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女「そこまでです、タイムトラベラー!」男「またかよォッ?!」2/5

女「そこまでです、タイムトラベラー!」男「またかよォッ?!」


女「そこまでです、タイムトラベラー!」男「またかよォッ?!」




50 名前:ありがとうございます、ゆっくりやらせていただきます。 ◆N1RGqRourg[sage. saga]投稿日:2011/11/12(土) 19:54:52.42 ID:gj0xhNs50


男「――……俺は、」

 次のページへとかけていた指を浮かし、本の表紙まで手を伸ばす。

―バフンッ―

女「…そうですか。」

男「本を読んでいてわかったろう。俺は弱い人間なんだ。」
男「今知らなきゃいけないと思っていても、人の事をずるして知りたくない。」

男「逆に、俺の事なんか、俺が一番わかってやれているんだ。」
男「これはどうやら俺が好意を抱いているらしい奴の話だがな…」

男「”いつ、どんな時代に居ようと、自分のことを全て理解してやれるのは自分だけ”だそうだ。」
男「だから、へたれの俺はその本で人の事を読んだりしない。ましてや自分を理解する為にそんなもの使ったりしない。」

女「逃げましたね」
男「言ってろ。」

 本音を言えば、魅力的過ぎて怖いんだよ。

女「…興味深かったのですがね、貴方がこの本を手にした時どのような反応をなさるのか。」
女「――パラレルワールドでの貴方は、この本を手にして大変な転機を迎えたそうですが。」

男「あぁーやめろやめろ!ねばらないでくれ!!誘惑に堕ちそうだ!」

 そのパラレルな俺の気持ちが痛いほどにわかってしまう…

男「……ってか、女さんはどうしてこんなに朝早くに俺の部屋に来たんだ?」

 それさえわかれば、今の誘惑にももう少ししっかり反発できたはずなのだ。

女「…たとえそうだとしても、別の誘惑からこの本の閲覧へと持ち込ませましたがね。」

 チラリ…と、第2ボタンまで離した制服の襟から健康的な肌色を覗かせる女。
いつぞやの教師の様に、きわめて仏の表情で事を流す俺。

男「お前さん、今、俺の思考まで読まなかったか?聞けば聞くほどおっかない代物だなぁ」
女「えぇ、貴方のことだけは何故か特別詳細に記されゆくのですよ。」

 「何故でしょう?」と首をかしげる。
―いやいや!かしげられても俺もわからんって!!





元スレ

女「そこまでです、タイムトラベラー!」男「またかよォッ?!」
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51 名前: ◆N1RGqRourg[sage. saga]投稿日:2011/11/12(土) 20:24:17.15 ID:gj0xhNs50

男「時間渡航者だからじゃねーの?他に居るのか知らないけど。」
女「そうなのでしょうか?私も貴方以外には遭った事がございませんのでよくわかりません。」

 そうか、そんなに厄介かけるのは俺相手の時だけなのか。

男「それが知りたくてこんな時間に?」

 カーテンを開けてわかったけれど、外は綺麗な朝焼けがうかがえた。
この目覚まし時計は少し速いのかもしれない。

女「いえ、目下特筆すべき質問はこちらにお邪魔した時にお訊きしたので最早構いません。」

 こいつ、わざとめんどうな言い方して煙にまこうとしてないか。

男「何が知りたかったんだ、安眠を妨害した罰として教えなさい。」
女「貴方が目覚めてから窓を叩いたと記憶してますが…(パラパラ」

 わざわざそんなことを調べる為なのか、女は本のページを手繰り戻してゆく。
…変なところが不便だな。

女「あぁ、ありました。貴方のことはいささか詳細に記されすぎている気もします。たった数分で何ページ使うつもりですか。」
男「それを聞かされた俺のみにもなってみてくれ。」

男「というより、そんなタイミング的な話を広げなくて良いんだよ。何を知りたかったのか教えてくれ。」
女「ここを読めばわかるかと思いますが―」

 そういって流れるようにある一文節を俺に指し示す女。
数瞬前の抵抗感を思い起こす間すら与えず目に焼き付けたその一文は――

男「―”昔なじみの友に会いに行った”?」
女「その直後の事象はこちらです。」
男「”なんだ夢か”……?」

 えっ、なに?夢落ちの話?


52 名前: ◆N1RGqRourg[sage. saga]投稿日:2011/11/12(土) 20:53:09.93 ID:gj0xhNs50

 初心者眼には、何が疑問なのかよくわからない。

女「そうですね、あまり見たくないというものを見せるのも酷でしょうし(パタン」
女「かいつまんでお話します。」


 そうして女が俺に聞かせた話は、俺の中の不確かな抵抗感を違う色に変えてしまうような話だった。


―――――。


男「……つまり、俺のこと、特に今ここにいる俺のこと以外の記録は、”ほぼ全てが第三者視点で記されている”ってことか?」
女「遠いどこかでの物分りの悪い貴方にあたらないで本当によかったです。」

 この能力を持っていたら嫌でも考えさせられると思うが…

男「……一応訊くが、それとさっきの文節がどう関係するんだ。」
女「うっすらと求める応えの輪郭が視えてきましたね?」
男「んなことはいいから、まずは俺の答え合わせをしてくれ。」
女「わかりました。―」

女「―つまり、”主観的な文章が連続しているのに、その前後が不明瞭だ”という事です。」

女「前後でなくとも不明瞭ですが。」

 確かに…昔馴染みって誰だ?

男「友…は違うよな……そんなに長い付き合いでは――」


―アレ?


