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女「そこまでです、タイムトラベラー!」男「またかよォッ?!」4/5

女「そこまでです、タイムトラベラー!」男「またかよォッ?!」


女「そこまでです、タイムトラベラー!」男「またかよォッ?!」



143 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/17(木) 22:49:19.19 ID:HPCLQx3M0

男「―頑張れよ、俺。こっちは女ちゃんとの約束があるんだから…」

『…まかせとけ、オリジナル。』

 ったく…よく言うよ

男「そういう卑屈なところが違うのかなぁ~…」

 ”閻魔帳”から視線を逸らして、空を見上げながら溜息を吐く。

友人A「おーい!どうした男!!らしくもなく黄昏やがって!!」

 足の上に”閻魔帳”を置きながら空き教室の窓枠に腰掛けていると、窓の外、下から声が聞こえた。

男「あぁ、気にすんなー。」

友人A「あんだぁっ!そのなめた反応はぁっ!!」
友人B「俺たち…男に追い越されたのかな…精神年齢的に…」
友人C「はっ?!まさか!!!男ォ~~!!貴ッ様、魔法使い見習い仲間の俺たちを裏切ったんじゃ…」

男「うっせ!馬鹿!!モテないから悩んでんだよっ!!」

友人A「そりゃそうか、男だもんな。」
友人B「馬鹿と煙と男はモテないもんな。」
友人C「良い奴過ぎてな…。」

 好き勝手言いやがって!!
気が楽だからって、男子の数が9割越えの学校を選んだのは失敗だったかな…。

男「…お前らが全員女性だったら良かったのに…」
友人A「突然怖い事言うなよ?!この高さで案外聞こえるんだからな?!!」
男「気にすんな馬鹿ども。とっとと帰れ。」
友人B「お前もなー。」

 文字通り上からの俺の忠告を素直に聞いて、馬鹿どもはわいわいと騒ぎながら帰っていく。

男「遊びの誘いがなかったって事は、全員寄り道せずに帰るんかね。」

 まぁ、流石に休校日にまで学校に来て日没まで補修受けてたら遊ぶ体力も無くなるか。
門限もあるだろうし。

男「俺も早くかえらねえと、母ちゃんうるせぇからなぁ…」

 そうぼやいて、思い出す。
この本に書かれたパラレルワールドの俺には、親が居なかったんだっけ。

男「………(スス」

 閉じた”閻魔帳”の背表紙を撫でる。

男「それは……嫌だな。」

 あこがれたりはするけれど。




元スレ

女「そこまでです、タイムトラベラー!」男「またかよォッ?!」
SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)@VIPService



144 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/17(木) 23:06:29.72 ID:HPCLQx3M0

 過去に飛び立ったソイツは、最後には「俺だったらこうする!」というような事を次々とこなしていった。
常に人を見下した態度だけれど、少しでも多くの人を救えるならなんだってする矛盾も手にしてくれた。

男「…けど、俺にはパラドックスを起こす勇気なんてねぇよ…。」

 一度だけ、手違いで遠い過去まで飛んでしまい、そこで喰われかけていた一人の女の子を救ってしまったが――

男「―慌ててこの時間に連れてきて、無理矢理タイムパラドックスを押さえ込んだけど…」

 歴史では、彼女はそこで食い殺されて、人類の存続云々には関わっていないはずだと思ったから、
思わず身寄りのなくなったその子を連れ帰り、その時間から消してしまった。


女の子「あにぃちゃー!!!」


 またも、窓の外から俺を呼ぶ声。

男「…人気者は辛いぜ…(ハァ」
女の子「あはは!かっこわるー!!」

 容赦ない突っ込みに、窓から外へ落ちてしまった。

慌てずに”閻魔帳”で自分記事の最新ページを早びきして文字の先に飛ぶ。

空き教室中が蒼い光に包まれる。

 変わらず、俺は窓枠に腰掛けていた。

かすかに、遠くから誰かが近くに走り寄ってくる音が聞こえた。

 その音が止むと同時ー

女の子「―あにぃちゃー!!!!」
男「かっこ悪いって言うなァっ!!!」

―怒鳴った。



145 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/17(木) 23:31:39.42 ID:HPCLQx3M0

女の子「な、なぜわかったー!!」

 ちっこい癖に大仰に体を仰け反らせて、俺のするような反応をとる女の子。

男「俺をなめるな!」

 窓枠に仁王立ちし、ソイツを見下ろす。

女の子「危ないぞー?」
男「うむ、そうだな。」

 ゆっくりと教室の床に足を下ろし、同じ姿勢で今度は安全に見下ろす。

女の子「ホッ…」

 どうやら本当に心配だったようで、無い胸を撫で下ろしていた。

”閻魔帳”でコイツの記事を開く。

―コイツの名前は”チビ”だ。俺が勝手につけた。―

 チビの最新のページを開いて、文字のすぐ横、まだ何も記されていない空白に指を添える。

そのまま両手を窓の外に突き出し、チビを見る。

女の子改めチビ「………?」

 俺を見る眼をまん丸にして、首をかしげている。
にっこりと笑いかけて、タイムトラベルした。

 一瞬の浮遊感と、地に足が着いた抵抗と重力を感じた瞬間、駆け出す。

蒼い光が濃すぎてよくわからないが、チビの向いている方向からして校舎はこのまま真っ直ぐ進めば行けるだろう。

 ―光の壁を突き抜ける。

すぐ目の前に、校舎の壁があった。
両手を突いて勢いを殺し、体を浮かせてから手の力だけで少し後ろに飛ぶ。

 見上げると、”閻魔帳”が視界を覆った。

男「ーあだっ!!つ…」
チビ「あにぃちゃんかっこ悪い…」
男「…うるせぇ」

 重々承知だっつの。

顔に被った”閻魔帳”を掴んでどける。

今のは、悪質なタイムトラベラーとの相次ぐいざこざで身に着けた4次元コンボの一端だ。
わざわざ階段で降りるのがめんどくさかったのだ。

男「さて…」

 チビの頭に”閻魔帳”を乗せるようにポフッと軽く叩く。

チビ「あうっ」
男「帰るか。」
チビ「うんっ」

 ”閻魔帳”で見えないが、こいつは満面の笑みを浮かべているだろう。

俺がロリコンに目覚めない内に、モテ期はこないものだろうか。


146 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/18(金) 00:00:34.34 ID:6eGGRWjP0

