さぁな」

姫「山賊たちの仲間かしら? ほら、私たちどっちも恨みを買ってるでしょ」

団長(いや、ちがう……。コイツらはかなり訓練された暗殺者だ。
   目線からして、ターゲットは俺ではなかった……。
   城に帰ってくるであろう彼女を待ち伏せていた……?)

団長(クソッ……一人くらい生かしておくべきだったな)

団長「おい」

姫「なに?」

団長「明日から、外出は絶対一人でするな。あの隊長なら信頼できるはずだ。
   アジトに来る時も彼と一緒に来るんだ。いいな」

姫「えっ、なにもそこまでしなくても──」

団長「絶対だ。でなきゃ、もうアジトには入れない」

姫「もう……分かったわよ」



37 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 22:59:49.56 ID:PhEYd7Yi0
城に戻った姫を、国王たちがたしなめる。

国王「まったく、心配させおって……どこに行っておったんだ?
   無事に帰ってきたからよかったようなものの……」ゴホッ

姫「ごめんなさい、お父様」

大臣「本当に、ご無事で何よりでした……。
   これも日頃から姫君が剣術修業を重ねていたからでしょうな」

姫「ふふっ、ありがとう大臣」

執事「部屋にあなたがおられなかった時は、心臓が止まりそうでしたよ。
   さ、お疲れでしょう。今夜は早くお休み下さい」

姫「うん、そうするわ、執事。本当にごめんなさい」


38 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 23:02:48.03 ID:PhEYd7Yi0
翌日──
城の中庭で、姫は隊長に昨日のことを相談した。

隊長「──自警団アジトに行ってたんですか!? たった一人で!?
   ここからじゃかなりの距離があったでしょうに……」

姫「うん」

隊長「まったく、いつもながら姫様の行動力には驚かされますよ」

姫「それでね、私これからも時々あそこに行きたいの」

姫「でも私、山賊や野盗に恨みを買ってるでしょ?
  だから、行く時は隊長にもついてきて欲しいんだけど……」

隊長「もちろん外出に同行するのはかまいません。全力でお守りします。
   しかし、自警団のアジトに行くというのは……。
   城内には彼らを嫌っている人間も大勢いますし」

姫「うん……分かってる。特に大臣なんかは大嫌いでしょうね。
  だから、まだ隊長にしか話していないわ」

隊長「………」


39 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 23:05:31.95 ID:PhEYd7Yi0
姫「私、これまで国民を私がずっと守っていると思ってた。
  この剣で守れてるって思ってた」

姫「でも……真実はちがった。私はずっと国民に守られていたのよ」

姫「襲われた村や町に私が駆けつけると、みんな喜んで“ありがとう”といってくれる。
  本当は山賊たちに襲われた苦しみや悲しみの方が大きいはずなのに。
  でも、私はそんなこと知らなかった。知ろうともしなかった」

姫「隊長だってそう。私をリーダーに立てて、ずっと守ってくれてたんでしょ?
  隊長がいなかったら、私なんてとっくに死んでたかもしれない。
  でも、私は隊長に守られていたことなんか知らなかった」

姫「いえ……本当は知ってたけど、見て見ぬフリをしていたのかもしれない。
  それを認めたら、私は私でなくなるような気がしていたから……」

姫「私は……もっと学びたい。本当の意味で国民を守れる人間になりたい!
  でもそれはお城の中にいるだけじゃ、なかなか難しくて……。
  だから……」


40 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 23:08:15.39 ID:PhEYd7Yi0
隊長「……分かりました、姫。
   姫の剣術は、今や城内においてもトップクラスですし、
   武者修行という口実でもつければ、週一度くらいはなんとかなるでしょう」

姫「ありがとう、隊長っ!」

隊長「それに私も武人のはしくれとして、彼らの活躍には一目置いていました。
   彼らと交流することは、きっと姫を大きく成長させるでしょう」

姫「よかったぁ……隊長がオーケーしてくれて」

隊長(しかし妙だな……。姫の性格ならばいちいち私などに相談せず、
   昨日のように一人でアジトに行ってしまいそうなものだが……)


41 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 23:10:54.87 ID:PhEYd7Yi0
一週間後──
姫は週に一度、武者修行をしたいと国王に申し出た。