女「どうなさいました?」

男「わ、悪い!その本をちょっと読ませてくれ!」
女「???」

 眉根を寄せて、首を右左とかしげる女。
それでもしっかりと本を握り締めて、俺がページを手繰れるように開いてくれた。

―パラパラ…―

 中ほどで開かれた本を、表紙へ戻るようにと一枚一枚めくってゆく。
あと少しで表紙をも捲ろうかというところで、それは記された。


男「――”ケダモノから少女を守った。認めたくは無いが、アレは最早ケダモノなのだ。”………」


53 名前: ◆N1RGqRourg[sage. saga]投稿日:2011/11/12(土) 21:18:49.13 ID:gj0xhNs50

女「ほんとうにどうなさいました?貴方だけ答えを得たようで不満なのですが」
男「……俺はここに記されている通りなのか…?」
女「男さん?」
男「……もしかして、この一人称で記されている奴とはよく似ているが違うパラレルの世界に居るのが今の俺なのかも…」
女「………」
男「………いや、むしろこの話自体が大嘘なのかも…よくできた嘘で、夢の話の事だって、寝言をかいつまんでまとめただけなのかも…」

男「…なぁ、でなきゃおかしいだろ?なんで俺の知らないことを知ってる奴が、俺とまったく同じ人生を歩いてんだよ…」
男「俺の事って数分で何ページも消費するほどに詳しく書かれてるんだろう?」

男「なのになんで昨日の出来事より前の記録が粗末なんだ?もう1ページ捲ったら表紙だぞ?」
男「俺の人生は昨日始まったのかよっ!!!!」

 目の前にあった椅子を蹴り飛ばす。

俺と友は結構長い付き合いなきがしていたが、それは俺の主観でしかない。

俺が単純計算で3年分にも及ぶ累計時間を無かったことにしたのは、友からの熱烈なアプローチを無かったことにする為だった。

俺の両親は仕事の都合で中々帰ってこないのは知っているが、両親がどんな仕事をしていてどんな顔なのかも知らない。

 飛ぶように本の最初のページを掴み、捲る。

――”ケダモノから逃げる少女をみかけた。”


俺のことのについて記された、本の冒頭はそう記されてあった。

男「……違う…違う違う…俺は昨日、寝不足だったんだ…」

 その理由はわからない―

男「昼休み、まで寝ていられると思ったんだ……」

 その理由はわからない―

男「そしたら案の定居眠りを見過ごしてもらえて……」

 その理由はわからない―

男「………」

 昨日のうち、覚えている記憶の最古は、それだけだ。

男「………俺って…」

男「俺って…昨日、突然学生として生まれたのか…?」


 確信的ななにかが心に根を張った。


54 名前: ◆N1RGqRourg[sage. saga]投稿日:2011/11/12(土) 21:21:42.03 ID:gj0xhNs50
序章終了ってことで。

今日もまだ疲れを引きずっておりますので、
早々に切り上げておきます。

ご質問があれば、応えられる範囲でお答えいたします。


55 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東海・関東)[sage]投稿日:2011/11/12(土) 23:53:30.42 ID:GV10NywAO
おもすれー


56 名前:ありがとう、励みになります ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/13(日) 19:04:46.69 ID:0MilYz6T0

―――――。

―永い、永い永い旅をした。

その旅の途中で、旅をしているという自覚を捨てた。
未だに俺は旅の途中だ。

 漫然と歩いているだけでは腹が減る。
眠気も襲ってくるし、性欲だって処理できない。

荒野の真ん中、夜の帳が空を覆おうと赤い幕を地平線の向こうに降ろしてゆく。

―困ったな―

 夜は危険だ、なんせ俺は夜目が効かない。
夜行性のやつらに囲まれたら一たまりもないだろう。
近くから、なにやら焦げ臭い臭いがした。
火が近くにあるのだろうか?ならば行幸だ。
その近くで休めば、しばらくは安心かもしれない。

 臭いに誘われ、フラフラと歩みを進める。
―と、突然足元の抵抗が無くなった。

どうやら、もう少し視線が高くないとわからなかったような段差を踏み外したらしい。

流石にあわてて、受身の姿勢もおろそかになる。
落下してゆく短い感覚の後に、強く背中を打ちつけた。

「―――ッ!!」

 一瞬、息が出来なくなった。
四つんばいの姿勢で起き上がり、視線を巡らせる。
大きな音に誘われて動物がやってきたりはしていないようだ。
小さく息を吐いて、自分の落ちた段差をふりかえる。
かなり横に広い段差だった、

―俺の背丈の2倍くらいあるんじゃないか?―

 それすらわからなかったということは、空腹も限界に来ているようだ。
偶然、段差にその穴を見つける。
人がぎりぎり入れるような隙間だが、そこから焦げるような臭いも漂ってくる。

―お邪魔するかな。―

 とりあえず一晩、その穴倉で明かすことにした。
狩りは明日に持ち越しだ。



57 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/13(日) 19:14:13.30 ID:0MilYz6T0

 穴倉に入ると、かすかな動物の臭いもしてくる。

―しめた、これで飯も心配ないかもしれない―

 奥へと進む足取りも、少し軽くなった。
ゆらゆらと、はかなくたゆたう明かりを見つけ、走り寄る。

焚き火だ、暖かい。

 生気の感じられない風を浴び続けたせいか、日中の散策で身体は冷え切っていた。
食欲が俺の中で首をもたげて荒れ狂っているが、暖かさからくる安心感には勝らない。
焚き火の傍でまるくなり、俺はそのまま眠りに誘われていく。

―帰りたいな…―

 滲みゆく景色のをみつめて、そんなことを思――

「ガッー――?!?!?!ッ―――!!!」

 突然、身体に鈍い痛みが降りかかった。


58 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/13(日) 19:39:23.31 ID:0MilYz6T0