―――――。

 チビを家に送り、俺も自分の家に帰った。

 そのチビをこの時代に連れ帰ってまずどうしたかというと、まず孤児として国に届け出た。

その後は完全に役人に任せて、たまに思い出してはその身を案じる程度にして数ヶ月ほど気ままに暮らしていたが―

―今思えばそれがまずかった。

 詳しくDNA検査などをすれば、コイツが時代を超えてここに来た事ぐらいすぐにわかるのだ。

そんなことが世間に知れては、大騒ぎになるが。政府にすでに未来人が紛れ込んでいたらしく、幸運にもその情報が公表される事は無かった。

―しかし、悪い事に、素行の悪いトラベラーにチビが狙われるようになってしまったのだ。


 更に数ヵ月後、TVのニュースで身元不明の幼児の惨殺事件が取り上げられ、
チビのことかもわからないのに居ても立っても居られなくなった俺は数ヶ月前へと時間渡航をした。

幾度の時間の繰り返しと、些細な情報操作により、家の近所に住む子宝に恵まれなかった老夫婦の家にチビが養子として迎えられるように仕向け、
他のタイムトラベラーからチビを守る為に、俺は影で暴れまわるようになった。

 繰り返す時間の中で、何度も政府関係者にばれたりもしたが、その記憶も最早俺にしか残っていない。

そして俺には、その長い戦いの中で、時間渡航者の組織のような奴らからかっさらった、この”閻魔帳”がある。
今は平和だが、悪意あるタイムトラベラーは影で誅して過ごしている。

男「………」

 自室のベッドに転がり、蛍光灯に手を透かしてみる。

男「…貧弱な力だった……」

 他のタイムトラベラーは、皆、俺よりも優遇された条件つきだった。
何度も過去を消されそうになったが、運命なのか、辛くも今まで生き延びてきた。

 過去を消されそうになる恐怖を、眼で見て感じてきたからこそ、最早タイムパラドックスを起こす勇気が無くなってしまったのだ。



147 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/18(金) 00:26:58.20 ID:6eGGRWjP0

 ふと、異世界の俺のことを思い出す。

俺の手垢がべっとり着いた”閻魔帳”を開く。

思い馳せるは”この本の作者”という曖昧な事象。

そうして記されていくのは、俺のこと、

異世界の俺のこと、

その彼女さんとやらのこと、

女ちゃんのこと。

 パラパラとページを進めるが、学校で見た時より多く捲っても、アイツがパラドックスに到達したページには至らなかった。

男「…おぉ、そうか……過去を変えられたか…。」

 異世界の俺が、その世界の構造を知らされた時も、似たようなことがあった。

過去の事象が次々と消えていったのだ。

しかし、ソイツの思い出だけは記されたままだった。


 記事と記される人物がそのときよりも増しているということは、無かった事にされた事象を、もう一度やり直せたんだ。


なんとなく誇らしい気持ちになりながら、尚もページを捲っていると、学校で読んでいた部分の先に、いくつかの文章が増えていた。

男「ん~と…なになに?」

女『はっ!ここはっ?!学校……くっ、あの女…一体私に何を…』

男「女ちゃんキターーーーー!!」

 俺のテンションMAXである。

女『またこの時代の”蝶の標本(バタフライ・サンプル)”を探さない……と…?』

 その呼び方は不変であった。

女『…なぜ、こんな所に……私がここに居た時間といえば……2日前ですか…』

女『……ッ!!』

女『男さん、今助太刀に向かいます…』

 女ちゃんのことはそれっきりだ。

男「女ちゃんまであいつの事追っかけて……おにいさん悔しいよ…」

 血の涙を流す。
ハンカチを差し出してくれるような人は居ない。

大人しく続きを読みふける

友『ここは…ここはどこ…?私は、私は消えたはず…ど、どうして生きてるの?!』

男「………フム」

 どうやら、彼女さんはパラドックスに産み落とされたみたいだ。

友『ここは……パラドックス?!……あぁ…そっか……はじめからやり直さなきゃいけないんだ…』

友『………?…あ…れ…?”蝶の標本”……?どうしてこんなところに落ちて…』

友『!!』

友『もう!男のばか!!余計な事してっ!!』

 その後には、先ほどの俺とチビのじゃれあいが記されていた。

男「…つまり、あちらの男さんは彼女を救えて、その彼女さんは”閻魔帳”を読んで、急いで過去に飛んだ……と。」


148 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/18(金) 00:41:09.79 ID:6eGGRWjP0

男「バカップルめぇ……っ」

 唸りながら、興味本位で過去のページへ戻ってゆく。

ば、バカップルが過去で何してるのかなんて、これっぽっちも興味ないんだぜ!


 そうして眼を通した事象には、俺にとって驚愕の景色が描かれていた。


男「んな…アホな……」

男「自分以外の生物を…時間跳躍させる……?」

 そんなこと、出来たのか。

自分のためにしか使わないので、想像すら出来ていなかった。

男「俺なんか、拙い4次元コンボで化け物を伸しただけなのに……」

 クレーターという地球の記録を手繰り、ケダモノを過去に飛ばすなんて……恐ろしい事を考えるもんだ。

男「…蒼い光の嵐だってぇ……?」

男「…はは…ははは……」

 そんな広域を丸ごとタイムトラベルできるのか

男「…バケモンだろ…」

 自分の手を見る。

この能力の真価を、垣間見せられた気がした。


149 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/18(金) 01:06:41.61 ID:6eGGRWjP0

―――――。

 どすんっ!

男「―――って!!」

 コンクリートの床に顔からダイブした。

 ぎゅむっ!

友「―――あたっ!」
男「―――うぐっ?!」

 友がその上に落ちてくる。

 ぎりっ―!!

女「―――ふんっ!!」
男「―――っ!!!」

 誰かの足が俺の腰にめり込んだ。
ギリギリとそのままにじられ、頭の上にも何か柔らかいものがのしかかっていて起き上がれずに身悶える。

男「―――ッ!!―――ッ!!」
友「ちょっ!!動かっ、ないでっ、ひゃっ!!」
女「こォんの変態……いい加減にしなさい…」

 俺の腰にめり込んでいる誰かの脚が、更に沈んでくる。

男「――――――ッッッッッ!!!!」

 頭を振り、苦痛を訴えるが―

友「あっ!いやっ、ちょっ、ほんっ、とにィっ!!」
女「………!!」

 ―更に痛くなるだけだった。

女「…身悶えていないで、さっさと布なり毛布なり用意してきなさい……貴方もこの方も裸同然ではないですか…(ぎりっ」

 そうおっしゃるのならまず俺の腰にめり込んでる誰かの足をどうにかしてください。

しかし、俺の頭の中には女のセリフの一部がリピートされていた。

”貴方もこの方も裸同然ではないですか。”

”この方も裸同然ではないですか。”

”この方も裸同然”

”この方も裸”

 裸って俺の頭の上のこの友ですかァッ?!

