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忘却少女「初めまして。あなたは誰?」


忘却少女「初めまして。あなたは誰?」


忘却少女「初めまして。あなたは誰?」



1 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/04(日) 23:44:47.37 ID:yBncWr4n0

医師「さあ、挨拶をして」

少年「こんにちは」

少女「こんにちは」

医師「少女ちゃん、退屈の代わりに、この子は君と遊んでくれるよ」

少女「それって、友達?」

医師「そういうことだ。仲良くしてあげてくれ」




元スレ
忘却少女「初めまして。あなたは誰?」




2 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/04(日) 23:46:48.00 ID:yBncWr4n0
少女「初めまして。あなたは誰?」

少年「少年だよ」

少女「この施設に入ったの?」

少年「うん」

少女「そうなんだ」

少年「………」

少女「……」

少女「ねぇ、なにか話してよ」

少年「うーん、君はいつも何をして遊んでるの?」

少女「たぶん、毎日絵を描いてるの」



5 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/04(日) 23:48:48.92 ID:yBncWr4n0
少年「たぶん?」

少女「私って、記憶が長く持たない病気なの」

少年「そのことは覚えているんだね」

少女「息のしかたまで忘れたら生きていられないでしょう」

少年「ああ、そっか」

少女「自分に関する最低限の事しか、覚えていられないの」

少女「昨日描いた絵も、そこに飾ってあるのだけど。私には描いた記憶がない」

少女「まるで他人の描いた絵みたいよ」

少年「それは不思議な感覚だろうね」

少女「まるで全てが借り物みたいに感じられるわ」

少女「このベッドも、シーツも、壁にかけた麦わら帽子も、ワンピースも」




6 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/04(日) 23:50:52.38 ID:yBncWr4n0
少年「ベッドとシーツは施設からの借り物でしょ」

少女「あなた、細かいのね。まあつまりそういうことなの」

少年「不便だね」

少女「誰かからリセットボタンを取り返さない限り、私はこの施設から出られない」

少年「そんなことないよ。外出許可を取ればいいだけさ」

少女「嘘」

少年「嘘じゃない。ちょっと掛けあってくる」



7 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/04(日) 23:52:54.32 ID:yBncWr4n0
医師「外出許可?」

少年「窓から海が見えて、ちょっと出かけたくなりました」

少年「僕の住んでいた街には、海がなかったから」

医師「了解。必要な許可証は適当に処理しとくよ」

少年「ありがとうございます」

医師「あの子も連れてくんだよね?」

少年「あ、はい」

医師「オーケー、行っといで。彼女のこと、君に任せた」

少年「行ってきます」


少女「ほんとに外に出ていいの?」

少年「医師のおじさんが言ったから、いいんだよ。ほら、着替えて」

少女「このワンピース、久しぶりに着るわ」

少年「そうなんだ」

少女「……」



8 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/04(日) 23:55:04.85 ID:yBncWr4n0
少年「ん? どうしたの」

少女「これから着替えるんだけど」

少年「ああ、ごめん。後ろ向いてるよ」

少女「出て!」

バタン

少年「ひどいなぁ」


少女「お待たせ」

少年「似合ってるよ。麦わら帽もいい感じ」

少女「あなた、けっこう女の子の扱いに慣れてるのね」

少年「それじゃ行こうか」



9 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/04(日) 23:57:16.65 ID:yBncWr4n0
少年「潮風って、なんだかベタベタする」

少女「海は初めて?」

少年「うん。少し感動してる」

少女「よかったわね」

少年「もっと波打ち際に行こう」

少年「海って臭いね」

少女「臭いというか、そういうにおいなのよ」

少年「この海から人類は生まれたんだ」

少女「とても臭いところからね」

少年「……今のそれ、ジョーク?」

少女「でも海にはいいところもあるの」

少年「なに?」

少女「いつも海は海だから、安心できる」



10 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/04(日) 23:59:22.88 ID:yBncWr4n0
少年「それは君だからこそ感じる不安について言っているの?」

少女「よく分かるわね」

少年「分かったような口を利けば、他人は勘違いしてくれる。『こいつは分かってる』ってね」

少女「ふぅん」


少年「そろそろ戻ろうか」

少女「海はもういいの?」

少年「明日から嫌でも飽きても見られるよ。施設に幽閉されている間は」

少女「そうね。ねぇ、聞いてもいいかしら」

少年「聞かれても嫌なことじゃなければ、いいよ」

少女「それが分からないから、聞いてるの」

少年「ならそれが答えだよ」



11 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 00:01:41.15 ID:RBG/9kXa0
少女「つまり聞かれたくないのね」