国王「ふむ、ウェスト地方へ武者修行か。
   たしかに、もう城内にはお前の相手になれる者が少なくなってきたと聞いておる」

姫「うん、すごく強い人がいるって聞いたの」

大臣「ところで、姫お一人で行かれるのですかな?」

姫「いいえ、隊長と一緒に行くわ」

隊長「私が姫を全力でお守りいたします」

大臣「……そうか、それならば安心だ」

執事「姫、くれぐれもお気をつけて……姫にもしものことがあったら私は……」

姫「大丈夫よ。国一番の剣士がついてくれてるんだから」

姫と隊長は、もちろんウェスト地方には向かわず、自警団アジトへと向かった。


42 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 23:14:07.81 ID:PhEYd7Yi0
自警団アジト──

見張り台の門番が、姫と隊長を発見する。

門番「うおっ、姫!?(……ともう一人、強そうな兵士がいるな)」

姫「こんにちは、また来ちゃった。開けてもらえるかしら?」

門番「あ……はい、開けます!」ガタンゴトン

アジトの門が開かれる。

姫「ありがとう」

隊長(すごいなコレは……。前に見た時よりもアジトが増築されている。
   仮に王国軍で攻め込んだとしても、たやすくは落とせんだろうな)

姫「さ、入りましょう、隊長」

隊長「え、私も入っていいんですか?」

姫「もちろんよ。親衛隊長なんだから、ちゃんとついてきてくれないと」

隊長「は……はい!」



44 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 23:17:46.36 ID:PhEYd7Yi0
「姫がまた来たって!?」 「おおっ、本当だ!」 「やっぱ可愛いなぁ~」

まだ二度目の訪問だというのに、姫はすっかり人気者になっていた。
姫もまた、すっかり自警団のノリに適応してしまっていた。

狙撃手「今日は俺が弓教えてあげますよ、弓」

女僧侶「一緒に祈りを捧げませんか?」

芸人「いやいや、ぼくが声帯模写を」

盗賊「いや、この俺がピッキングの極意を──」

副団長「オイオイお前ら、姫さんを変な道に引き込もうとするなよ」

姫「ん~……じゃあ今日は弓を教えてくれる?」

狙撃手「よっしゃあっ! さっそく射撃場へ行きましょう!」

隊長(スゴイな……私は姫の適応力をあなどっていたかもしれん)

団長「隊長殿」スッ

隊長「!」

団長「少し話があるんだが、よろしいだろうか」


45 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 23:21:11.68 ID:PhEYd7Yi0
団長の部屋──

隊長「──姫が狙われてる!?」

団長「あれはかなり訓練された暗殺者だった……。
   生かして黒幕を吐かせるべきだったが、そんな余裕はとてもなかった」

隊長「なるほど。で、君が姫に私を一緒に来させるよう助言したわけか。
   ──姫にはそれを?」

団長「教えてないし、彼女は昔退治した山賊の残党かなにかだと思っている。
   もし教えて、彼女が城のだれかに相談して、それが黒幕だったら最悪だからな」

隊長「たしかに……。くそっ、なんということだ……!」

団長「彼女はいい子だ。近い将来必ず、この国にとって必要不可欠な存在となる。
   どうか守ってあげて欲しい」

隊長「もちろんだ。親衛隊長の名にかけて、姫に手出しはさせん!」

団長(王国軍には珍しく誠実な人だ。この人のような兵士がもっと多くいれば、
   自警団などなくてもよくなるかもしれないのに……)


46 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 23:24:48.25 ID:PhEYd7Yi0
すると、副団長が酒ビンを持って部屋に入ってきた。

副団長「よっ、お二人さん。堅苦しい話はそこまでにして、一杯どうだい」ゲフッ

団長「ったく……飲めるわけないだろう、隊長殿は職務中だぞ」

副団長「ハハッ、そりゃそうか。赤ら顔で城戻ったらまずいもんな。
    ところで隊長さん、あのクソヤロウはまだくたばってないのかい?」

隊長「……日々職務に励んでおられる」

副団長「真面目な人だね、アンタも。別に悪くいっても怒りゃしないよ。
    俺とアイツの縁はとっくの昔に切れてるよ」

隊長「国王陛下がご病気になられてから、急激に発言力を増してきている。
   城内にも彼を支持する一派ができてきたしな。
   正直いって、最近は臣下としての礼に欠いていると感じることもある」

副団長「──ったく、いつまでたっても相変わらずだな。あのタヌキは……。
    いったい何を企んでいるのやら……」


47 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 23:28:46.13 ID:PhEYd7Yi0
夕方、姫と隊長はアジトを発った。