…も、もしかして、あの嵐に巻き込まれたから…ぎゅむっ!?

友「ぜ、絶対起き上がるな…っ」

 えぇ、私もそんな昨日のあれより刺激の強いものなどまだ見れる根性はありません…。



150 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/18(金) 01:19:50.47 ID:6eGGRWjP0

友「……って、え?」

 頭上で、友の不思議そうな声が聞こえた。

そうして、俺の頭の上にあった重りはどこかへふわっと浮かぶ。

男「ぷへっ…?」

 息を漏らしながら見上げた先では、――


男「―――ぶっ!!」


――友が、昨日の薄着姿でそこに立ち、自分の体を不思議そうに見回していた。

女「……貴方は、こんな時でもそのような想像を致しますか…」
男「えぇっ?!いや!いやいやっしてない!してないからねぇっ?!」

女「ですが実際に、こちらの友さんはこのような格好になっているじゃあないですか!」

男「これ俺のせいなの?!?!」

 確かにさっきチラッと想像したけど!!

女「ここは貴方のパラドックスなのでしょう?!」

男「―――あ、」

 あ、そうか。

男「わ、!悪いっ!友っ、すぐに別の格好に!!」

 急いで、友のいつも着ていた服を思い出す。

友「お、おぉっ?!…―」

友「―…マジカルチェーンジっ?!(ビシッ」

 戸惑いながら、目の前の不思議現象にぴったりなセリフを即席で放つ友。


151 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/18(金) 01:31:47.31 ID:6eGGRWjP0

 ふわりとスカートを翻しながら、その場で一回転する友。

友「おぉ……あ、そっか…ここは男がたどり着いたパラドックスだから、男しかこの世界は変えられないんだ。」
男「さ、流石に俺より詳しいッすね友さん…」

 だとしたら、俺も早く服を着ねば…
友にはまともな格好をさせたとはいえ、俺はまだ全身でコンクリートの感触をダイレクトに受けていた。

男「……おや?」

 これはもしや…好きな格好になれるのでは…

そう考え、いつもの冷たい蒼い光ではなく、白く暖かな光を全身に纏いながら立ち上がる。
俺がそれを着ているイメージを強く持つ。

やがてその光が四方に散り――

男「…おっしゃ!」
友「……なにそれ」

 えっ

男「『トロン』だよ、知らない?」
友「…ちっとも」

 おかしいな…

ならば!と、『レガシィ』のスタイリッシュなスーツに身を包む。

友「あぁ…そっちはうっすら知ってる。」
男「だろぉ?」
女「なぜそのようにアンリアルな格好なのですか…」

 女の無粋なつっこみに、大仰な手振りで振り返る。

男「タイムトラベラーっぽいだろう?」

 タイムトラベラー関係ないけど。


152 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/18(金) 02:00:30.41 ID:6eGGRWjP0

 ずっと憧れていたスタイリッシュな自分の姿に、かなり興奮。

男「ほらほらー!ディスクもラインも光るぞー!!」

 懐からスティックを取り出し、飛び上がりながらそれを二つに切り離す。
すると、それらは一定の距離の合間を保ちながら空中で勝手に動き出し、無数の光のラインを描き出した。
両手に握り締めたそれはバイクのような起動乗車のハンドルに変わり、光のラインにそって黒光りするボディのビークルが実体化する。

男「うぉぉ!!エアバイクだっ!!」
友「…そのまま映画の世界を作っちゃいそうだね…」
女「…子供ですね…」

 ピロティ内の中空で滞空し、瞳をきらきらと輝かせていると。

友「…う~ん」

 友が大きく唸っていた。

男「…どうした?」

 パキッとハンドルを切り離し、ビークルを先ほどのスティックの形に携帯する。
コンクリートの床に降り立ち、友へと駆け寄る。

男「さっきの嵐に巻き込まれて怪我でもしたか?」
友「うん?いや、そうじゃないんだけどさ…」

友「なんで男が、私の知らない事知ってるんだろう。って…ね?」

男「あ、ホントだ。」

友「それに、ボクも男に作られたも同然なのに、記憶が消えてるどころか、この時間で過ごした分増えてるんだよね…」

 少し落ち着いたのか、友はいつもの”ボク”に戻っていた。

友「……あ、そうだぁ~(ニヤリ」

 いやらしい笑みを浮かべ、両手をまごつかせながら俺に近寄ってくる友。

男「な、なんだよ…」
女「その格好で仰け反るのは、結構シュールですね。」

 うるさい。

友「ボクがどうして自分のことを”ボク”って言うか……覚えてるぅ~?」
男「なっ!お、おまえっ!忘れろって言ったろ!!」

 友が冗談で自分のことを「ボク」と言った時に、つい「その言い方かわいい」と口をついて出てしまったのを、今でも弄って来るのだ。

友「ほぉ~!!覚えてるんだ!」
男「た、たまたまだ…たまたま………」

 ―あれ?…
…確か、昨日一昨日辺りに似たような事訊かれた時は、全然思い当たる事が無かった…のに。

友「…実はね、ボクはあんまり覚えてないんだ……」
男「えっ」
友「ただ、男の為ってのは覚えてたんだけどさ…」

 「おっかしぃ~なぁ」と嬉しそうに呟く友。

俺は、”閻魔帳”越しに会話したオリジナルとの話を思い出していた。


―”今の貴方は確かに全ての”男”と深いところで繋がっています”―

男「あぁ、そうなのかな……」
友「あ、ひどい。今馬鹿にした?」
男「えっ?あ、いやいやそういう意味で言ったんじゃないぞ!」


女「…私だけ場違いな気がするのですが。」

 女は、”閻魔帳”に話しかけていた。


153 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/18(金) 02:16:35.35 ID:6eGGRWjP0

 パンッと手を打ち合わせる。
レザー素材なのかラバー素材なのかわからないが、意外と鳴るもんだ。

男「……さて、それじゃあ、俺の知らない話をしてもらおうか。」

 そう、俺を生み出した理由と、友が消えた理由はまだ聞いていないのだ。

男「和気藹々とした雰囲気でもごまかしきれないからな?」
友「うぐっ」
女「それは私も気になりますね。貴方は何者ですか?」

 女も、いつもの眠たそうな瞳をまん丸にして友に食いかかる。
勢い余ってか、友の手を取って嬉しそうに握り締めている。

女「はっ!そうか!」
男「?なんか察しがついたのか?」
女「いえ、貴方とはじめてあった時の事を思い出しまして…。」

 そう言いながら、女は名残惜しそうに友の手を放した。

友「た、たははっ…わかっててもこの反応されると驚くな……」

 友が苦笑いを挟みながら、気になることを漏らす。

男「”わかってても”?」
友「うん、言ったでしょう?私はこの時間で過ごした分の記憶も増えてるって…」

 観念したように微笑み、両手を後ろ手に組み、何かを思い出すように、もしくはどこから話そうかと悩むように首をかしげる。

友「まず、私の正体はね、男と同じタイムトラベラーなんだ。」

 それは…なんとなく察しがついていた。

男「………」
女「………」

友「それでね…今さっき、男が助けてくれた女の子は、”私”」

男「………」
女「っ!!」

 俺は、うっすらと察しがついていたのだが、横に立っていた女が大きく身を揺らして驚く。

女「そんな……そんなはずは…」

女「そんなはずはありません!だってあれは…―」


女「――あれは私なんですからっ!!」


男「えっ」

友「………」


154 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/18(金) 02:27:00.47 ID:6eGGRWjP0