少年「いちいち了解を求められるようなこと、僕は好きじゃない」

少女「ごめんなさい」

少年「分からないことで謝られるのも、好きじゃないな」

少女「あなたって、嫌な人ね」

少年「僕は君のこと、素敵だって思う」

少女「戻りましょうか」

少年「うん」


12 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 00:03:53.58 ID:RBG/9kXa0
少女「シャワーを浴びたい」

少年「じゃあ僕は、僕の部屋に戻る」

少女「本当にありがとう。今日は楽しかった」

少年「うん、僕も楽しかった」

少女「明日も遊んでくれる?」

少年「明日は何がしたいか教えて」

少女「ええと、………思いつかないわ」

少年「そう。じゃあ今日みたいにまた海を見に行こう」

少女「分かった。また明日ね」

少年「うん。また明日」



13 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 00:06:08.94 ID:RBG/9kXa0
医師「おかえり」

少年「ただいま。外出許可ありがとうございました」

医師「気にするようなことじゃない。この小さなサナトリウムにいる医師は私だけだからね」

少年「少ないんですね」

医師「この施設の患者はみんな普通の人々なんだ。ただ他人より少し弱かったり、優しかったりするだけで」

医師「そういう人々には猶予が必要なんだ」

少年「猶予?」

医師「世界と自分を馴染ませるための、安らげる時間のことだ」

医師「私が手を焼く必要もなく、ここでは優しい時間が流れている。医師は一人で十分というわけさ」

少年「つまり、止まり木みたいなものですね」

医師「止まり木? ……ああ、そうだ。その通りだよ。すごくいい表現だね。なにより優しい表現だ」

少年「………」

医師「夕食も個室に配膳する。部屋にいてくれよ」

少年「わかりました。それじゃあ」

医師「ああ」


14 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 00:08:19.74 ID:RBG/9kXa0
医師「おはよう」

少年「んん……おはようございます」

医師「この施設の朝は七時だ。今日は私が起こしたが、早く慣れて一人で起きてくれ」

少年「あの子はもう、起きていますか?」

医師「とっくにね。君も負けてはいられない」

少年「勝負なんてしたくありません。どんな時も」

医師「社会では、そのことで君に向上心がないと見なされる。それでもいいのかい?」

少年「それは、その」

医師「まあ考えてみなさい。そのための時間はたっぷり用意されているから」



15 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 00:10:32.54 ID:RBG/9kXa0
少年「あの子に話してみます。あの子は僕より、頭がいいから」

医師「ああ、そういえばあの子のことだが……。君は失望してしまうかもね」

少年「なぜですか」

医師「あの子に会えばわかるさ。早く朝ごはんを食べて」

少年「はい」


医師「さあ、挨拶をして」

少年「こんにちは」

少女「こんにちは」

医師「少女ちゃん、退屈の代わりに、この子は君と遊んでくれるよ」

少女「それって、友達?」

医師「そういうことだ。仲良くしてあげてくれ」



16 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 00:12:55.97 ID:RBG/9kXa0
少年「あの、これはやっぱり」

医師「彼女と話してみなさい」

少年「改めて、こんにちは」

少女「初めまして。あなたは誰?」

少年「え?」

少女「ああ、ごめんなさい。もしかして会ったことがあったのかしら?」

少年「ええと、そうだね。『君とは会ったことがない』というと嘘になる」

少女「それは今こうして会っているからという意味ではないの?」

少年「もちろん違う。君と僕は昨日遊んだんだ」

少女「ごめんなさい。覚えてないの」

少年「仕方ないね。君については、昨日君から聞いているよ」

少女「そう」



17 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 00:15:11.53 ID:RBG/9kXa0
少年「しかし残念だな。昨日キスしたことも忘れてしまったんだよね?」

少女「キス? 私とあなたが?」

少年「そう。海辺に遊びに行って、打ち寄せる波を見ていたら、君が言い出したんだ」

少年「『私、今日のことを思い出にしたいから、キスして』って」

少女「それは嘘ね」

少年「どうして分かったの?」

少女「私の台詞にしては陳腐すぎるもの」

少年「僕の一番ぐっとくる台詞だったのにな」

少女「あなたって、嫌な人ね」

少年「それ、昨日も言われた」




21 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 00:17:21.07 ID:RBG/9kXa0
医師「要するに、この子はそういう性質なんだ」

医師「後天的なものだけど、こうなったことは彼女の責任ではない」

医師「だから、肌が黒いとか目が碧いとか、それと同じ次元で彼女は記憶力に乏しい」

医師「君と彼女を会わせたのは、君たちがよく似ていたからだ」

医師「君たちはいい友だち同士になるよ」

少年「僕が友達だと思っていても、この子にとって僕は初対面の相手です」

少女「でも私は、少しあなたとお話ししたいと思ってる」

医師「それは何より。それじゃあ私は仕事に戻るよ」



23 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 00:19:22.43 ID:RBG/9kXa0
少年「……」