姫「今日は狙撃手に弓を習ったの。
  城でも少しやったことはあるけど、難しかったわぁ」

姫「狙撃手ってスゴイのよ。的の真ん中に百発百中。
  動かない的なら目をつぶってても当てられるとかいってたし。
  でも私も的に当てるくらいなら、なんとかできるようになったけどね」

姫「隊長は、団長の部屋にずっといたけど、なにを話してたの?」

隊長「……え、ああ、私も彼も剣の使い手ですからね。
   剣の道とはかくあるべきか、話し合っておりました」

姫「へぇ~」

姫「隊長と団長って、どっちが強いのかな?」

隊長「試合形式なら私もおくれを取るつもりはありませんが、
   実戦経験ではやはり彼の方が上でしょうね」

姫「ふぅ~ん……」


49 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 23:30:52.41 ID:PhEYd7Yi0
その後も、姫と隊長は武者修行という名目で、週に一度自警団アジトに通い続けた。



ガキンッ!

姫「くっ……! 私の負けね……」

団長「アンタは一対一に慣れすぎてて、少し視野が狭いな。
   だからフットワークで揺さぶると、すぐにスキができる」

姫「視野……」

団長「いきなり今までのスタイルを変えるってのはなかなか難しいだろうが、
   今度から後ろも見るくらいの気持ちで戦ってみるといい」

姫「後ろ……ねぇ」

隊長(ほう、姫様をあっさりと負かすか……やはり強いなあの男)




51 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 23:34:08.88 ID:PhEYd7Yi0


キンッ! キンッ!

姫「ふぅ……」

副団長「いやぁ~お強いですね。さすがは姫さん」

姫「副団長の剣筋は面白いわね。トリッキーな感じで勉強になるわ。
  隊長のキレイな剣とも、団長のワイルドな剣ともちがう。
  やっぱり変なことばかり考えてると、そうなるのかしら」

副団長「姫さん、ナチュラルに毒吐きますね……」



女僧侶「これが祈りの姿勢です」サッ

姫「こ、こう……?」スッ

女僧侶「えぇ、とても美しいですわ」

姫「こうすれば、私もあなたみたいに清楚になれるかな……?」

女僧侶「姫様は今のままでも十分清楚でございますわ。私には分かります」




52 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 23:36:45.19 ID:PhEYd7Yi0


カチャッ

姫「やったっ! とうとう開いたわ!」

盗賊「おおっ、すげぇ! 姫様にはピッキングの才能がありますぜ!
   これならもう、城下町のどの家にだって空き巣に入れますぜ」

姫「入らないわよ!」



芸人「ぼくはこうやってノドをいじくれば、大抵の声は出せますよ」クイッ

芸人「私は姫様を絶対にお守りいたします!」

姫「すご~い、隊長そっくり!」

隊長(私はあんな声だったのか……)




53 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 23:41:46.86 ID:PhEYd7Yi0


狙撃手「自警団に入った理由……ですか?」

姫「うん」

狙撃手「俺、元々はまぁ……殺し屋みたいなことをやってたんですよ。
    金をもらって標的を撃ち殺すって感じの」

姫「そうだったんだ……」

狙撃手「で、ある日の標的が団長だったんです。
    しかし、それまで百発百中だった俺の矢が──初めてかわされたんです」

姫「ウソ、あなたの矢をかわしたの!?」

狙撃手「しかも、矢が飛んできた方向から俺のいる場所がバレちゃって、
    団長がものすごいダッシュで俺に向かってきましてね」

狙撃手「あ、終わった。殺される! と思いましたよ。そしたら──」

団長『いい腕だった。どうだ、自警団に入る気はないか?』

狙撃手「っていわれましてね。……で、勢いで“入ります”っていっちゃいました」

姫「へぇ~」




54 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 23:43:51.52 ID:PhEYd7Yi0
またある日、姫と副団長は二人きりになっていた。

副団長「すっかり姫さんは自警団のアイドルですよ。
    週に一度のこの日を、みんな楽しみにしてます」

姫「ありがとう」

姫「ところで最近、みんなに聞くようになったんだけど……。
  あなたも自警団の初期メンバーなのよね、なぜこの自警団を作ったの?」

副団長「う~ん、難しい質問ですね。
    俺なんて、ただ単に権力から逃げたかったってだけだったんで」

副団長「──姫さんは、俺が大臣の息子だったって知ってますか?」

姫「えぇっ!? いえ、全然……」

副団長「ハハハ、隊長さんも話してなかったか。
    じゃあ、俺とアイツ(団長)の出会いについて少し話しましょうか」


55 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 23:47:32.46 ID:PhEYd7Yi0
~ 10年前 ~