 跳ねるように飛び起き、辺りを窺う。

「―――ッ」

 薄闇の向こう、明かりがぎりぎり届かない辺りで、4~5人が手に手に武器を持って俺を囲んでいた。

―話の通じる相手じゃあないんだろうなっ―

 この荒野で、これまでも何人かの人間に出会ってきたが、どいつもこいつも俺の言語は通用しなかった。

―そんなに肉体言語が好きかい―

 ここでのルール、見ず知らず同士は生きるか死ぬかの戦いだ。

石槍や棍棒をさそうように振り、じわじわと俺を取り囲んでゆく野蛮人共。
歯を食いしばり、力の入らない身体を鞭打った。

「ガッ―――!!」

 腹から声を漏らしながら、集団に向かって飛び掛った。

俺めがけて振り抜かれた棍棒を、姿勢を低くして辛くも避ける。
振りぬき隙だらけのソイツのわき腹に、全力でぶつかる。

押し倒しながら、強く棍棒を握り締めたそいつの手首を爪で抉る。
耳を噛み千切る。
首元でぎゃぁぎゃあと騒がしいが、その声で他の奴らの思考を止めてくれるならありがたい。

―ザッ…―と、足を踏み込む音が頭上で聞こえた。

思考を挟む余地なく、俺はソイツの上から飛びのいた。
すると、そいつの首の横、俺の頭があった位置に石槍が突き立てられた。

―アレは…危ないな―

 冷静に判断し、先ほどのタックルの要領で槍の柄にぶつかった。
大きく撓りながらも、重さに負けた槍はバキバキと瞬く間に折れてくれた。

―が、俺が全力で飛びついた先では、また別の棍棒を構える男が居た。

空中でなすすべなく、振り下ろされた打撃を全身で受ける。

「――カハッ!!」

 掠れた悲鳴を漏らしながら、またも地面に叩きつけられる。

痛みと空腹とで、最早心が冷静さを保てなくなってきた。
闘争本能を滾らせて、またも棍棒を振り下ろそうとする男の足首に噛み付いた。
またも悲鳴が頭上が聞こえるが、今度は他の奴を惑わせるような物は期待できないだろう。

 遠のく思考でそう考え、ついに俺は理性を失った。


――しばらくのやり合いで、最期に立っていたのは俺だった。


59 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/13(日) 20:00:57.39 ID:0MilYz6T0

 気を失ったのか、死んだのか。辺りには4人の男が伸びていた。

俺はといえば、耳は欠けて裂傷も酷く、片目は血で見えなくなったいた。

満身創痍で辺りを見回すと、穴の端で、一人の女が藁を被って震えていた。

―あぁ、もう限界だ。―

 俺は血を滴らせながらそのうずくまる人に近寄り――


――空腹を抑えられなくなった。



―――

 甲高い悲鳴が近くで聞こえる
構わず肉を喰らう。

―――

 悲鳴は嗚咽に変わっていた
痛みに耐えられないのだろう。

―――

 押しても鳴らないほどの肉塊になったそれを
尚も貪っていると

背後でピチャリ…と音がした。

 何事かと振り向くと、小さな女の子が俺を唖然と見つめていた。

身体ごと振り向くと、少女は逃げ出した。
走りゆく薄く白い肌の体を眺め、俺は違う欲を刺激された。
眠気など飛び、痛覚などは埒外となっていた。

 追いかけて穴から飛び出す。
空には幾千の星が瞬いていたが、それよりも少女だ。
汗の臭いを追いながら、小柄な体躯を思い浮かべていた。

―真っ直ぐに、真っ直ぐに、俺の理性を惑わす人影を追いかける。
つまずきながらも大きな岩肌を駈けてゆくその背中に、必死にすがろうとする。

―なぜ、何故追いつけない―

 身体が限界であることや、効率的な走り方など忘れて、追随する。

崖のような坂を上りきった少女は突如視界から失せた。

―そんなっ!!―

 あと少しでこの手の内であったというのに、指の間をすり抜けていってしまったような寂寥感と焦りに、もたもたと崖を登りきる。

そこは、長大なクレーターの淵であった。


60 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/13(日) 20:20:55.20 ID:0MilYz6T0

 穴を見下ろすと、そこで少女はうずくまっていた。

居なくなった訳ではないと知り、安心するも、
焦りだけは拭えなかった。

―早く、早く、―

―早く奴を手にしたい―

俺を焦らせる懐かしい匂い。
その少女から漂ってきていた。

振り返った少女と視線がかち合う。

―もう構わない―

 耐え切れず、俺は飛び掛った。
これで、自分の家に帰れると信じて…―


――視界の端、蒼く輝く大量の砂が瞬く間に空から降り注いだ。


 まるで、満天の星空が、この景色を止めに入ったかのように、
砂時計のように星空から降り積もったそいつは、人の形を築き、轟音と共に俺の前に立ちはだかった。

―ギュゥォッ!!―

 足だと見て取れる位置から、蒼い光は弾けてゆき、
眼前へと迫り来る拳を残して、その体を覆っていた蒼い光は溶ける様に失せた。

―瞬間、腹に異物がめり込んでくるような違和感と衝撃に、
口の中に蓄積された胃液や血や肉の切れ端などを吐き散らして飛ばされた。

 クレーターを駆け上がるように転がり、勢いがなくなった頃にフラフラと立ち上がった。
意識朦朧で、もはや前が見えない。

―そこへ声が響いた。

「小さい女の子を泣かせる奴は・・・っ」

「過去に飛ばされて死んでしまえっ!!」

 俺の体が、蒼い光になってゆく感覚がした。
目前から、蒼い流星が迫っていた。

ぶつかると感じた時、俺の体は光となって砕けた。



61 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/13(日) 20:41:59.04 ID:0MilYz6T0

―――――。

女「……困りました。」

 昼休み、校舎の屋上で”蝶の標本(バタフライサンプル)”を開きながら、私はお弁当を食べている。
食べカス等が降りかかることは、どうせ私しか読んでいないので気にしません。

女「朝の私は少々強引過ぎたでしょうか?」

 本に記されてゆくのは、彼…男さんの事。

彼のことのみ、心情的な部分も事細かに記されてゆくので、こういったときは便利なのですが…

女「―長い…」

 自分の存在だの、世界のありようなどが延々と記されていきます。

女「今朝のショックから立ち直れないのでしょうか?」

 今朝、彼がこの蝶の標本の一部を閲覧した時、よほどショックな事が記されていたのか、
「出てってくれ」と家を追い出され、登校中に一声おかけすると「もう関わらないでくれ」と一蹴されてしまいました。