少女「あの、ごめんなさい」

少年「いわれのないことで謝られるのは、好きじゃないよ」

少女「私の記憶がないことであなたを傷つけたと思ったから」

少年「たった一日進めたゲームのセーブデータが消えたようなものさ」

少年「またやり直すのは簡単だ」

少女「私を古い機械みたいに言わないで」

少年「ごめんよ、そんなつもりじゃなかった」



24 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 00:21:33.76 ID:RBG/9kXa0
少女「あなたと私は、昨日どんなふうに過ごしたの?」

少年「ああ、そうだ。君と昨日約束したんだっけ」

少女「なにを?」

少年「君を明日も海へ連れて行くって」

少女「海? 外へ出ていいの?」

少年「外出許可さえとればね。ちょっと行ってくる」


少女「近くで見ると、海ってとても素敵」

少年「そうだね」

少女「海鳥って、海原の真ん中で疲れて飛べなくなったらどうするのかしら」

少年「どこかに腰を降ろして、深い溜息をつくんじゃないかな」

少女「……そうかもね」



26 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 00:24:00.84 ID:RBG/9kXa0
少年「貝殻だ」

少女「拾って部屋に飾ろうかしら」

少年「それがいいよ。あの部屋は少し殺風景だから」

少女「あら、あなたも飾るの?」

少年「ちょっと思いついたことがあって。そのために拾っておくんだ」

少女「ふぅん」

少女「ねぇ、聞いてもいいかしら」

少年「だめ」

少女「どうして? 何を聞くのかも言っていないのに」

少年「君が了解を取らないと聞けないようなことは、僕が聞かれたくないことだから」

少女「そうかもね」



27 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 00:26:36.64 ID:RBG/9kXa0
少年「昼食を食べに戻ろうか」

少女「もう?」

少年「まだここにいたい?」

少女「いえ。戻りましょう」


医師「サンドイッチだよ。なぜ今日の昼食はサンドイッチなのか?」

医師「それは冷蔵庫に新鮮な野菜や芳醇なチーズ、そして薫り高いハムが揃っていたからだ」

医師「いただきます」

少年「医師さんの好きな食べ物はなんですか?」

医師「うーん、あれだね。ホヴィロン。知ってるかい」

少年「いえ。なんですかそれ」

医師「世の中には知らなくてもよいこと、そして、知らないほうがよいこともあるね」

少年「はい」

医師「つまりそういうことだ」



28 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 00:29:14.58 ID:RBG/9kXa0
少女「ごちそうさまでした」

少年「午後はなにするの?」

少女「また、海を見に行かない?」

少年「僕は飽きたな」

少女「じゃあ、絵を描きましょう」

少年「そうだね」


少年「けっこう画材がある」

少女「唯一の退屈しのぎだから」

少年「漫画とか読まないの?」

少女「少し低俗に感じてしまって、白けるの」

少年「じゃあ読むとしたら小説?」

少女「少し高等すぎて、眠くなってしまうの」

少年「じゃあ君は何を読むんだい」



29 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 00:31:15.87 ID:RBG/9kXa0
少女「新聞。なるべく事実だけを書いてあるものを選んで読むの」

少女「新聞は本当に純粋な読み物なのよ」

少女「漫画のように現実からかけ離れた表現や、文学のように衒学的な語彙が出てこない」

少女「起きたことばかり、ただ書かれている。そういうのが一番好き」

少年「僕には分からないけど、つまり新聞を読むのが楽しいんだね」

少女「そう、その『つまり』。新聞が好きだという事実。それだけなの」

少年「今日は新聞について語るだけでも時間が潰せそうだ」

少女「そう? 続けてもいいかしら、新聞の話」

少年「いいよ。君の気が済むまで」



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2011/09/05(月) 00:31:45.44 ID:uSK5cmIc0
VIPのSSっぽくないけどなんかいいな


31 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 00:33:26.64 ID:RBG/9kXa0
少女「そうね、じゃあお悔やみの欄って知っている?」

少年「近く亡くなった人の名前が載るところだね」

少女「あそこにはいろいろな人の名前が載るの」

少女「年齢、性別、亡くなった原因も簡単に書かれてる」

少女「それを見るとね、人が死んだという事実ってすごくシンプルなんだって思うの」

少女「例えば、50代の男性が病死したと書かれていると、色々な想像ができるでしょう」

少女「まだ亡くなるには早い年齢だから、なにか健康を害す要因が生活にあったはずで」

少女「それはもしかしたら、仕事や家庭で上手くいっていなかったことによるストレスかもしれなくて」

少女「体調不良を感じながらも、その男性は懸命に働いていたかもしれなくて」

少女「でもそんなことは新聞に載らない。載せるべき事実はひとつ、50代の男性が病死したという、それだけのことよ」

少女「新聞の内容の、そういう切り捨て方って、私はすごく好きなの」



32 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 00:36:15.43 ID:RBG/9kXa0
少年「君は他人なんてどうでもいいって思ってるの?」

