FC2ブログ

↑アローズ速報↓/SSまとめ

VIPなどのSSまとめInアロ速

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

女「そこまでです、タイムトラベラー!」男「またかよォッ?!」1/5

女「そこまでです、タイムトラベラー!」男「またかよォッ?!」


女「そこまでです、タイムトラベラー!」男「またかよォッ?!」



1 名前: ◆N1RGqRourg[]投稿日:2011/11/09(水) 10:19:01.97 ID:5l5SxB660
はじめに言います。
思いつきで書いています。


 「―――ッ!!―――ッ!!」

少女は走っていた。

いまだ獣の血の匂いを芳す革を身にまとい、汗水ちらして家族の血に染まった真っ赤な脚を駆り続けている。

―ガサッ……タタッ………タタタタッ―

その匂いに誘われて、ケダモノが追ってくる。

「―――ッ!!」

背中越しにその足音を確かに聞き取った少女は、
瞼をグッと閉じ、身体を前に倒しながら、血を散らす両足に更に鞭を打った。




元スレ

女「そこまでです、タイムトラベラー!」男「またかよォッ?!」
SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)@VIPService



2 名前: ◆N1RGqRourg[]投稿日:2011/11/09(水) 10:28:50.52 ID:5l5SxB660
 少女を追うケダモノ。
それは、少女に親の返り血を浴びせた存在そのものだった。

「―――ッ!」―ギリッ―

 少女の思考の端に、数瞬前の惨状がちらついた。

 いつもより日が暮れた時間に家族の待つ穴倉へと戻った少女は、そこで食い散らかされた親兄弟を見た。
煌々と揺らぐ焚き火に照らされ、ゆらゆらと何かを喰らっている影を見つめ、血溜りの上で目を剥いて立ち尽くしていた。

 ハッと気付いた時は、既に脚を巡らせ餌場となった穴倉から逃げ出していた。

 目の前の景色から意識を完全に飛ばしていた為か、少女は少し出張った石に躓きよろめいてしまう。
前へと倒れるその勢いを利用して、眼前の岩肌を登っていく。


3 名前: ◆N1RGqRourg[]投稿日:2011/11/09(水) 10:35:33.94 ID:5l5SxB660
 少女はまともな言語を有していない。
それは、少女の家族も同じであった。