城下町──

城下町ではパレードが行われていた。
馬車に乗った国王とまだ幼い姫が、国民に向かって手を振っていた。

団長(少年)は、町の丘の上からそれを眺めていた。

団長(少)「あれがお姫様かぁ……。やっぱり可愛いなぁ……」

すると、副団長(少年)率いるグループが現れた。

副団長(少)「オイオイ、なんかきったねぇのがいるぜ!」ザッ

団長(少)「!」

少年A「ホントだ、ありゃ浮浪児ですよ!」
少年B「めでたいパレードの日に、なんであんなのが町にいるんだか……」

副団長(少)「お前みたいなクズに、姫様を眺める権利があると思ってんのか?
       おい、ちょっと来いよ」グイッ

団長(少)「や、やめて……」


56 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 23:53:09.28 ID:PhEYd7Yi0
ドスッ! バキッ! ドゴッ!

団長(少年)「うぅ……げぇっ」ゴホッ

少年A「そ、それ以上やったら、ヤバイんじゃないですか?」
少年B「死んじゃいますよ……そいつ」

副団長(少)「別に死んだっていいんだよ。だって俺、大臣の息子だし。
       さすがに人を殺したことはねえけど、ま、どうにかなるだろ」

副団長(少)「それより、これ見ろよ。家から持ってきたんだ、すっげえだろ」ズシッ

団長(少)(剣……!)

副団長(少)「父さんもこういうクズは美観を損ねるから、
       町から一掃すべきって、いっつも耳にタコができるくらいいってるしな。
       へへへ……剣なんて初めて持ったぜ。俺かっけぇ~」

少年A「マ、マジでやるんですか?」
少年B「さすがにそれはマズイんじゃ……」

副団長(少)「よし、お前を姫様のパレードを見た罪、で処刑する!」

団長(少)「見てしまって、ご、ごめんなさい……。助けて下さい……!」

副団長(少)「ちっ、けっこう重いな、これ……。ようし、動くなよぉ~?」ヨロッ

団長(少)「い、いやだぁぁっ!」


57 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 23:53:40.07 ID:PhEYd7Yi0
ドスッ! バキッ! ドゴッ!

団長(少年)「うぅ……げぇっ」ゴホッ

少年A「そ、それ以上やったら、ヤバイんじゃないですか?」
少年B「死んじゃいますよ……そいつ」

副団長(少)「別に死んだっていいんだよ。だって俺、大臣の息子だし。
       さすがに人を殺したことはねえけど、ま、どうにかなるだろ」

副団長(少)「それより、これ見ろよ。家から持ってきたんだ、すっげえだろ」ズシッ

団長(少)(剣……!)

副団長(少)「父さんもこういうクズは美観を損ねるから、
       町から一掃すべきって、いっつも耳にタコができるくらいいってるしな。
       へへへ……剣なんて初めて持ったぜ。俺かっけぇ~」

少年A「マ、マジでやるんですか?」
少年B「さすがにそれはマズイんじゃ……」

副団長(少)「よし、お前を姫様のパレードを見た罪、で処刑する!」

団長(少)「見てしまって、ご、ごめんなさい……。助けて下さい……!」

副団長(少)「ちっ、けっこう重いな、これ……。ようし、動くなよぉ~?」ヨロッ

団長(少)「い、いやだぁぁっ!」


58 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 23:55:21.98 ID:PhEYd7Yi0
ブンッ! ブウンッ! ガキンッ!

副団長(少)「……ととっ、ちょこまか逃げるんじゃねぇよ! クソッ!」
団長(少)「うわぁっ! ひいぃっ!」

ザシッ!

副団長(少)「よっしゃ、足をかすめた! へへっ、これでもう逃げられねえぞ」

団長(少)「た、助けてぇ……」ガクガク

副団長(少)「死ねぇっ!」ブオンッ!

団長(少)「うわあぁぁぁっ!」

ガンッ!

団長(少年)が無我夢中で放った拳が、剣を振りかぶった副団長(少年)に命中した。

副団長(少)「がへっ……!?」ガクッ

団長(少)「(当たった……?)うっ……うわあぁぁぁっ!」ダッ

団長(少年)は馬乗りになると、副団長(少年)の顔面をがむしゃらに殴った。


59 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 23:56:36.20 ID:PhEYd7Yi0
ドカッ! バゴッ! ガスッ!