少女「そうではないの。ただ、大切なのは事実の捉え方だと思う」

少年「君が毎日色々なことを忘れてしまっているとしても?」

少女「私が忘れても、事実は歪まない」

少年「その通りだ」

少女「あとね、新聞の日付の話。新聞は事実しか載せないの。それが例え日付でも……」



33 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 00:38:34.68 ID:RBG/9kXa0
少女「少し喋り疲れてしまったわ」

少年「君はよく喋るね。印象が変わった」

少女「私、眠りたい」

少年「じゃあ今日はこれでさようならだ」

少女「……明日の私は、きっとまたあなたを忘れるけど、よろしくね」

少年「大丈夫。また明日」

少女「また明日」




35 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 00:40:37.15 ID:RBG/9kXa0
少女「初めまして。あなたは誰?」

少年「こんにちは。僕は君の友達だよ」

少女「そうなの? 悪いけど、今日はあまり喋れないの」

少年「のどが痛いんだろう?」

少女「どうしてわかるの?」

少年「君は昨日、僕を相手に新聞の話を五時間続けたんだ」

少女「あら、ごめんなさい。退屈じゃなかった?」

少年「とても興味深かったよ」

少女「なにをしにきたの?」

少年「君に会いに」

少女「そう。私、絵を描こうと思っていたのだけど、あなたも描く?」

少年「よろこんで」



36 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 00:42:52.68 ID:RBG/9kXa0
少女「あなた、すごい絵を描くのね」

少年「そうかな? 我ながらいい出来だと思うけど」

少女「いつか抽象画家として大成するかも」

少年「君、実は褒めてないだろ」

少女「鋭いわね」

少年「からかわれることには昔から敏感なんだ」


少年「君はなかなか上手だね」

少女「そうかしら」

少年「だって、なにを描いてるかわかるもの」

少女「嫌味のつもりで嫌味になってないわ、それ」



37 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 00:47:31.96 ID:RBG/9kXa0
少女「ありがとう、今日は楽しかった」

少年「僕もだよ」

少女「明日も会いに来てくれる?」

少年「もちろん」

少女「じゃあ。また明日」

少年「また明日」



38 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 00:49:52.92 ID:RBG/9kXa0
少女「初めまして。あなたは誰?」

少年「こんにちは。僕は君の友達だよ」

少女「そうなの? 悪いけど、ちょっと一人で考えたいことがあるの」

少年「窓際に飾ってある、お世辞にも上手いと言えない絵のことだろう?」

少女「そう。この部屋には私が描いた絵しか置いていないはずなの」

少女「私はたくさんの絵を描いてきたけど、あそこまで無茶苦茶な絵を描いたのは初めて」

少女「自分の内面が、変わってしまったのかしら」

少年「あの絵を見てどう思った?」

少女「どうもこうも、あの絵ってこちらを不安にさせる色使いで、とっても不気味じゃない」

少女「気味が悪くて仕方ないわ」





 
40 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 00:53:08.39 ID:RBG/9kXa0
少年「そこまで言われると、傷つくなぁ」

少女「え?」

少年「あれは昨日僕がこの部屋に遊びに来て、描いたものなんだよ」

少女「あ、………え?」

少年「……」

少女「その、凡人には理解出来ない素晴らしさなのよ。あなた、いつか抽象画家として大成するかもね?」

少年「……ま、いいよ。気にしないことにする」

少女「ありがとう」



41 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 00:55:25.52 ID:RBG/9kXa0
少年「あそこに飾ってある貝殻も、実は僕達で拾ったものなんだよ」

少女「そうだったのね。私とあなた、けっこう長い付き合いなの?」

少年「いや、そうでもない。けどね、この数日でかなり仲良くなれたんだよ」

少女「それなら、今日も仲良く出来るかしら」

少年「どうかな。他人の絵をこれでもかとけなす女の子と、僕は仲良くできるかな? 君、どう思う?」

少女「あなたって、嫌な人ね」

少年「よく言われるよ」



42 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 00:57:54.12 ID:RBG/9kXa0
少女「ありがとう、今日は楽しかった」