 全て許容したように、何かを諦めるように、寂しそうに微笑む友。

友「うん、そうだよ。……アレは貴女であり、私でもある。」

男「まっ、待った待った!!それじゃあ何か?!お前とコイツは、同じだって言いたいのか?!」

女「そんな馬鹿な話が――」
友「うん、そうだよ。」

女「っ…!」

友「言ったでしょう?私はタイムトラベラー。」

友「私がつくった世界には、私と男以外のタイムトラベラーはいらなかったんだ…。」

友「……そのせいで失敗しちゃったんだけどね」

女「…どういう、ことですか…。」


友「……未来ではね、私と男は、どうしてもずっと一緒にはいられなかったの。」


友「…他のタイムトラベラーに離れ離れにさせられちゃったから…―」

友「―…だから私は、誰にも邪魔されない世界を作ったの。タイムパラドックスを起こして。」


友「……一番最初に男に助けられた時、”その思い出を守りたくて”、何もわからないこの時代で男を捜した、――」

友「―その思い出が、私の思い出で作った世界を壊すなんてね……たっははっ…」


155 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/18(金) 02:33:15.40 ID:6eGGRWjP0

女「わ、…私は…悪者ですか…?」

友「ううん。違うよ。」

女「そう…なのですか……?」

友「貴女はあの世界に絶対必要だった。でなきゃ、私も存在できなかったかも知れないし。」

友「―それに、貴女は悪い事なんか何もしてないし、人に怒られるような事も、自分に怒られるような事もしてない。」


友「……ただ、自分を助けてくれた人の思い出を守りたくって、一生懸命だっただけだもん。」


女「………っ……!!」


156 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/18(金) 02:51:39.99 ID:6eGGRWjP0

友「貴女が今泣きたいのも憶えてる。ずっと捜していた人が見つかったんだもんね。」

 友が、いざなう様に腕を広げると、女は、顔を伏せてその腕の中に飛び込んだ。


女「…っ、舐めないでください……あんな変態にっ、かんしゃなんてっ、…」

女「……貴女の憶えている通りだなんて……いくわけっ、ないじゃないですかっ……」


女「………っ…………貴女の、辛さも………少しだけ……わかります…。」



友「…?……っ」



女「私よりもずっと…っ、もっとずっと、数え切れないぐらい……いろんな時っ、間を…彷徨ったんですよね……?」

女「……あの、愚鈍の代わりに……私っ、が、褒めて……差し上げますっ。」

 女は、友の体に腕を回して、赤子をあやすように背中を撫でた。

友「…っ!!!」

 友は、嗚咽をこらえんと口元を抑えながら、女を抱きしめる腕に更に力を込めた。
首元にきつく抱きつかれ、顔を晒してピロティの天井を見上げる形になっている女の顔は、びしょ濡れだった。


女「……きっと、この言葉と、この行動は……貴女が、私の為にっ、とって置いてくれたんですよね……?」


友「っ!!……っ!!……」

 堪え切れずに、涙をもらしながら、友は深く深く何度も頷いた。
震える声で、言葉を紡ぐ。

友「…未来もっ!、私たちっ!!トラベラーにはっ……変えられるんだよ……ってね、?………教えたかっ…た……!!」

友「――…ありがどうっ!!気付いでぐれでっ!!!!」


女「…あだりま゛えでずっ!!」

女「―あ゛なだはぁっ、わだじなんでずがらぁっ!!!」



 
158 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/18(金) 10:35:06.19 ID:6eGGRWjP0
―――――。

 二人が落ち着くのを待ちながら、少しでも環境音が聞こえないか耳を澄ましていた。
まだ訊いていない事について考えても、妄想が膨らむだけで得にはならなそうだったからだ。

 やがて、先に落ち着いた女の方が口を開いた。

女「……ふぅ…申し訳ありません、私が貴女に対して言いたい事を言わずに堪えたイメージが突然浮かびまして、つい、悔しく……」
女「―それに、とても久しく、家族の温かみに包まれたような気がして。」

 女も、あの女の子だったとしたなら、俺のみた夢の通りなら、他の家族はもう…

男「ん?そういえば、女はあの世界でどうやって生活してたんだ?家とかさ。」
女「そうですね…」

女「小学校に通いながら、休み時間の合間に貴方にコンタクトを謀っていました。」

男「?!」

 しょ…小学校……?

友「たははっ、小学校時代からあんまり身長変わってないんだ…」

 友が女の横に並び、珍しくピシッと姿勢良く立つ。
確かに、紙一重程度にしか身長差が見受けられなかった。

女「シークレットシューズもはいていますからね…。」
女「家、ですが。一応養子として入れてもらっていた養親らは居ますが、―」
女「―友達の家に泊まると言い続けて、貴方の身辺調査に時間をかけていましたからね…」

 そ、それはそれは…俺が常々ご迷惑を…

女「あ、しかし、昨日はちゃんと帰りましたよ。」

女「まぁ、あの世界での話ですが。」
男「…どういうこと?」

友「言ったでしょ?この世界で過ごした分の記憶も増えてるって。…不思議と違和感は無いんだけどね。」

 横から、友の返答がくる。
ちょ、交互に喋らないでくれ!アホな俺には混乱の要因だ…。

女「…私の言うとおり、私は貴方の作ったこの世界では毎日ちゃんと養親の家に帰っていましたよ?」
友「―逆に、ボクが外泊の方が多かったかな?…君の家に、とかさ。」

 友が言葉を続ける。
なぜそこで繋いだ?