女「…そもそも男さんはどこを読まれたのでしょうか?」
女「何か仰っていましたねえ…えぇと、確か”ケダモノ”がどうのこうのと…」

 古いページへ戻っていこうとした時、最新の項目として不思議なものが記された。

―女、見ているかい?―

女「……?」

 そのすぐ後に、なんとも取り留めの無いような悩みを永い文章で記していく標本。

女「……今のは一体?」

 ページを戻そうとして本の上に置いた手をどかす。
少しして、またそれは記された。

―読んでいるみたいだね、よかった。―

女「?!」

 私がその部分に注目した事をわかっている?
聡い彼ならしそうな事ですが、どうもタイミングが噛み合い過ぎている気がします。

女「コレは…もしかして――」

 自分の中で、ある一つの仮説を立てた途端―

―そう、俺はその本を手にした世界の男だ。―

 言い知れぬ不安が、向こうからやってきた。


62 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/13(日) 21:27:10.04 ID:0MilYz6T0

―――――。

男『あんまり長いと、君も読むのはうんざりだろう?』
男『だから簡単にだけど説明していくよ。』

 そう記していくパラレルワールドの男さんは、この世界で男さんは何を知ってしまったのかを教えてくれました。

女「…つまり、この世界は彼を中心に、昨日できたばかりの世界なのですか?」
男『正確には、彼だけその世界での昨日以前の記憶が無いんだ。』
男『もっと言えば、彼を昨日作る為に、どこかで分岐した世界なんだよ。』

女「彼を作るために分岐…?」
男『正直、そっちの世界はとんでもない事になってるからね。』
女「とんでもないこと…?」
男『俺が誰かに管理されているんだ、時間すら越えて。』
女「時間を越えて管理されている…?」

 いよいよもってわからなくなってしまいました。

男『じゃあ、話を変えようか。』
男『今朝、女は俺が不思議な事を本に記すもんだから、気になって家に来たね?』
女「あ、はい。」

 そう、何故彼の場合、夢の内容まで記されるのか、それが気になったのです。
もしかしたら、眠っている間に時間渡航しているのかもと疑って家に突撃した。

男『凄い事するもんだよね…』
男『そして、彼に質問をしている時、別の世界ではその本を彼が手にして転機を迎えた。そう知って試してみた。そうだね?』
女「えぇ、その通りです。」

 私は、過去を守りたくてこの本を使役しているので、万に一つ、彼が仲間になってくれるのならと試してみたのです。

女「そもそも、貴方どうやらそちらで私の事を読んでいるみたいですが…そのような度胸、よくございましたね?」
男『前提が違うからね…』

男『きっぱり言うと、そっちの世界で彼が本を手にしていい方向に向かう事は無いよ。』
女「……どういうことです」
男『彼にとっては…いや、俺にとっても、そっちの世界の構造は受け入れがたいよ。』
男『なんというか、その世界を1から作った奴がいるみたいなんだ。』
女「この世界を…?」

 まるで神のような…

男『そう、そいつは今、自分の身勝手で神になろうとしてる。』
男『そっちの彼は、”こんな恐ろしい能力を持つ人間すら1から生み出せる存在”に、漠然と恐怖心を抱いているんだ。』
男『その神のような奴からも、彼の中の空っぽだった昨日以前の記憶を、今まさに造られていってるんだ。』
男『毎日、自分の為に日記を書いていた彼は、その思い出とのギャップとも闘っているみたいだよ。』

 だとすれば、彼は今、中にも外にも味方が居ないように感じているのでは…

男『そう、彼には、人と接した思い出が無いんだ。だからよくわからない物をその本を使って知ろうという気になれなかった。』
男『お願いだ」、どうか、彼を助けてあげて欲しい。』
男『そうすれば、彼はきっと、君の力になるはずだ。』

 彼が、力に…。

女「本当に、本当に私の思い出を守る為に、彼は力になってくれるのでしょうか…?」

男『意外と、信用してくれてるんだね。』
女「隠しても無駄だとさとりました。」
男『そうか。うん、約束しよう。』

男『たとえ世界が違っても、そこにいる俺を一番理解してやれるのは俺だけだから!』

 今朝の彼の言葉を思い出し、本当に同じ人なんだと感じた。


 
65 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/14(月) 21:16:32.37 ID:58obPT+z0

―――――。

―わからない。

わからないわからないわからないわからないわからないわからない。

わからないわからないわからないわあらないわかあないわからないわらないわからないわからないわからないわからないわからないわからない。

男「わからない…。」

友「なに?レポート?」
男「いや、そうじゃなくて……なんでもない。」
友「むぅ…」

 友が心配そうに俺の顔を覗き込んでくるが、いい加減無視する事も疲れたので、じぃっと見返す。

友「………」

男「………」

 ………

友「……(ポッ」

 ガクッと頬杖を突いていた腕がすべる。

男「へいがーる、かおになにかついてますか(棒」
友「うん。」
男「えぇ?!」

 あわてて顔をパタパタと払うが、それらしき感触は何も無い。

男「と、とれたか?!」
友「全っ然」

 言いながら、鞄から引っ張り出した手鏡を俺に向ける友。
それを食い入るように覗き込むと、俺の頬に「考える人」と書いてあった。
器用に反転文字である。

 友を見る。
頬袋がパンパンに膨らんでいる。
睨む。

友「……ぷっ!!」
友「ぷっはっははあは!!あひー!!あひー!!」

 俺を指差しながら、腹を抱えて笑い出した。
こいつがやったのか。

男「すいません、顔洗ってきます。」
教師「お前さんら授業という事を忘れておるな。」
友「お花摘んできま~す」
教師「古い。」

 教室を出て、廊下の先、階段の向かいにある手洗い場で蛇口をひねる。



66 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/14(月) 21:17:35.50 ID:58obPT+z0