少年「今日も、って言ってくれると嬉しいけどね」

少女「たぶん、今日も」

少年「ああ、そうだ。君にこれをあげる」

少女「これ、ネックレス?」

少年「そう。いつか貝殻を拾ったときに思いついて、作ったんだ」

少女「……ありがと。すごく、嬉しい」

少年「泣くほど?」

少女「嬉しいの」

少年「僕も君が喜んでくれて嬉しい」

少女「明日も会いに来てくれる?」

少年「うん、必ず」

少女「じゃあ、また明日」

少年「また明日」


44 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 01:00:41.95 ID:RBG/9kXa0
少女「初めまして。あなたは誰?」

少年「こんにちは。僕は君の友達だよ」

少女「そうなの?」

少年「今日はネックレスをつけてないんだね」

少女「貝殻のネックレスのこと?」

少年「うん」

少女「朝起きたら首に巻かれていてびっくりしたの」

少女「知らないうちに誰かに巻かれたような気がして、気持ちが悪かったから、窓から捨ててしまったわ」

少年「そっか。それは災難だったね」

少女「ねぇ、私たちはいつもなにをして遊んでいるの?」

少年「海を眺めたり、絵を描いたり、新聞について語ったり、色々だよ」

少女「ふぅん」

少年「今日はなにがしたい?」



46 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 01:03:14.19 ID:RBG/9kXa0
少女「今日は楽しかったわ」

少年「それは何よりだよ」

少女「明日もまた会いに来てくれる?」

少年「うん、必ず」

少女「じゃあ。また明日」

少年「また明日」




48 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 01:05:54.32 ID:RBG/9kXa0







少女「初めまして。あなたは誰?」
少年「君の友達さ」






49 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 01:08:18.14 ID:RBG/9kXa0





少女「初めまして。あなたは誰?」
少年「君の兄だよ」


少女「初めまして。あなたは誰?」
少年「こんにちは、医師の息子です」

医師「私に子供はいない」




51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]投稿日:2011/09/05(月) 01:10:32.97 ID:8rJTaTj40
博士の愛した数式を思い出した。


52 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 01:10:53.58 ID:RBG/9kXa0





少女「初めまして。あなたは誰?」
少年「君こそ誰だい?」


少女「初めまして。あなたは誰?」
少年「ヤン・シュヴァンクマイエル。あるいは、ビル・エヴァンス」



少女「初めまして。あなたは誰?」
少年「君を世界で一番大切に思っている男だよ」




 
54 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 01:13:38.04 ID:RBG/9kXa0
少女「初めまして。あなたは誰?」
少女「初めまして。あなたは誰?」
少女「初めまして。あなたは誰?」
少女「初めまして。あなたは誰?」
少女「初めまして。あなたは誰?」
少女「初めまして。あなたは誰?」
少女「初めまして。あなたは誰?」
少女「初めまして。あなたは誰?」
少女「初めまして。あなたは誰?」
少女「初めまして。あなたは誰?」
少女「初めまして。あなたは誰?」
少女「初めまして。あなたは誰?」

―――――――――
―――――
―――

少女「初めまして。あなたは誰?」
少年「…………」


56 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 01:18:48.95 ID:RBG/9kXa0

医師「彼女の相手は疲れるかい?」

少年「医師さんはどう思いますか?」

医師「疲れるね。自分の中のなにかが擦り切れてしまう」

医師「彼女は意図せずに、他人のなにかを削ってしまうんだ」

医師「それだけは本当に、どうしようもないことさ」

少年「辛い役目を僕に与えたのは、どうしてですか?」

医師「君たちはいい友だちになれると思ったんだ」

少年「僕は彼女のこと、好きですよ」

少年「だけど向こうは僕のことを覚えちゃくれない」

医師「彼女の中で、まだ君はその程度の存在なんだよ」

少年「ならどうして……」



57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]投稿日:2011/09/05(月) 01:20:32.20 ID:8rJTaTj40
覚えてもらいたいと思ったら、自然とそういう行動してるよね。
日記書いたり、何かに刻んだり。




59 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 01:21:45.99 ID:RBG/9kXa0
医師「………この数カ月、なんの変化もなかったと思うかい?」

少年「え?」

医師「彼女は前より海が好きになったみたいだ」

医師「そして好んでワンピースを着るようになった」

医師「貝殻や不気味な絵を眺めている時間が増えた」

少年「……気づきませんでした」

医師「ずっと前から彼女のことを見てきた私だから、わかる」

医師「なにかがいい方向に転がり始めているし、その兆しは至るところに顕在化し始めた」

医師「まだまだかもしれない。けれど、あと少しかもしれない」

医師「だからもう少し、彼女を見守ってやってくれ。そばに居てやってくれ」

62 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 01:24:20.35 ID:RBG/9kXa0
少年「それは本来、彼女の家族の役目でしょう」