男「え、なんで片方が家に帰る事が多いと、もう片方は外泊が多いんだ…?」

 素朴な疑問を口にする。
友も女も、呆れたように見合ってから俺に説明をしてくれた。

友「ボクらはこの時代に真っ当な戸籍はないんだよ?偽造の仕方なんてのもよくわかんないし、―」
女「―そうなると、よくわからないものに手を出すより、同じ養親の元でうまく過ごす事を選びますね。」
友「こっちの世界じゃあ、ちょくちょく一緒にご飯を食べてたみたいだけどね。」
女「―お姉ちゃん、とお呼びすべきでしょうか?」

 二人が、はにかんで見合う。

友「―是非。」
女「お断りします。」

 期待し過ぎな友をきっぱり、バッサリ切り捨てた。

友「えぇ~っ?!なんでぇ!!」
女「貴女を未来の私だと認めるには抵抗があります。姉と慕うにも同様です。」
友「ボクの時は「お姉ちゃ~ん!」って擦り寄ったのにぃ……」
女「おや?未来も変えられるのでしょう?」
友「あっ!う、うう、嘘だよっ!それ嘘っ!!だからお姉ちゃんって―」
女「―呼びません。」

 ほくそえみながら、慌てふためく友をあしらう女を見ていると…

男「…どっちが姉なんだか…」

友「そゆこというなよなぁ~妹からの株が下がるだろぉ~」
女「たまに会うルームメイト程度にしか面識も無いので、元々そんなにありませんが…」

 何がどうなってこうなったんだか…


159 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/18(金) 10:55:35.98 ID:6eGGRWjP0

男「ふむ…しかしー…」

 ―戸籍の偽造か……

別の世界の俺の記憶の中に、小さな女の子の戸籍をなんども時間をやり直して少しずつ偽造してゆくヴィジョンがちらつく。
 その行為も、俺には出来るッちゃあ出来るんだろう。
でも二人にどう説明する…?

悩んだ末、この事は後回しにすることにした。

男「さてっ!友!」

友「あいっ?」

男「次の質問だ。」

 一番気なっていた事を訊ねる。多分、これが俺の生まれた理由にもなる気がする。

友「あぁ……うん…。」

 友は、観念したように女から俺に向き直り、両手を前身で組む。
ごまかしきれ無かった事が不満なのか、苦い表情をしていた。


男「あの”ケダモノ”……バケモンの正体はなんなんだ?」


 鋭く尖った爪、粘質の唾液でぬらぬらと照り返すむき出しの牙、骨と皮だけの一見貧弱そうなそうな”ケダモノ”
―だがアイツは、”アイツの形は完全に人間”のそれだった。

友「………」

 訊ねようとも、尚沈黙を深くする友。

男「なら、質問を変えよう。―」

男「――アイツは未来から来たのか…?」

 あの時代のホモサピエンスが、あんな進化を遂げるとは思えない。
―俺の中で、答えは出ていたが、答え合わせは必要だ。


友「……うん。アイツ…ボクの家族を喰ったアイツは、未来からきた人間だよ。」

友「―…いや、人間なのかな…?」

 己の呟きに、悲しそうに顔をゆがませる友。

男「アイツの正体を知ってるのか?」

友「……うん。」

男「それは――」

 友の返答に、突き詰めるように、突き崩すように、俺の中の答えをぶつける。


男「――俺のオリジナルか?」


友「……――」

 ―押し黙る友。
永い、永い永い沈黙の先、もはや答えは期待できないか、と見切りをつけようとしたところで――



友「――…うん。」



 ――友の首が、縦に振られた。



162 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/18(金) 22:32:39.31 ID:6eGGRWjP0

友「…凄いね、二人とも…―」

友「―私の見てきた時間を、いとも簡単に次々塗り替えて行っちゃうんだもん……」

友「私の記憶の中じゃあ、こんなに深く話して無かったよ…」

 必死におどけようと滑稽なマネをする友に、女は独自の見解を述べる。

女「…考えようによっては、それも当然かと思いますが?」

友「…?」

女「この中で、唯一この景色を過ごしたという貴女が居るのに、未だにパラドックスは動き出しません。」

 確かに、この世界は未だに時間が止まったままだ。
この世界の未来まで知っているはずの友が居るのに、だ。

友「…ほんとだ……どうして…?」

 友が首をかしげながら俺を見る。

男「ごめん、俺もよくわかんない……」
友「…そっか。」
女「…ほんとうに不思議な人です。」

 俺だって不思議だ。


163 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/18(金) 22:43:28.54 ID:6eGGRWjP0

男「それで……?」

 それかけた話題を少し軌道修正する。

男「……どうして、オリジナルはあんなケダモノに…?」


友「…言わなきゃだめ…だよね……?」

男「俺と女は聞きたい。」



167 名前:うどんおおかずにご飯はあるある ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/18(金) 23:51:39.51 ID:6eGGRWjP0

友「………えっとね…」

 辛そうな顔のまま、友はゆっくり、ゆっくりとその全てを話してくれた。

友「―…まずね、今まで経験した時間のループの中では、ボクと男は最期まで一緒に居る事が出来なかったの。…」

友「さっきも言ったけど、他のタイムトラベラーと完全に対立しちゃった時とかは、真っ先にボク達は離れ離れにされたんだ…」

友「でも、相手も自分と同じタイムトラベラーなら、こっちだってやりようはいくらでもあるんだよ。それは実は大した問題じゃない、むしろ日常茶飯事だった時もある。」


友「……一番の問題はね、男の存在自体だったんだ…」

男「俺の存在自体が問題…?」

友「うん、…覚えてるかわからないけれど、男は”生まれたときから時間跳躍の能力を持たされてた”んだよ?…」

男「…生まれたときから…」

 持たされていた……?

友「…うん、すっごく…すっごぉぉく遠い先の未来でね、遺伝子レベルから、もっと言えば成長の仕方や劣化の仕方から、男は作られたんだ。」

 よくわからない…

友「……うんとね、たとえば、未来で自分に起きる事が全てわかっていたら、時間をかければその全てに対処しきれるじゃない?」
男「お、おう…」

 数秒後にこけるって知っていれば、細心の注意を払うだろう。

友「最初の男の身体はね、遺伝子レベルで未来を予測できて、―」
友「―それぞれがどのタイミングで劣化するかわかっていたから、プラマイ0になるように、成長したり修復したりするの。」

友「――周りからみれば、一切の成長も老衰もしない、不老不死に見える存在なんだよ。」

男「そ、そんな馬鹿な。俺のオリジナルは、生まれたときからキメラだったのか?!そんなもの、何の為に生み出したんだよ!!」

 下手すれば世界がひっくり返るような存在だ。

友「…人類全員が望んじゃったんだ……男の存在を。」

男「?!」

 俺が…?…人類全員に…っ?

男「そ、そんなはずないだろ!お、俺は…あ、いやオリジナルは、そんな救世主的な存在だったのか?!それがこうなったのかっ?!」

友「うん。―」


友「―人類全員の目的と手段が逆転しちゃったんだ。」


168 名前:うどんおおかずにご飯はあるある ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/19(土) 00:03:16.77 ID:q/G07I5K0

 目的と、手段が…?
それはどういうことだ…?
人類全体に同一の目的があるのか…?