少年A「なんだアイツ、メチャクチャ強いぞ!」
少年B「に、逃げよう! もう、俺ついてけねぇよ!」

しばらくして、気絶していた副団長(少年)が目を覚ますと、
横には団長(少年)が座っていた。

副団長(少)「うぐっ……なんで、お前まだいるんだよ……。
       しかも剣で襲ってきた相手を、助けるのかよ……?」

団長(少)「君が斬りかかってきた時、とても怖かったから……。
      殴ってる最中、きっと君も怖いんだろうな、と思ったら……。
      それに起きた時、だれもいなかったら、イヤだろうし……」

副団長(少)「意味わかんねーよ……クソッ……」

副団長(少)(あの二人は……逃げちまったか……。
       剣で素手に負けて、子分に逃げられて、あげく情けをかけられて……)

副団長(少)(超よえーじゃん……大臣の息子……)

副団長(少)「おい」

団長(少)「?」

副団長(少)「俺の負けだよ……」グスッ




60 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/21(土) 23:59:11.91 ID:PhEYd7Yi0
副団長「──とまぁ、このように戦いを通じて友情が芽生えたわけです」

姫「そうだったんだ……」
 (戦いっていうか、副団長が一方的に絡んでボコボコにされただけのような)

副団長「その後アイツとつるむうち、すっかり考え方が変わってきましてね。
    権力に目がくらみ保身しか考えてない大臣に、嫌悪すら覚え始めました。
    そして俺は飛び出したんです」

副団長「──で、そのうちに、俺たちは俺たちでこの国を守ろうぜ!
    って感じで盛り上がって、小さいながらも自警団を結成したんです」

副団長「もう大臣の中じゃ、俺は勘当どころか“最初からいなかった”ことに
    されてるはずです。
    城の中でも俺の話題はタブーになってるでしょうね、きっと」

姫(たしかに……今まで城にいて一度も聞いたことなかったわ)

姫「でも……私もいわゆる権力側の人間なのよね」

副団長「何をおっしゃる。姫さんはあんな欲ボケダヌキとはちがいますよ。
    天と地、月とスッポン、です」

姫(スッポンって何かしら……すっぽんぽん?)


61 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/22(日) 00:03:16.19 ID:jij4V/nh0
副団長の話を聞いた姫は、すぐに団長の部屋に向かった。

姫「……ちょっとお話、いい?」

団長「どうした?」

姫「今、副団長にあなたと出会った時のことを聞いたの」

団長(アイツめ……)

姫「あなたは……どうして自警団を作ったの?」

団長「………」

団長「俺は……どこでどう生まれたのか分からない人間なんだ。
   ある時点より前の記憶がない」

姫「え?」

団長「俺を拾った老夫婦は、リバー川の下流で死にかけてた俺を偶然発見したらしい」

姫(なんだか昔読んだ童話の『ピーチタロウ』みたいな話ね)

団長「一年ぐらい育ててもらったが、まもなく二人とも死んでしまった」

団長「一人残された俺は、リバー川をさかのぼるように歩いた。
   なんの根拠もないが、そうすれば家族に会えると思ったんだ。
   そうしたら、この国にたどり着いていた」


62 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/22(日) 00:05:43.96 ID:jij4V/nh0
団長「しかし、どこで生まれたかも分からない薄汚い子供に居場所はなかった。
   とにかく一日一日を必死で生き延びた。
   もう家族を探すどころではなくなっていた」

団長「それから数年が経ったある日、アンタのパレードを見ていたら……
   という話に繋がるわけだ」

姫「そうだったの……」

団長「出会い方こそ最悪だったが、副団長には本当に感謝している。
   文字の読み書きやその他の教養は、全部アイツに教わったからな」

団長「そしていつしか、国の目が届いていない人たちを俺たちで助けよう、
   権力や地位がない俺らでも力を発揮できる組織を作ろう──
   と考えるようになった」

姫「……私もっ」

団長「?」

姫「私もやる! 私も頑張って、この国を守れるようになるっ!」

団長(……やはり、この方は俺が見込んだ通りの人だったようだ)


63 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/22(日) 00:08:02.19 ID:jij4V/nh0
姫の成長はめざましかった。