医師「彼女は、家族に虐げられたんだよ。その辛い記憶を彼女は拒絶した」

医師「彼女の病理の根本は、家族から愛されなかったことにある」

医師「……少し、喋りすぎてしまった。君を信頼してのことだと思ってくれ」

少年「勝手ですね」

医師「大人は身勝手でずる賢い。覚えておくと、役に立つかもね」

少年「その言葉、彼女の前でも言えますか?」

医師「……君に期待してるのは本当だよ。それじゃ、私は仕事に戻る」



64 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 01:27:46.16 ID:RBG/9kXa0
少年「僕になにが出来ると思う?」

少女「さあ、分からないわ」

少年「僕にも分からないんだ」

少女「とりあえずなにかをするべきよ。失敗しても成功しても、それはあなたのためになるんだから」

少年「そういうものかな」

少女「私と違って、あなたはきっと失敗から学べる」

少年「うん。そうだ、僕は僕のしたいようにする。それが一番いい」

少女「それで、あなたのしたいことって、私とこうしてお話することなの?」

少年「駄目かい?」

少女「いいえ。あなたの友人でいられて、なんだか嬉しい」

少年「それはよかった」


66 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 01:30:38.50 ID:RBG/9kXa0
医師「おはよう」

少年「おはようございます」

医師「君はもうすっかり早起きになったね」

少年「囚人みたいに健康的な生活です」

医師「ここへ来たばかりの君は、精神的にも肉体的にも少し病んでいた」

医師「けれど今じゃ、そのころの君は見る影もない」

少年「僕は全然変わってないつもりですよ」

医師「些細な変化ほど、他人が気づくものなのさ」

医師「そう言えば、君に聞いたことがあるね。『競争を宿命付けられた社会をどう生きるのか?』って」

少年「そんな小難しいこと聞かれた覚えはないですけど」

医師「今の君なら、どう答える?」



69 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 01:32:44.55 ID:RBG/9kXa0
少年「ええと……とりあえず僕がしたいようにすると思います」

医師「そうだ。それが正解だと私は思うj」

医師「競争したくないなら避ければいいし、別の生き方を模索すればいい」

医師「最近の人間は、主体的に人生を選択したがらないんだ」

医師「流される方が楽だからね」

医師「それで最後の最後、世間の掃き溜めまで流されてから、不平を言い始める」

医師「『俺はこんな人生を望んでいたわけじゃない』と。選ばなかったのは自分なのにも関わらずだ」

医師「つまり、なにも望まなければなにも得られない。生きるとはそういうことだ」



70 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 01:34:49.46 ID:RBG/9kXa0
少年「医師さんは、どうして医者になったんですか?」

医師「私は………罪滅ぼしだ。決して主体的な選択で医者になったわけではない」

医師「生きていれば、そういうこともあるから難しいんだよ」

少年「そんなものですか」

医師「ああ、朝から説教じみた話をしてすまなかった」

医師「私は少し用事があってこれから隣町に出かける」

医師「大人しくしていてくれよ」

少年「分かりました。いってらっしゃい」

医師「いってきます」




72 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 01:37:15.50 ID:RBG/9kXa0
少女「初めまして。あなたは誰?」

少年「泥棒だよ」

少女「あら、なにか盗みに来たの?」

少年「違う、盗みに来たんじゃなくて、盗んだものを返しに来たんだ」

少女「あなたはなにを盗んだの?」

少年「君の昨日の記憶さ」

少女「それじゃあ、返してもらおうかしら」

少年「そうだね。じゃあまず、そこに飾ってある向日葵の話からだ」

少年「それは昨日、僕と遊んでいた君が突然『部屋に花を飾りたい』と言い出して…………」


74 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 01:39:22.00 ID:RBG/9kXa0



少女「あなたが盗んだ記憶は、それで全部かしら?」

少年「僕の覚えている限りね」

少女「そう。記憶を返してくれてありがとう」

少年「盗んだ僕が悪かった。許してよ」

少女「ところで泥棒さん、私たちっていい友だちになれると思わない?」

少年「僕もそう思ってた」

少女「ふふ………いたっ」

少年「どうしたの?」



78 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. []投稿日:2011/09/05(月) 01:41:24.77 ID:RBG/9kXa0
少女「急に、頭が………いたい……」

少年「大丈夫? って、熱があるよ君!」

少女「嘘。さっきまで、普通だったのに」

少年「とりあえず、横になって。布団をかぶって」

少女「嫌よ、私」

少年「どうして? 安静にしていないと」

少女「今日もあなたと、たくさん遊びたいって思うのに」

少年「明日でもいいじゃないか」

少女「今日が、今がいいのよ……」


80 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2011/09/05(月) 01:43:35.61 ID:RBG/9kXa0