男「…それは、動物的本能の、”生きたい”っていう感覚…とかか…?」

友「ううん、違う。もっとわがままな事を、全員が本気で望んじゃったんだ。」

友「――後悔を失くしたい……過去を変えたい!…って。」

友「”過去を変えたい”って目的があったから、色んな人が血眼になって”時間を越える手段”を模索するでしょう…?」

友「―いつしか全ての人がその事柄にとりつかれちゃって、”時間を越える手段”をもっと明確にする為に、めちゃくちゃに”過去を変えてまわった”んだ。」


友「―そうして、遺伝子レベルまでタイムトラベラーの男が生まれた。」


男「………とんでもだな…」

 突飛過ぎて驚けない。


169 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/19(土) 00:20:43.46 ID:q/G07I5K0

友「実際、男の存在はトンデモだよ。なんてったって、機械とか使わずに、自分の身体さえあれば時間を越えられるんだから。」

男「……う」

 ま、まぁそれはそうだ…。
しばらく突飛な世界に居すぎて、自分の反則性を忘れていた。

友「…タイムトラベル理論やタイムマシンの究極的存在の男は、そこにいるだけで時間をゆがませる。―」
友「―ボクも、しばらく傍に居ただけで能力が身についちゃったしね。たははっ!」

 打って変わって、心底嬉しそうにハニカム友。

…俺には、オリジナルの犯した罪は、許せない。
友を笑わせた嫉妬もあるだろうが、何より、友の人生を狂わせたのはオリジナルだ。

…たとえそうしないと友が死んでしまうとわかっていても……

男「あ、そうだっ!ケダモノ!!」
友「たははっ、忘れてた?」
男「えっ、あ、いや……面目ない…」

 自分の恐ろしい出生の秘密の片鱗を垣間見ただけで、頭の中が一杯になってしまったのだ。
友は、得意げに人差し指を回しながら、続きを話していく。

その顔は、先ほどのように徐々に沈んでいく。

友「…でも、ボクはやっぱり後天的に能力を手にしただけだから、体の成長は人並みなんだ……」

友「―ちっこいけど…(ハァ」

友「―コホン)……まぁ、だから、男とは寿命が違いすぎるんだよ。これが、いつまでも一緒に居られない理由その1。」

 ま、まだあるのか?…あ、いや。ケダモノになる経緯をまだ聞いていないか。

友をみると、眉間に深いしわを刻みながら、唇をかみ締めていた。


友「………その2だけど、…男はね、身体全体が”超未来”から”原始”へと移り変わっていく存在なんだ…」


友「――だから、どう頑張って過ごしても、最期には結局、時間っていう概念すら忘れた野獣に変わっちゃうんだよ。」


170 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/19(土) 00:32:05.87 ID:q/G07I5K0

男「……詳しく訊いてもいいか?」

友「…ん、ちょい待ち。――」

 友は、そこでその話を区切りたがっていたが、無理をいって続きを催促する。

友「――…おっけ。」

 友は眉間をもみながら、続きを聞かせてくれた。

友「…男は遺伝子レベルで、タイムトラベラーだって言ったよね。」

男「…あぁ。」

友「…それはね、それまで蓄積された遺伝子記憶を、連続的なタイムパラドックスで忘れていくっていう事なんだ。」

友「――少しだけ簡単に言うと、子供は親に似るよね?」

友「教育の仕方もあるけど、多くは、親から受け継いだ遺伝子の記憶によって、思考パターンが決まってくるんだ。」

友「…男はね、人間の母親から生まれたのに、遺伝子記憶は猿人として生まれて、歳を重ねる毎に、ネズミ、魚、プランクトンって退化して行くような存在なの。」


友「……酷い人たちだよね…そんな奴を生み出すなんてさ…」

男「………。」

女「……貴女は、あの化け物に同情してしまうほどに知ってしまったのですね……」

女「…私、…理解する時間が欲しいです…。」


171 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/19(土) 00:46:57.27 ID:q/G07I5K0

―――――。

 女の要望により、少し休憩をかねた解散という形をとらせる。

どこかへと去りゆく女の背中に、俺はかける言葉が無かった。

俺はまだ、このパラドックスから世界を始める勇気も無く、動かぬ空、動かぬ太陽、静かな街並みをただただ歩いていた。



 ふと立ち止まり、見慣れぬ道を見回す。

交差点を抜けた先、”化石展”なる看板を見つける。

男「…こんなとこまで歩いてきちまったか……」

 疲労と時間の感覚は曖昧で、この世界でどれくらいの時間を潰しているのかわからなかった。

今一度、”隕石ブース”を眺めてみようと歩き出しながら、視線を自分の腕に落とす。

太くも無く、細くも無い。黒くも無く、白くも無いこの腕が、あの骨と皮だけで赤い肌になるのかと考える。

――パラドックスを抜ける事が、更に怖くなった。


172 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/19(土) 00:55:33.01 ID:q/G07I5K0

男「あ」
友「あ」

 ”化石展”会場内のあの土産屋で、友と出くわした。

友「お、おいっす!」
男「お、おじゃましました!」

 腰を90°曲げて、そのまま身を反転させてダッシュする。
腰ほどの高さの商品棚に激突する。

友「おわっ?!だ、だいじょぶかー!!」
男「お気になさらずーっ!!」

 荷物に埋もれながら、じたばたともがく。
抜け出せなくなっている事に気付いた。

男「………」
友「………」
男「…タスケテ」
友「…アイヨ」

 ひょいっと、手をのばされて、それにつかまる。
意外にすんなりと、荷物の山の中から抜け出せた。


173 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/19(土) 01:05:57.89 ID:q/G07I5K0

男「あぁ、えと、こいつぁどういやしょう…!」
友「落ち着いて…ここは君の世界なんだから…」

 そ、そんなこといったって……
何が原因でパラドックスから抜け出してしまうのかわからないのだ。

友「……やっぱり、怖くなっちゃった…?」
男「…正直…な。」

 こうして取り戻した友と話しているだけでも、冷や汗が止まらない。
いつ、身体が退化してしまうかもわからないのに。

 少し、視線を合わせ辛く、友から眼をそむけた。
―と、がら空きの背中に思いっきり抱きつかれた。
2、3歩前につんのめる。

男「おまえっ!危ないだろっ」
友「危なくないよ…男は危なくない。」
男「いや、今まさに床に―」
友「私の大切な思い出で生んだんだもん。男は危なくないよ。」
男「………。」