 蛇口から流れ出る冷たい水を手で受け留めて、腰を屈めて顔を洗う。

はじめの内は冷たかったそれは、回数を重ねる毎に薄れてゆき、
やがて外気に晒している方が冷たく感じ、頭全体を蛇口の下に突っ込んだ。

 頭の先から、芯を凍えさせてゆくような波を感じる。
やがてそれは感覚を麻痺させて、空気に触れている間の方が寒く感じるようになってゆく。

 ―これは、時間を飛ぶときの感覚に似ていた。

体の先、両手足と頭から冷たさが降りかかり、
やがて体全体を凍てつかせるような鋭い痛みが全身を満遍なく駆ける。

眼を開けていると、同じ順に繰り、体が散り散りになってゆく景色を蒼い光の中で見る事になる。


―飛びたい。―

 時間を。

この、跳躍時によく似た感覚を全身で味わう為に、上着のボタンを次々と外してゆく。

この冷や水の中に飛び込めば、その先には跳躍後のあの暖かい感触が体を駆け巡るはずだ。

そう信じて、手洗い場の縁についていた手に力を込める――

友「――バッッッッカヤロウ!!」

 柔らかな感触が、腰の辺りに抱きつき、俺を引き倒した。

友「ばかやろう!!風邪引くぞ!!ばっかやろう!!」
男「……なんだ、友か。」
友「なんだとはなんだ!!やっちまった身として、後始末ぐらい手伝ってやろうと思っただけだ!!文句あっか!!」

 ねぇよんなもん。
男「……なんで止めた」
友「お、!!おまえ…っ!」

 怒り肩で仁王立ちしている友の手が、ぶるぶると震える。
ギリギリと握りこまれていくその拳を眺めながら、殴られる様を想像した。

―その方が良いのかも知れないな。―

 よくわからない。


67 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/14(月) 21:29:42.96 ID:58obPT+z0

―バサッ―

 と、伏せていた顔に何かがかけられた。
同時に、柔らかく、暖かな何かに顔を布越しにグシグシと拭われる。
息苦しい。

友「顔…墨まみれだぞ…」

 グシグシと頬を鼻をでこを擦られながら、うっすらと眼を開ける。
薄黒く滲んだ、白桃色の布を顔にかけられていた。
この色は、確か友のハンカチだったはずだ。

友「何悩んでるの。」
男「………。」

 応え難い事を訊きやがる。
お前さんには話してやりてぇなぁ。

友「…私のせいですか…?」

 ……わかんねぇよ、俺だって。


68 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/14(月) 21:49:12.24 ID:58obPT+z0

 情けないが、今飛ばされた衝撃も相まって全身がプルプルと震えてしまっている。

男「…ごめん、立たせて。」
友「グスッ)…ん。」

 肩を借りて立ち上がる。
その際、顔にかぶさったハンカチをとらなかったのは、ただ億劫だったからだ。決して情けなどではない。

男「……みっともねぇよなぁ、女の子泣かせて、そのうえ肩まで借りて。」
友「…うっせ……誰の為にボクって言ってると思ってんだ…」
男「…さぁな」

 さぁな。

男「悪い、体調悪いから帰るわ」
友「そっか、保健室行く?」
男「いいや。」
友「…ん。送ってく。」

男「悪いな、俺の為に。」
友「うっせ。ばっかやろう。」


 友と一緒に帰る間も、俺は何も喋らなかった。

一歩進むごとに、
一つ呼吸を挟むごとに、
乾きはじめた髪が冷たい風にゆれる度に、
―俺の中に不確かな記憶が産み落とされていく。

 こんな不安を、友にまで分け与えたくない。

こいつと居る時ぐらい、禍々しい事は忘れたい。

 家に帰ったら日記を見よう。

昨日より以前の記録を確かめよう。

俺が何者なのか、確かめないと…。


69 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/14(月) 22:06:30.22 ID:58obPT+z0

―――――。

友「ふぇっ……」

友「ふぇっ……!!」

友「ふぇぇぇぇぇぇっ!!」

友「っくち!」

 盛大なくしゃみを覚悟していたが、最後には友の中の女の子な部分が勝ったらしい。

男「風呂使って良いよ。」
友「ふへ?……」

 じゅるじゅると鼻をかむ友だったが、ワンテンポ遅れてそれが止まる。

友「………えぇぇぇぇぇぇえええええええええっ?!?!?!!」

男「うっるさい…」
友「あ、ごめん。」
友「で、でででもさ、あのーそのーいきなりー、ねぇ?お風呂を?お借り?するのってー…ねぇ…?」

 顔が真っ赤である。

男「……あ、」

 ハッハァ~ン…?さてはコイツ……―

男「顔赤いぞ?やっぱ友の方が風邪引いちまったんじゃねぇの?(ピトッ」

 友のでこに、俺のでこをくっつけた。

男「おわっ!あつっ?!」
男「おまえ、風呂入らずにそのまんま寝たほうが良いんじゃないの?!」
友「へっ?へっ?へぇぇぇぇええっ?????」
友「あ、いや、お、おおおおお、お風呂いただいて行きますすすすす!!!」

 脱兎のごとき素早さで、上着やタオルを掴んで、リビングから廊下奥の浴室へと消えた友。
立ち上がり、給湯器の操作盤を押して設定温度を少し下げておいてやる。

 友が風呂に入っている間、適当に濡れた服を脱ぎ散らかしながら、2階の自分の部屋へ戻ってゆく。

ふと、階段を上りきったところで下を振り返る。

男「………」
男「……俺一人だったら、いっつも脱ぎ散らかしたまんまになるはずだよな…」


82 名前:ハッピーエンドをご用意しておりますので、気を張らずに気楽にどうぞ ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/15(火) 12:03:05.17 ID:C9NJm7sB0