       少年「無理はいつでも言えるけど、今は言うべき時じゃない」

       少女「あなたのそういう言い回し、私すごく好きだった気がする」

       少年「君が好きなのは簡潔な事実だろう」

       少女「そうね、そうだけど……」

       少女「………すう、すう」

       少年「こんなときに、医師さんはいないし……」

       少年「少し面倒を見なくちゃ」


       医師「少女ちゃん、具合は?」

       少年「熱が高くて、本人は頭痛がすると言っていました」

       医師「留守にして本当にすまなかった」

       少年「この施設の責任者って、医師さんですよね」

       医師「後でいくらでも責めてくれ。今はこの子の世話が第一だ」

       少年「氷嚢の中身を替えてきます」


81 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. [] 投稿日:2011/09/05(月) 01:45:38.26 ID:RBG/9kXa0 
       少年「風邪でしょうか」

       医師「いや、たぶん違う。この熱はウイルスによるものじゃない」

       医師「彼女の脳のオーバーワークのせいだと考えていい」

       少年「知恵熱っていうやつですか?」

       医師「本来の知恵熱は乳児期の発熱のことだ……。しかし君の言うことは間違ってない」

       医師「今の彼女は頭の使いすぎで、発熱している」

       少年「この子はなにか、考えようとしているんですか」

       医師「そう。そしてそれはおそらく………」

       少年「……なんですか?」


82 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2011/09/05(月) 01:47:44.93 ID:RBG/9kXa0 
       医師「明日、また話そう。この子のことなら心配ない。君は部屋に戻っていい」

       少年「わかりました」


       少年(無機質な白い壁、天井)

       少年(一人きりでいると、昔のことを思い出すな)

       少年(……………)

       少年「……………すう、すう」

       ―――――――――――――
       ――――――――
       ―――


83 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2011/09/05(月) 01:50:17.22 ID:RBG/9kXa0


       「僕と友達になってよ」

       『えー』

       『嫌だよ』

       「どうして? 僕がなにか悪いことした?」

       『お前ってなんか、変だもん』

       『そうそう』

       『取り繕うみたいに笑うのが、気持ち悪いんだよ』

       「待って、待って」

       「待って………」

       ―――――――――――――――
       ―――――――――
       ―――


84 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.
[] 投稿日:2011/09/05(月) 01:53:57.04 ID:RBG/9kXa0
         医師「おはよう」


       少年「おはようございます」

       医師「あの子はもう大丈夫。熱はすっかり引いた」

       少年「それはよかったです」

       医師「会いに行ってみるといい」


       少女「…………」

       少年「こんにちは」

       少女「……こんにちは」
       
       少年「今日の君はやけに物静かだね」

       少女「色々なことがあって、混乱してるの」

       少年「色々なことって、例えば?」

       少女「例えば、あなたに関する記憶が戻ったこと」

       少年「………なんだって? 本当に?」

       少女「本当。この数カ月……正確に言えば、八ヶ月と十六日分の記憶が」



88 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2011/09/05(月) 01:56:49.78 ID:RBG/9kXa0


       少年「それは、すごいことだ。君の病が改善したわけだ」

       少女「熱に浮かされて、永い夢を見ていたの」

       少女「あなたばかり出てくる夢」

       少女「でもそれは夢じゃなかった。私の経験したことが、一つ一つ蘇ってきたの」

       少女「遊んだり、喧嘩したりしたこと、すべて」

       少年「参ったな。僕の下らない冗談まで思い出されちゃ困るよ」

       少女「あなたは確かにつまらないことを言っていたけど、それ以上に素敵なことを沢山言ってくれた」

       少年「そうかな」

       少女「……そして、私はあなたを苦しめ続けてた」



90 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. [] 投稿日:2011/09/05(月) 01:59:21.63 ID:RBG/9kXa0 
       少女「私は、親しげに話してくれるあなたを、いつも」

       少年「僕は君と話していて、苦しんだことは一度もないよ」

       少女「嘘よ」
       
       少年「本当だ。君が僕を忘れてしまうのは寂しかったけど、君と話すのが何より一番楽しかった」

       少年「だから僕は毎日君の部屋に遊びに来た」

       少年「僕にはずっと友達がいなかったんだ。君と友達になれて、本当に嬉しかった」

       少女「……ありがとう」

       少年「こちらこそ」



94 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. [] 投稿日:2011/09/05(月) 02:03:13.75 ID:RBG/9kXa0


       少女「私があなたのことを思い出せたのは、あなたが必要な人だと、私の脳が判断したからだって」

       少年「医師さんが言ったのかい?」

       少女「そう。あなたは私の『慣習的記憶』になったらしいの」

       少女「それと同時に、私の大切な人になったわ」

       少年「身に余る光栄だね、それは」

       少女「もっと言えば、私はあなたのことが好きなの」

       少年「僕も好きだよ」


97 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2011/09/05(月) 02:05:17.10 ID:RBG/9kXa0