これまでは剣術修業に夢中で城の会議になど参加することはなかったが、
積極的に参加するようになった。

大臣「辺境の村や町の治安維持に兵力を割くですって?
   バカバカしい! これまで通り個々に自衛させてればいいんですよ!
   この城と城下一帯こそ、この国の象徴なのですから!」

姫「じゃあ大臣。聞くけど、年間山賊の被害がどれくらいあるか今すぐいえる?
  いつ山賊が来るかもしれない村に住む気になれる?」

姫「それに、そもそもなんで彼らは山賊や野盗に身を落とすはめになったのか、
  少しでも考えたことがある?」

大臣「い、いや……それは……」

国王「うむ……ワシらも城やその周辺にばかり目を向けすぎていた。
   姫、おぬしの提案、善処する必要がありそうじゃな。ゴホッ、ゴホッ」

「姫もいうようになったな」 「頼もしいよ」 「言葉に窮する大臣なんか久々だ」

大臣(くっ……小娘がァ!)


64 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/22(日) 00:10:42.03 ID:jij4V/nh0
城 姫の部屋──

執事も姫の成長を喜んでいた。

執事「いやはや、最近は会議であの大臣をコテンパンにしているようで。
   私など、正直申しまして胸がスッとしております」

姫「城内の口喧嘩の勝敗なんてどうでもいいわ。
  私は剣以外のことも強くなって、この国の人たちを守りたいの」

執事「姫……。男子のお世継ぎ様が亡くなられ、
   この国の将来を不安に思ったこともありましたが、今は全くありません。
   姫様ならば、この国を背負って立つことができます!」

姫「男子の世継ぎ……お兄様……。ちょうど私が生まれる直前くらいに
  亡くなられたんだっけ……」

姫「お父様も触れられたくないみたいだし、あえて聞かなかったけれど……。
  執事、お兄様について知っているなら少し教えてくれる?」

執事「はい……あれは不幸な事故にございました」


65 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/22(日) 00:12:48.17 ID:jij4V/nh0
執事「国王様は幼い若を連れ、馬車で各地を巡行しておられました。
   しかし……ある狭い山道に差しかかった時、馬車が転倒してしまい──
   なんと若は激流のリバー川の中に投げ出されてしまいました」

執事「もちろん国王様は手を尽くして、若を探されましたが、
   あの激流に呑まれてしまえば大人とて助かるのは難しい。
   結局、ご遺体すら見つかりませんでした……」

執事「しばらくして、国王様はやむなく若君は死亡したものと公式発表しました」

執事「国王様は大変後悔し、それまで定期行事だった巡行を行わなくなりました。
   それが今日の治安悪化につながった、という意見もあります」

執事「そしてまもなく姫様がお生まれになりましたのも束の間、
   今度は王妃様が急逝し、ご不幸が続いた国王様のお体も日に日に……」

姫「……ねぇ執事」

執事「はい?」

姫「もし……もしもよ。お兄様が今もどこかで生きてたら、どうなってると思う?」

執事「は、はぁ……そうですなぁ……。
   きっと姫様に負けず劣らずの、立派な方になられているのではないかと」

姫「ありがとう、執事」


69 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/22(日) 00:16:36.13 ID:jij4V/nh0
団長『俺を拾った老夫婦は、リバー川の下流で死にかけてた俺を偶然発見したらしい』
執事『なんと若は激流のリバー川の中に投げ出されてしまいました』

姫はなかなか寝つけなかった。

姫(団長ってもしかしたら……。時期だってかぶるし……)

姫(でも、ありえないわよね)

姫(リバー川の上流から下流なんて、いくらなんでも長すぎる)

姫(もうたしかめる術はないけれど……)

姫(もし、団長が私のお兄様だったら──)

姫(……嬉しいな)



72 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ[]投稿日:2012/01/22(日) 00:22:22.19 ID:jij4V/nh0
翌日──
城の中庭で姫と隊長が談笑していた。

隊長「なんだか今日はご機嫌ですね、姫」

姫「やっぱり分かる? ふふっ」

隊長「それにしても、自警団と知り合ってから姫は輝きを増されました。
   彼らのところに行くようにしたのは、やはり正解だったようですね」

姫「次は三日後よね? あ~あ、早く行きたいなぁ」

隊長「ハハハ、私もですよ。しかし、これ以上頻度を増やすと怪しまれます。
   さ、剣の稽古を始めましょう」

姫「うんっ!」



──しかしこの日、悲劇は起こってしまう。


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