 穴倉に住まい、昼は動物を狩り出て、夜は焚き火に照らされながら倉に篭る。
動物的自然の生活を送る少女らを襲ったのも、また、動物的自然であった。

 少女の家族は、弱肉強食の理に則る最期を迎えたのだった。

まともに知能も無い少女は、死という概念はわからない。
しかし、あのケダモノに捕まることだけはならないと、本能的に察していた。

 ただただ逃げる為に岩肌をふらふらと登りきった少女は、一寸先の崖に気が回らなかった。


4 名前: ◆N1RGqRourg[]投稿日:2011/11/09(水) 10:41:16.50 ID:5l5SxB660

「―――ッッッ!!」

 言葉ではない叫びを腹からもらし、長大なクレーターの内へと転がり落ちる少女。

ドーム状に抉れた地形の中央で、酷使した身体は限界に達し、うずくまったまま起き上がる事も出来なかった。

「ッッ―――ッ―!」

 全身の軋みに辛うじてうつ伏せから仰向けへと寝返りを打ったが・・・

「―――!!」

 クレーターの淵、ちょうど少女が落ちた場所から、あのケダモノが穴の内側を見下ろしていた。


5 名前: ◆N1RGqRourg[]投稿日:2011/11/09(水) 10:48:34.14 ID:5l5SxB660

 無理が祟って胃液を反芻するも、少女はそれすら飲み下して更なる無茶を身体にさせる。

後ろに手を突きながら、上半身だけを起こして穴から這い出んがため、
ケダモノと睨み合いながらもジリジリと後ろに体重をかけていく。

しかし、身体を引こうとしても腰から下だけは限界であった為にピクリとも動かない。

顔を強張らせ、少し少女が焦りを見せた―― その瞬間

―バッ!!―

 足元の小石を蹴り上げながら、ケダモノが少女に飛び掛った。

もう駄目だと少女の眼から光が失われた――


6 名前: ◆N1RGqRourg[]投稿日:2011/11/09(水) 10:54:42.29 ID:5l5SxB660

―ギュオォッ!!―

 -突如人影が少女とケダモノの間に立ちはだかり、
轟音と共に蒼く輝くその拳を空中で無防備なケダモノの横っ腹へと叩き込んだ。

堪らず血反吐を撒き散らしながら吹き飛ぶケダモノを見下ろし、その人影は”喋った”。

「小さい女の子を泣かせる奴は・・・っ」

「過去に飛ばされて死んでしまえっ!!」

 先ほど繰り出した殴打とは逆の拳を振り下ろす。

その拳は、やはり轟音と共に蒼い光をまとっていた。―


7 名前: ◆N1RGqRourg[]投稿日:2011/11/09(水) 11:03:13.69 ID:5l5SxB660

――――――。


男「ぶぇっくしゅんっ!!ちくしょうめぇっ!!!!―――――ふぇっ?今何時?」

友「自分のくしゃみで目覚めるとは・・・器用な奴・・・」

教師「今時だが、バケツ持って廊下に立ってくるかぁ?」

 ―あぁーっと、、、―

男「ゆ、夢?」

友「寝ている自覚無しだったのか・・・」

教師「よぉーっし、男。寝覚めの一発目だ、236Pを読め。」

男「ふぇっ?あ、はい。」

 どうやら完全な居眠りだったらしい。

―そりゃそうか、俺があんな獰猛な生き物相手に喧嘩できるわけ無いし。―

 夢だと思えば粗末なことで、
あっという間に思考を現実に引き戻し、教本を開いて立ち上がった。


8 名前: ◆N1RGqRourg[]投稿日:2011/11/09(水) 11:10:59.29 ID:5l5SxB660

男「オホン……」
男「―らめぇぇぇぇぇっ!!!そこぉっ!!そこぉっしゅごいのぉぉぉぉっ!!!あへぇっ!!!―」
男「…あれ?」

教師「よぉーし、男にまかせた私が悪かった。だから[らめぇぇっ!]なんこつを感情込めて音読しないでくれ。それと何度も言うがそんなものを学校に持ってこないでくれ。」

 教室全体が「またかこいつ・・・」と言いたげな、無言の弾圧に包まれていた。

男「センセー、これって何の授業でしたっけ。」

教師「どれだけ居眠りして授業を消化しようとも、そんなマンガは教材として取り扱わないから安心しろ。」

友「いや、むしろ危機感を持て。」


9 名前:まちがって書いちゃったよ・・・ ◆N1RGqRourg[]投稿日:2011/11/09(水) 11:19:17.13 ID:5l5SxB660
教師「この授業は保健体育です。」

男「・・・どっちも一緒じゃないの?(ボソッ」

友「お前は体育館の外観だけでコーフンしそうな奴だな。」

 失敬な奴だ、俺は変態ではない。

男「―というか、先生は保体の教科書を音読させようとしたんですかっ!!スケベィ!」

教師「お前に言われたかないわっ!私だってセクハラでお前を事案定義することだって出来るんだぞ!」

男「人を性犯罪者みたいに・・・っ!!音読ぐらい、俺以外にも出来る人はいるでしょうが!」

教室全体「むしろお前が適任だろう」

教師「・・・大体が恥ずかしがって小声だよ。」
教師「お前みたく、起き抜け一発目で青年誌熱読するやつなんざ稀だ。」

男「ぐぬぬ・・・。」


10 名前:書き溜めする時間をください・・・ ◆N1RGqRourg[]投稿日:2011/11/09(水) 11:31:25.49 ID:5l5SxB660

―キーンコーンカーンコーン…―

友「あ・・・」

教室「がっ・・・」

男「ぬ・・・」

教室全体(しら~・・・)

 なんだこのアウェー感・・・
いつもより薄いじゃないかっ!!