       少女「………ねえ、あなたの言う『好き』ってどの程度の『好き』なの?」

       少年「そうだな、それは日溜まりの子猫みたいなものだよ」

       少女「子猫?」

       少年「そう。子猫がね、温かい日溜まりの中で居眠りしてるんだ」

       少年「太陽が傾いて、日の当たる場所が変わると、子猫の寝ているところは日陰になってしまう」

       少年「子猫はそれに気づいて、寝ぼけ眼でとことこ、温かい場所に移動して、また気持よさそうに眠り始める」

       少年「つまりそれくらい、君のことが好きだよ」

       少女「素敵ね」

       少年「そう、君は素敵な女の子だと僕は思う」

       少女「ありがとう」


99 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. [] 投稿日:2011/09/05(月) 02:08:18.63 ID:RBG/9kXa0


       少年「ねえ、君は僕のこと、どのくらい好きなの?」

       少女「あなたみたいに素敵な台詞は思いつかないけれど、誰よりも好き」

       少年「なんだか、照れるね」

       少女「そうね」

       少年「今日はなにをして遊ぶ?」

       少女「あなたの顔をずっとこうして見ていたい気分よ」

       少年「それは都合がいい」

       少女「どういう意味?」

       少年「僕も君の顔を見ていられる」

103 名前:気に入りません ◆EXypm9zea. [] 投稿日:2011/09/05(月) 02:11:21.73 ID:RBG/9kXa0 

       少年「君の目を見ていると、思い出すことがあるんだ」

       少年「いや、思い浮かぶっていうのかな」

       少女「なにを思い浮かべるの?」

       少年「雲の上のこと」

       少年「そこはいつでも真っ青な空がひらけていて、とても静かで」

       少年「下に敷かれた雲は、だんだん形を変えて流れていく」

       少年「それは信じられないくらいゆっくりとした動きで」

       少年「僕は時間の感覚がなくなってしまう」

       少年「いつまでも僕はその凪に包まれているんだ」

       少年「いつまでも」


105 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2011/09/05(月) 02:15:15.58 ID:RBG/9kXa0


       少女「たぶんあなたは、いつかその凪から出ていかなくてはいけないのよ」

       少女「この施設から、いつか出ていかなくてはいけないのと同じようにね」

       少年「その時は、またここに戻ってきてもいいかな」

       少女「構わないわ。だって、あなたは私の大切な人だもの」

       少年「……ありがとう」


107 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2011/09/05(月) 02:18:15.32 ID:RBG/9kXa0 

       少年「明日も君に会えるかな」

       少女「会えるわよ」

       少年「それじゃ、また明日」

       少女「ええ。また明日」


       おわり

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/09/05(月) 02:19:23.00 ID:Z2dJDMoA0
       乙

109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/09/05(月) 02:19:32.31 ID:QDaqVSAW0 
       よかった!>>1乙!


110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/09/05(月) 02:19:37.68 ID:8rJTaTj40 
       乙。

111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/09/05(月) 02:20:53.62 ID:aY2PNcFm0 
       いい話だった…
       VIPでここまで喪失感を伴う読了感を味わうのは初めてだ
       おつでした

112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/09/05(月) 02:21:55.52 ID:LCuQJI6Q0 
       乙
       素敵な話だった

113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/09/05(月) 02:22:25.48 ID:Zu19U/670
       乙!
       即興じゃないよね?

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/09/05(月) 02:24:22.64 ID:Vsek6hBk0
       おつおつ!

115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/09/05(月) 02:25:02.25 ID:XF31Hdak0 
       普段SSとか見ないんだがすごく面白かったぜ
       世界観みたいなのがすごく独特で素敵だった
       おつ

118 名前:気に入りません ◆EXypm9zea.[] 投稿日:2011/09/05(月) 02:29:05.90 ID:RBG/9kXa0


       指摘にもあったとおり、村上春樹の台詞回しを真似て書きました。
       書き溜めたものを修正しながらの投下でしたよ。
       最後までお付き合いいただきありがとうございました。


119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/09/05(月) 02:31:40.15 ID:Zu19U/670 
       >>118
       ありがとう!今日も楽しかった。

120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/09/05(月) 02:31:57.87 ID:S8LvSFsr0
       村上春樹って翻訳文体か
       中学のとき好きだったわ

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/09/05(月) 02:32:23.71 ID:w1QhnqVq0 
       いちおつ



123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/09/05(月) 02:33:25.04 ID:QDaqVSAW0 
       おつ

124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/09/05(月) 02:39:52.92 ID:8u4uDxkD0
       すごく面白かった
       海辺ってロケーションがぴったりだね

       >>1おつ!

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