 そういうことじゃ、ねぇんだけどな。


174 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/19(土) 01:15:37.01 ID:q/G07I5K0

 商品は自分の手で積み直し、背中にしがみ付く友を引き剥がす事は諦めた。
そのまま、床の矢印に逆らって”隕石ブース”へ向かう。

ブースに一足踏み込むと、古い記憶が頭の奥底から浮かんできた。

 あの、ケダモノの偶像におびえる女を、必死にあやす俺の姿だ。

そうして、友を背中に引きずりながら入った”隕石ブース”には、またも先客がいた。

女「…おや、未来の剥製さんじゃあないですか。」

男「お、おう…」

女「それに、ルームメイトさんまで。」

友「うぃーっす、お姉ちゃんと呼んでいいよ~」

女「お断りします。」

 そういいながら女は、視線を俺たちからあのケダモノの偶像に戻した。


175 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/19(土) 01:41:34.12 ID:q/G07I5K0

男「あぁ…女さん?多少は落ち着かれましたか…?」

 背中の重りに唸りながら、女の様子を伺う。

女「納得はしましたが、貴方たちとの距離を測りあぐねています。」
男「さ、さいですか…」

 若干とげとげしい言葉に、女の中で大きな不安がうねっている様を感じた。

女「……ここは貴方が到達し、築き始めたパラドックスです。」
男「………?」

 突然の確認に、少し戸惑うが――自己確認、または独白のようなものだと思い、何も言わずに耳を傾ける。

女「…私は、なんなのでしょうか…」

女「……ここは貴方が友さんを求めてたどり着いた世界。彼女あるならば必然的に私もそこに在る事になります…」

女「…私はお荷物のように生き返り、命の恩人に家族を食い殺されました…」

女「……私は………なんなのですか…」

女「―私は貴方にっ、何を言えばいいのですか!!」

女「ありがとうっ?!ご迷惑おかけしましたっ?!!余計な事をっ?!家族を返せっ?!?!」

女「――言いたい事がっ、言わなきゃいけない事がっ、いっぱいいっぱいグルグルグルグル……!!」

女「――私は、この世界でっ、誰の何になればいいのですかっ!!」
男「あのさ…。」

女「なんですかっ!!」

 ギロリと、鋭い視線で俺の腹を射抜く女。
臆せず、感じた事をいう。

男「言いたい事があるなら、全部言ってくれ。全部聞くから。」

男「―ただ、”死にたい”とかそういう事は絶対に言わないで欲しい。」

女「…友さんが消えるからですか…?」

男「いや多分この友なら大丈夫だよ。ただ…――」

男「――パラレルワールドの俺が、お前との茶話会を楽しみにしてるんだ。」

女「っ!!」

男「一応、ここから過去に導いてくれた俺たちの恩人だからさ、頼み事は無下にできないでしょう?」

女「………っ…。」


176 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/19(土) 01:47:19.22 ID:q/G07I5K0

女「…貴方は、ほんとに卑怯です……」

男「何とでも言ってくれ、俺がまだ理解できる内にさ。」

女「…殴られ損じゃあないですか…私……。」

男「えっ…あっ、いや!それはホラ!!気が動転してたし!無かった事になったろう?!だ、だからノーカンでっ…」

女「…そうですね。―」



女「―気が動転している時のノーカンなら、お相子ですよね。」


 そういった女は、見たことも無いぐらいのすがすがしい笑顔だった。

次の瞬間に俺が見たのは、視界いっぱい覆いつくす華奢な拳だった。――


177 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/19(土) 02:13:00.70 ID:q/G07I5K0

―――――。

男「―ほれみろ!俺よりカックイイから女ちゃんに殴られるんだ!」

 ”閻魔帳”の一文をみて、俺は興奮していた。
どうやら、向こうの俺は、新しい世界を始めるか否かで未だ悩んでいるらしかった。

男「まぁ、俺の望みを覚えていたのは感謝しよう。」

 これで、次元を超えた女ちゃんとの茶話会へと一歩近づいた。
しかし、まぁ…―

男「―女ちゃん、まさか小学生だったなんて…」

男「…俺様、真性のロリコ…―」

チビ「ガチャッ)おはよー、あにぃちゃー!!」

男「―ォールっ!!ローリコールだからなチビ!今のはローリコールと言ったのだからなっ!!」

 突然、俺の部屋に突入して来たチビ。
思わずめちゃくちゃな取り繕いをしてしまう。

チビ「?ん~、よくわかんないけど、おはよー!」
男「あ、あぁ…おはよ。」

 俺の焦りなど露知らず、チビはモーニングコールを連発してやがる。
というかもうそんな時間か。
適当に返して、チビの頭を撫でる。

男「どしたぁ?今日は学校ねぇだろう。」

 世間様は日曜日だ。
昨日は第2土曜日だったので、脱ゆとり世代に組み込まれたチビは学校だったのだ。
そしてその際の送り迎えは俺がしている。

チビ「おぅ!遊ぼうぜぃっ!!」

 どうやら遊び相手が欲しかっただけらしい。

男「ふむ…なら、たまには外で一緒に遊ぶか!」
チビ「うぉ~!!いつものあにぃちゃーなら外でだけは遊ばせてくれないのにっ!どうしたのかぁっ!!」
男「まぁ、たまにはな。」

 チビの頭に乗せたままの手をワシワシと動かす。
昨日から夜なべして”閻魔帳”を読んでいたのだが、なんとなく、今の自分ならチビと一緒に外で遊ぶくらいは出来る気がした。

男「うぉっし!」
チビ「うぉっし!」

 気合を入れながら、ベッドから腰を上げる。
チビも真似して声を出す。
片手に”閻魔帳”を握り締め、俺はチビを抱え上げて部屋を出た。

男「母ちゃ~~ん!!チビと外で遊んでくるぁ!!」
母「人ん家の子なんだから、ちゃんと見ときなさいよぉ~~!!」

 わかってるっつの。



178 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/19(土) 02:53:34.01 ID:q/G07I5K0