―――――。

男『―それじゃあ、今言ったとおりにお願いするよ。』

女「えぇ、わかりました。」

 彼と友さんとやらがいちゃこらいちゃこらしている間、
私は完全に暗躍しておりました。

女「不公平だよ…」
男『ぼやかないぼやかない…』

 別の世界の男さんとの順だった会話も、こちらの世界の彼のなんとも桃色な思考の断片のせいで、
かなりの滞りをみせた。

男『俺だってぼやきたいよ……』

 どうやら、彼の世界では、”友さんとやらはいない”らしい。

色恋に特出した話はめっきり無いが、学生生活をきままに楽しんでいるそうです。

男『俺の世界には、君みたいな悩みを共有できる相手も居ないんだよなァ』

 この後の、私たちのすべき行動を明確にせんと夢中に会話していたせいか、
合間合間に世間話を挟みこむ程にはお互いの事がわかってきました。

女「それは残念です。貴方となら時を越えて茶話会等を設けてみたいというのに。」
男『規模がおかしいな』

 彼いわく、こちらの世界はとんでもないけれど、話を聞くと、私からすれば彼の世界の方がとんでもなく思える。

この”蝶の標本(バタフライ・サンプル)”が、他の時間渡航者を取り締まる為に重宝されているらしく。

男『野蛮なトラベラーが紛れ込んだり、悪意ある時間跳躍を見過ごしたりしそうだ。』
女「ずいぶんと物騒な世界なのですね。」

―”蝶の標本(バタフライ・サンプル)”の出現条件とは何なのだろうか。―

男『……あのさぁ』

 あれから通しで話し続けているせいか、どんな短文でも彼のものなら見抜けるようになってしまった。

女「はい?」

 反応から見るに、彼も同じなようだ。

男『その…”蝶の標本”って一々めんどくさくないかい?』
女「なっ!」

 なっ

女「何を言うのですか無粋者!!!」

 触れてはいけない触れ方をしてしまいましたね!!

男『ごめんなさい、わるかった、許して!今こっちの本が一瞬で3Pぐらい埋まっちゃったから!!勘弁して!!』
女「ふんっ!わかればよいのです。」

 きっと今頃彼は、この表現の素晴らしさについて纏められた3P強分程の論文に喜びの涙を流しているはずです。

男『いや、ごめん。見過ごした。』
女「………」
男『ぎゃぁぁぁ!!勘弁してください!!』


 世界をまたいで、そんな他愛も無い会話を続ける。
これからに必要な会話は、あらかた済ましてしまったし、お互いに強く共感できる時間渡航者と話が出来て嬉しいのだ。

―なによりも重要なのは、その会話にも意味があるということ。
私たちは、あるタイミングへと二人同時に過去へ飛ばないといけない。
そのタイミングをずらした時に、どうなってしまうのか想像が出来ないからだ。

 いつか、こちらの世界の彼は必ず時間を飛ぶ。

その先で、私と異世界の彼とで待ち伏せる。
彼と私とで、こちらの彼を助ける。

そうしないと、こちらの世界から彼は抜け出せないそうだ。



74 名前:冷えたラーメン子盛り4杯分食べてきました~ ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/14(月) 23:02:37.38 ID:58obPT+z0

 せっかく2階まで上ったのだが、友がそのまま上がってくると思ったので、
甲斐甲斐しくもビショビショの制服を回収し、浴室入り口の洗濯機に放り込んでおいた。

決して、俺の見ていない間に誰かが片付けている様を想像して怖くなったわけではない。

 黙々と自室に戻り、流れるように日記を掴んでベッドにもぐりこむ。
布団で全身を隠しながら、机の引き出しの奥底で眠っていたペンライトで照らしながら日記を開く。

 読みふけろうと思ったところで、逆手に握り締めたペンライトをみつめる。

こんなものを机の中に入れた覚えは無い。

第一、机を開いた覚えが無い。

男「…今はいいか。」

 便利なものを置いておいてくれた、どこぞの誰かに感謝した。


75 名前:意外と人が居て感涙 ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/14(月) 23:16:12.75 ID:58obPT+z0

―――――。

 一昨日の日記に眼を通す。

何も書かれていない――ように見えたが、気のせいだった。

男「………?」

『今日、先生に本を全品没収された。』
『「後で使うんですか?」とこっそり訊いたら泣かれた。あんまり女性をいじめるもんじゃないな。』

男「………ふむ…」

 覚えが無い。
しかし、日ごろの俺からしてありえるのだろう。

なんというか、その様が容易に想像できてしまった。

男「……なんでこんな下衆野郎を作ったんだ…」

 深い溜息を吐きながら、思わず頭を抱え込むが、思い直して姿勢を直す。
もぞもぞと動いたせいか、毛布の下に日記が隠れてしまって少し探すのに手間取った。

男「意地でも外に出たくないわ。」

 顔を覗かせた鼻先で、真っ白い顔の誰かが俺を見ているかもしれない。

男「………。」

 あ、やだ。トイレいっときゃ良かった…。



76 名前:遅筆 ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/14(月) 23:28:56.13 ID:58obPT+z0

 急に違和感を覚えた下腹部に鞭打ち、その更に前の日記を読む。

何も書かれていない―――ように見えたが、やはり気のせいであった。

 ちらちらと、思考の端に蒼い光が写り込む。

余程、俺は過去に逃げたいのだろうか。

逃げた先でも、結局はこの未来が待っているはずだというのに。

『5日後に、友とデートする約束をした。』

男「?!」

 唖然。

思考が停止した。

その下に”化石展”だの見えたが、そんなことよりデートだ。

―俺が?!俺が誘ったわけじゃないよな、誘うか?!えっ!!誘ったの?!?!―

 事情により思い出せないとはいえ、俺が友をデートに誘ったというのは事実らしい。
しかも、日付から見て―


男「―明日じゃねぇか…」
友「そうだねぇ。」

 横から声がした。

友の声だ。

 肩に軽くもたれている。

湯上りだからか、暖かさがすぐに伝わってくる。

 バクバクと、自分の胸がうるさい。

色々な冷や汗が手からにじみ、ペンライトを滑らせ、日記を湿らせる。

―やばいじゃないですか―


77 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/14(月) 23:56:26.77 ID:58obPT+z0

 ゆっくりとペンライトを切る。

俺たちの間に漂う毛布越しの沈黙を揺るがさないように、ゆっくりと、スイッチを切る。

友からのアクションを待つが、期待に応えてくれるのだろうか。

ここはいっそ、俺から動いて――

友「―こういうの、さ……明日、するもんだと思ってた。」

男「えっ?あ、あぁうんうん!」

 こういうの?!こういうのってなんだ?!えっ!!この空気にヒントがありますか?!