男「今回はこのぐらいにして差し上げますよ!うぉっほっほ!」

教師「お前のお陰で、人としての器が大きくなってゆく気がするよ。」

 そんな事を仏の表情で言わないでほしい

友「うぉーい!男~!購買のパン売りきれっぞぉ~!!」

 窓の外から友の呼ぶ声がした。

男「・・・ここ何階でしたっけ?」

教師「3階さ。」

男「・・・おつかれさまでーす。」

教師「お前と友のコンビネーションはやっかいだなぁ。HAHAHA!!」
教師「まぁいいや、はい、キリー、レー、行ってこーい」

 友よ、お前の素早さはどうなっているんだ。

そんな雑念にとらわれながら、俺は教室を出た。

案の定パンは売り切れていた。


11 名前:お仕事行ってきます ◆N1RGqRourg[]投稿日:2011/11/09(水) 11:33:19.19 ID:5l5SxB660
ぽちぽちと続けていきます。

書き溜めする時間がないので、これからも時間がかかります。

次は今晩中に書く予定です。


12 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)[sage]投稿日:2011/11/09(水) 16:53:30.07 ID:o0OmQTzDO



13 名前:みかんの筋を必死に剥いてたら遅れた ◆N1RGqRourg[]投稿日:2011/11/09(水) 22:46:35.29 ID:5l5SxB660

男「いや、案の定ってなんだよ…」

 確かに俺は考え事はしていた、だがそれでも人並みの歩行速度だったのだ。

男「この学校のパン買い猛者どもはどんだけ脚が速いのか…」

友「お菓子パンみたいやね~」

 俺の真向かいに座りミルクパンをもふもふといただいてやがるコイツは、
いつの間にか購買部にたどり着いている素早さの甲斐あってか一番乗りだったそうな。

友「んぐんぐ)んくっ、あれ?今の巧くなかった?」

男「シラネェよ」

 俺は菓子パンを買えていないのだぞっ!

友「うん、わかんなかったならいいや。そいでさ―」
友「”今日はどうするの”?」

 突然だが、俺には特別な能力がある。

ありていに言えば、身体一つでタイムトラベルできるのだ。

友「―っても決まってるか。食堂が閉まっても未練たらたらしく減っていないお昼代を持て余してるみたいだし?」

 そう、俺は未だにお昼を食べていないし買ってすらいない。

それはひとえに菓子パンに固執しているということなのだ。

そんな些細な欲望を満たすにも、俺の持つタイムトラベルは安易に役立つ。それほどにお手軽だがしかし―

男「うぅむ…」

―大きなリスクがまだみつからないのがネックだよなぁ…―

友「やっぱ悩む?」

男「うん…正直、反則過ぎるだろ?」

友「その考えは正しいと思うよ。まぁ一応、レシート渡しておく。」

 別にこいつに集られている訳ではない。

むしろ俺がこいつに集っている。


14 名前: ◆N1RGqRourg[]投稿日:2011/11/09(水) 23:02:39.60 ID:5l5SxB660

 校内でレシートの発行はいいのだろうか?と思いつつ、簡素な購買部のレシートを貰う。

友「あ、ついでに言っておくと、次の授業は”保健”をとっぱらった”保健体育”だからな。」

男「?……ホケンをとったホケンタイイク…??あ、あぁ。なるほど。」
男「―おいおい、そりゃあ益々飛んでパン買わなきゃならんじゃないか。」

 というか、昼休み前に保健体育の授業やってたの?スケベィ!

友「変な顔になってるぞ~。」
男「フガッ!プガッフガガ~!!」

 妄想の最中だというのに、レシートをくれたこいつは俺の鼻をひっつかみやがった。

男「ハガヘッ!!ハッハハトハガフンハッ!!(離せっ、さっさと離すんだっ」
友「あぁーはいはい。(パッ」
男「プヘッ…意外と痛いな。」

男「それで、また訊くけどさ…」
男「お前はそれでいいのかよ?」

友「たはっ、またそれぇ?」

 照れ隠しのように破顔一笑してから、友は頭をぽりぽりとかいた。

俺の能力、タイムトラベル――正確には違うが――の効果を感じるのは主観のみなら俺だけのはず。


ならば、俺の能力を唯一知っているこいつは、俺が時間を飛ぶたびにその間の自分の記憶が無くなる―

つまりその間の人の記憶や感情を俺が殺すような行為を、こいつは容認しているということになる。


15 名前: ◆N1RGqRourg[]投稿日:2011/11/09(水) 23:15:43.26 ID:5l5SxB660

友「別に構わないよ、今のボクと記憶が違うのなら、それはどうしたってボクとは言い切れないから。」

 照れくさそうに言ってるけど、それって答えになってるのか?