―――――。

トラベラーA「さぁ、この子がどうなっても良いのですか!はやくその本を寄越しなさい。」

 公園へと歩き始めて数分後、道の途中で早速”閻魔帳”をつけ狙う悪徳時間渡航者共に囲まれた。
すでにチビは相手に捕まってしまっている。

やべぇ、浮かれてかなり油断してた。

トラベラーB「言っておきますが、少しでもその本を捲れば、こちらのおちびちゃんは我々がいただいてゆきますよ?」

 その言葉で、”閻魔帳”に伸ばしたもう片方の手をとめる。
捕まっているチビは気を失っているのが幸いか、俺は、先刻思いついた能力を試してみる。

男「…わかりました……降伏しますので、そのこを返してくださいっ!!」
トラベラーC「まずはそちらの本が先ですよ?お兄さん。」

男「くっ…わかりました……」

 苦い表情で、”閻魔帳”を妖しげな覆面をした女性に渡す。

トラベラーC「ふむ……どうやら本物のようですね。」

男「そ、そうですか?……で、でしたらはやく!はやくそのこをこちらにっ!!」

 俺のわざとらしいお決まりのセリフに、妖しい覆面をした女性は覆面越しにもわかるほどに口端を吊り上げた。

トラベラーC「誰もお返しするとは言っておりませんが?」
男「だと思ったよ。」

 そう漏らし、”閻魔帳”を持った女性に向かって手をかざす。

すると、途端にその女性は蒼い光となって散った。

男「へぇ…ほんとにこういう使い方ができたのか…」

トラベラーA「お、お前ッ!!今一体何を…」
トラベラーB「気にするな!さっさと飛ぶぞっ!!」
トラベラーA「あっ、は、はいっ!!」

 そういって、残り二人は辺りから消えた。
流石に焦るが、落ち着いて、二人の居た場所にかけよって、蒼い光を身に纏う。

男「記録や文献を媒介に飛ぶんなら、―」

男「――常に形を変え続けている空気を媒介に飛び続ければいいんだ!」

 叫び、視界一杯を覆った蒼い光を手で弾く。

目の前には、チビを担いだ妖しい覆面の男の後姿がマヌケに突っ立っており、
その向こうでは、妖しい女性が今まさに俺が過去に飛ばしたばかりであった。

トラベラーA「き、消えた?!」
トラベラーB「!!後ろだっ!」
トラベラーA「えっ――」

 妖しい男の不思議がる声が、最後まで響く事は無かった。
なぜなら、俺が今、過去に飛ばしたからだ。

男「さて、あとは貴方だけですが。――」


179 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/19(土) 02:54:12.25 ID:q/G07I5K0


男「――どうなさいますか?」

トラベラーB「ばっ、化け物めっ!!」

 そう言い残して消えようとするが、同じ要領で背後に回る。

ソイツの首根っこを掴んで。
”閻魔帳”も拾い上げる。

男「そんなにつれないこと仰らずに……貴方も同じ穴の狢じゃないですか。」

 そいつの妖しい面を剥いで、顔を晒す。

男「!おやまぁ…」
トラベラーB「くっ……」

 可愛らしい小さな男の子が中に居た。

トラベラーB「殺せッ!」
男「あらあら、言葉遣いまでかわいらしい。」

 言動から察するに、コイツがリーダー格のようだ。
片手で、”閻魔帳”を開く。
記されていくのは、この間俺が務所にぶち込んでやった豚食いペド野郎の事。

いつぞやの世界では、幼児を惨殺して夕方のニュースで俺を大層慌てさせてくれた野郎だ。

男「殺しはしませんが、――」

 最新の記事を手でなぞる。

男「――一生立ち直れなくして差し上げますよ。」

 小さな男の子を、衣服だけここに残して、豚喰い野郎の牢獄の中へ飛ばした。


180 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/19(土) 02:59:14.98 ID:q/G07I5K0

男「チビにちょっかいかけっからだ、バーカ。」

 ポフンっと音を立てて”閻魔帳”を閉じる。
路上で気を失っているチビに駆け寄り、ゆっくり抱き上げる。

男「流石に、調子に乗りすぎたか……」

 能力の応用の利く幅を試してみたかったのだが、その為に守る対象であるチビを巻き込んでは意味が無い。

男「…次は、チビに危害が加わる前に片をつけるか……」

 次なんて無きゃいいけど。



 
183 名前:『ハリーポッター』はやっぱり面白い ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/19(土) 19:58:04.04 ID:q/G07I5K0

―――――。

 公園のベンチに腰掛け、その横にチビを寝かせる。
いくら元野生児といえども、子供を椅子に座らせながら寝かせるのは体に悪い。
チビの背中をそのまま席に寝かせ、頭を俺の腿にのせる。

男「………」
チビ「すぅ……すぅ…」
男「……ははっ、(クシャ」

 意味も無く笑い、チビの頭を雑に撫でる。

チビ「……んぅ…すぅ…」

 なんとも、力の抜ける寝顔だ。

持て余した手を背もたれに回し、チビを撫でる手は”閻魔帳”にまわした。
空いた腿に”閻魔帳”を開いてのせ、パラドックスで屯している3人の様子を窺う。

男「…進展はあったのかねぇ……」

 無いと困る。

正直、読み物のつもりで途中までは読んでいた。
けれど、俺の発端―――俺自身も、あの3人の話の中に出てきた、”超未来の男の派生”なのだ。
元居た時代の記憶など無いに等しい。

…俺の発端が、そんな未来を歩んだなんて聞いたら、ただ見ている訳にもいかないだろう…。

男「………」

 チビを見る。

チビ「……すぅ…すぅ…」

 いつか家族を殺すかもしれない奴に膝枕されて、それでも安らかな顔である。

男「…なぁ、俺がお前を連れてきたのも、運命だったのかな……」

 教えてくれるなら、教えてくれ…

お前が幸せになれる道を、教えてくれ。

”閻魔帳”に視線を落とすも、一切の進展が無かった。




184 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/19(土) 20:28:47.11 ID:q/G07I5K0

チビ「………ん……?」

 もたついた手つきで、目を擦るチビ。
起こしちまったか?

チビ「……あれ…?あにぃちゃ……?」
男「おう、おはよ。」

 眠そうに「うぅ…おはよ~…」とぼんやり返すチビ。
もそもそと起き上がり、腰掛と敷板の間にある広い隙間に足を入れて俺に向き直る。
そして俺の顔もろくすっぽ見ずに抱きついてきた。

男「おいおい…俺じゃなかったらどうすんだ…」
チビ「匂いでわかるもん……」

 背中に回した手がきつくしまる。

男「ぐぇっ」

 匂いでわかるなら、初めて会った時も警戒すべきだろうに…

胸元にある頭をぽふぽふ叩く。

男「チビよぉ・・・」
チビ「ん~?」

 もぞもぞと首を動かし俺を見上げる。

男「もし、俺がお前の大事なものを盗ったら、どうする…?」
チビ「ん~…そんなことは無いよ。」
男「おま…」

 ろくに考えもせずに…

チビ「だってね、あにぃちゃはいつもアタシを助けてくれるでしょ?」
チビ「――だからね、大丈夫!」
男「………」

男「…そっか。」

 チビの頭をくしゃくしゃにするまで撫でる。

お前は何で、俺がいつも助けてるって知ってんだ。

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