俺のきょどった反応も、毛布という物理的なフィルターがこしてくれているからか、
友は特に難色を示さない。

友「明日さ…一緒に化石見て、会場でちょっとご飯食べたりしてさ。」
男「………」

 な、なんか、喋れる雰囲気じゃないな…

あ、いや、ここは情報を引き出すために聞き手に徹するか?

 そんな打算的な俺の思考を知ってか知らずか、友は初々しく語り続ける。

友「一緒に感想言い合いながら帰ってさ、途中で食べ歩いたりもして、」
友「買い物してどっちかの家に二人で行ってさ、料理食べながら一緒に夜を越すんだと思ってた。」

友「でも、今日一日の男を見てたらさ、なんか、『明日相談しよう!いや前日に相談しよう!』って限界まで先延ばしにしてた話も出来なくてさ…」
友「やっとタイムトラベルの事を話さなくなったなぁと思ったら、ずっと思い悩んだ顔して、さっきはあんなことしたっしょ?」
友「……力になれるかなぁ~。って、ここまで来たけどさ、言葉に出来ないような悩み…なんだよね…?」

友「一回だけ…だったら、嫌な事忘れる為だけに、ボクの事―」
友「―使っても……良いよ…?」

 毛布を跳ね除け、友の方へ振り返る。

友はアンダーシャツにスパッツという、おおよそ動きやすく脱ぎやすい格好で俺の横―ベッドの上―に腰掛けていた。

俺は…友のその献身的な行為と、震える瞳を見据えて、小さな肩を掴む。

 見てわからない程だが、友は小さく震えていた。


男「友……」


男「―予定に食い物が多すぎだ、太るぞ。」

友「えっ」


78 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/15(火) 00:18:31.73 ID:C9NJm7sB0

友「ちょっ、せっかく頑張ったのに、デリカシーってモンが…っ」
男「安心しろ、明日のデートはちゃんと行くから。」

 友の肩に置いた手を、すべるように下ろして、友の手に重ねる。

男「ちょっと俺にしか解決できないような悩みだったんでな、ホラ、タイムトラベルのさ。」
男「だから、友にはあんまり背負わせたくなかったんだよ。」
友「………っ(ウルッ」
男「ちょっと!!」

 あわててハンドタオルで涙を拭おうとすると、バシンと重ねていない方の手でそのタオルを弾かれた。

友「ばかっ!グスッ…そんなもんで拭いた…ら、眼ぇ痛めちゃうだろう!」
男「あぁ~はいはい、指で拭うぞ?すぐに泣き止まないとびっしゃびしゃになるからな。」

 そういって、ハンドタオルを持っていたほうの手で、友の頬に触れる。
親指でゆっくりと涙を拭いながら、友の言葉に耳を傾けていた。

友「ばか…ばかばかっ!ばっかやろう!!」
友「心配したんだぞっ!ひぐっ…頑張ったんだぞっ…!」

友「わたっ、じの、……ぜいっ、だっで………ずっど…」

男「あぁ~はいはい、もう泣くな泣くな。手がべしゃべしゃじゃないか。」

友「う゛る゛っ…ざいぃっ…」

 そんなに泣いてくれるなよ。

お前を信じていたくなるじゃないか・・・。



83 名前:書き貯めはございませんが… ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/15(火) 12:16:20.63 ID:C9NJm7sB0

男『悪いね、そっちの俺が。』

 3P強程度に及ぶ、私の”素晴らしい表現法”と銘打った論文に眼を通しながら、彼は言う。

女「何を言うのです…こちらとそちらの貴方は前提こそ違えど、同じ人間なのでしょう?」
女「私は貴方を助けたい、貴方は彼を助けたい。だから私も彼を助けるのです。」

男『……なら、”悪いね”より、”ありがとうね”の方がいいか。』
女「謝罪も謝礼も今は結構。そういったことは結果を出してからお願いします。」

男『………。』

男『…絶対、助ける。』
女「…はい。」

 心なしか、もの悲しい沈黙を肌で感じた。
この空気は苦手なので、話を少しだけ変える。

女「…こちらの彼は、明日、デートだそうですが。」
男『だぁ~…そうなんだよなぁ……』
男『はぁ……何が違うんだ…』
女「前提が違うのでしょう?」

 軽口を叩きあいながら、私は久々に家に帰った。

義父さんや義母さんは心配しているだろうか?

ずっと「友達の所に泊まってくる」と言い続けていたけれど…

いや、あの仲のいい夫婦の事だ、人目を気にせずいちゃつけて少し嬉しいのではないか。
こんなものは考え方だと一蹴して、足取り軽く、帰路へついた。


84 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)[sage]投稿日:2011/11/15(火) 13:12:37.64 ID:S8k0b3vDO
男キャラのが寒くてキモい


85 名前:すいません、汗流してきました ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/15(火) 13:29:12.99 ID:C9NJm7sB0

―――――。

男「………ん…?」

 朝、だろうか?
開け放したカーテンから眩しく真っ白い光が俺の顔に射し込んできている。

男「…カーテン開けっ放しだったか……(もぞもぞ」
男「…ん?(ぎゅっ」

 視線を真上のベランダから正面の枕と壁に戻す。
枕の上に乗せている両手が、何かを大事そうに包んでいた。

きゅっと握って、形を確かめる。

ふにふにとやわらかく、すべすべとしている。
形は複雑だ。
ところどころ出っ張っている。

男「……ふむん(むにむに」
友「たはっ、くすぐったいよ」

 手元に視線を集中させていたので、その向こうから声がして驚いた。
今のは友の声だ。聞き間違いようがない。

しかし手元のこれはなんだ?

男「むにむに)?」
友「たはっ、たはははっ!くすぐったいってば」

 ぎゅっと、両手を締め付けるやさしい感覚。
あぁ、コレは手か。

男「おはよう」
友「おはよ」

 昨日、そのまま疲れて寝てしまったんだった。
その時も友の手を掴んだままだったような気がする。

友「今日はどうしよっか?」

 日光のせいで友の顔がよく窺えないが、多分笑っているんだろう。
心なしか声が弾んでいる。

男「俺はこのまんま寝ていても構わない。」
友「ばっかやろ(ぺちん」

 そっと手を乗せるように、頬を叩かれた。

友「チケット無駄になっちゃうだろ~」
男「あいあい、わかったわかった。」

 もぞもぞと半身を起こす。
毛布がはだけて、友の姿もそとに晒される。

友「うぅっ眩しい…やっぱりお前さんそこに一緒に寝ておいておくれ…」
男「はぁ、ばっきゃろー」

 今度は俺が友の頬をつねる。

友「あにふんだー(何すんだー」
男「とっとと起きろ~」

 俺のなかの野生が目覚める前に。



86 名前:そんなストレートなw  ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/15(火) 13:30:12.63 ID:C9NJm7sB0

友「わぁかったよ~うぃ」

 毛布を手繰り寄せて、それに包まりながら友が体を起こす。

友「………」
男「………」
友「……見んな」
男「昨日頑張った友自身に言いなさい。」

 いいながらベッドから降りて立ち上がる。
天井のタイルを剥がさんとする勢いで伸びをし、胸から声を漏らしながら姿勢を戻す。

男「俺はチケット探しとくから、その間に顔洗ったり髪セットしたりしてきなさいな。」
友「あう…そんなにボサボサ?」
男「かなり」
友「あうあうあ~」

 もぞもぞと毛布の中でいまだごねる友

友「さぁ~むいよぉ~…(ガチガチ」
男「そんなに寒いか?」

 俺だけ日光を浴びていたせいか、そんなことはないのだが。
友のサイズにあいそうなセーターや上着などを適当に見繕って投げ渡す。

男「でかいけど、少しはましだと思うぞ。」
友「うぅ、わかったよぅ」

 器用に、毛布の中でもぞもぞと着替え、ずるずると外へと出てくる友。
その様をじっと眺める。

男「……」
友「どしたー?」
男「…昨日の薄着より刺激が強いわ」

 友は今、スパッツに大きめのセーター、その肩口からアンダーシャツの肩紐が見えている。
スパッツだから問題は無いはずなのだが、セーターが大きすぎてHAITENAIように見えてしまうのだ。

友「ん~?…そっかなぁ」
男「い、いいから早く行け!非健全だ!」
友「おぉ~おぉ~はいは~い」

 とっとことっとこ開け放したドアの先、階下に降りていく友。
脚寒くねぇのかな。



88 名前:男というのは、同姓の前ではイケメンでも、異性の前では子供なんですよ。 ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/15(火) 13:40:48.97 ID:C9NJm7sB0

―――――。

 不確かな記憶を手繰ると、例のチケットとやらはすぐにみつかった。

机の鍵つき引き出しの中に大事にしまってあったのだ。

男「素直な…」
友「おけ~ぃじゃあ早速行きますかぁ?」

 いやいや、俺まだ顔洗ってないし。
友はと言えば、俺のセーターが気に入ってしまったのか、ボーダー柄の白黒セーターにぶかぶかの黒いジーンズを穿きこんでいる。

友「うぉい、どこ見とるか。」
男「やっぱり脚寒かった?」
友「…うむ。」

 ずずっと鼻を鳴らしながら、「スカートで晒しなれてると思ったんだけどねぇ」なんて言う。

男「顔洗ってくる。」

 言いながらチケットを両方友に渡す。
しかし友は受け取らない。

友「……」
男「あんだよぅ」
友「また、昨日みたいなことしない?…よね?」
男「………」

 確証はないけど、

男「…だいじょぶ」

友「貴様!いまの間はなんだ!」
男「さぁ?なんでしょう?」
友「ぐぐぐっ…絶対に預からんぞ!」

 そうは言っても、両手でしっかりとチケットを持っていてくれる友。
昨日はよほどおちゃらけていなかったのかな、俺。


89 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/15(火) 13:53:20.95 ID:C9NJm7sB0

 洗面所の陶器に両手をつく。

ぽたぽたと髪から鼻の頭から顎から頬からしたたる水滴を眼で追いかける。

少し顔を上げて、鏡に映った自分の顔を見る。

ふやけた乾燥ワカメを頭の上に乗っけているみたいだ。

頬を引っ張る。

でこのニキビを押してみる。

どっちも痛い。

男「…よくできてるよなぁ」
友「?なにが?」
男「いんや、なんでもない。」
友「そう?」

 はい。とタオルを手渡される。
受け取り、顔を頭を拭う。

男「いつからそこに居たんすか」
友「洗面器に溜まった水をニヒルに眺めていた辺りからかな?」

 は、恥ずかしい。

友「おんやぁ~?顔が真っ赤ですぞぉ?」
友「風邪でも引きましたかなぁ?」

 ふと、気付いた。

友と一緒に居ると、あーだこーだ悩まなくなれる。

男「ぷっはは…」

男「うっせ、ばっきゃろー」
友「野郎じゃねぇし、」
男「お前も結構細かいよな。」
友「うっせ!」

 適当に、コイツの横に居て恥ずかしくない程度に見繕った格好に着替える。

ちょいちょいわき腹をなぞられるが、そんなものは無視だ。

男「おっし、行きますか!」
友「おぉー!」

 友と二人、ならんで家を出る。

この記憶だけは、絶対に塗り替えられたくないと思った。



 
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