男「…お前がそうならいいんだけどさ。」

 クシャっと、今貰ったレシートを握り締める。

拳の中に熱を感じる。
レシートが蒼い光になってどこかへさらさらと飛んでゆくイメージを視る。

男「なら多分、今のお前とはこれでオサラバだ。」

友「いつも言ってるよね」

 ぐっ・・・正しいが正しくないぞその指摘。

友「まぁ、いつの時間だろうと、ボクがそこにいればボクはボクだと思うし。」

男「抽象的かつテキトーな奴だなぁ……」
男「それじゃあな。菓子パンはおいしくいただいてくる。」

 俺は、その時間から消えた。


16 名前: ◆N1RGqRourg[]投稿日:2011/11/09(水) 23:16:24.89 ID:5l5SxB660

友「別に構わないよ、今のボクと記憶が違うのなら、それはどうしたってボクとは言い切れないから。」

 照れくさそうに言ってるけど、それって答えになってるのか?

男「…お前がそうならいいんだけどさ。」

 クシャっと、今貰ったレシートを握り締める。

拳の中に熱を感じる。
レシートが蒼い光になってどこかへさらさらと飛んでゆくイメージを視る。

男「なら多分、今のお前とはこれでオサラバだ。」

友「いつも言ってるよね」

 ぐっ・・・正しいが正しくないぞその指摘。

友「まぁ、いつの時間だろうと、ボクがそこにいればボクはボクだと思うし。」

男「抽象的かつテキトーな奴だなぁ……」
男「それじゃあな。菓子パンはおいしくいただいてくる。」

 俺は、その時間から消えた。


17 名前: ◆N1RGqRourg[]投稿日:2011/11/09(水) 23:34:15.57 ID:5l5SxB660

―――――。

 蒼く、淡く輝く砂粒。
蒼い大きな渦がその集合体。

 俺のタイムトラベルには、いくつかの制約がある。

その内で一番大きい物が、”手元に何らかの情報がないと時間を飛べない。”ということ。

そして更に、その情報が記録された時間と場所にしか行き先は選べない。


 発掘大好きな考古学者などは重宝しそうな制約だが、
未来に帰る為にはかなりめんどくさいプロセスを踏まえなければならないので、俺は何千何万年も時を越えるつもりは無い。


 どこか遠くの渦の中から、いくつかの蒼い光が漏れ出て行き、遠いどこかの星の表面で集まる。


その光が、サラサラと握り締めたレシートの形に寄り集まってゆくイメージ。

足先から頭へと下降感が走り巡り、足元に地を踏みしめる痛みを感じるとともに、蒼い光のレシートはサラサラとまた崩れ去ってしまった。


 ゆっくりと息を吐く。

正直辛い。

時間を飛ぶことがじゃない。

飛ぶ時に椅子に座っていたので、今は完全に空気椅子なのだ。

男「フッ………フゥッ…フフゥワツ!!」

 体に限界を感じ、眼を見開いてゆきながら、思いっきり後ろへと倒れた。


18 名前: ◆N1RGqRourg[]投稿日:2011/11/10(木) 00:42:29.35 ID:lOYosIw90

 受身はカンペキにっ!

と、体を丸めてゆくが、すぐ後ろに壁があった。

男「あだっ!!っつぅ」
友「たはっ、大丈夫?」

 購買部のおばちゃんからおつりとレシートを受け取りながら、苦笑しながらも心配そうに俺に振り返る友。

心配はいらないと手を振って応えるが、正直声が出ない。

おばちゃん「おぉやまぁ、今日も巧く隠れたもんだねぇ。」
おばちゃん「友ちゃんから今日も隠れてるって聞いてたけど、いつも全然わかんないんだもんねぇ」

男「は、ハハハ…(ゲホッ」
友「ホラ、立てるか?」

 友の差し出す手をつかみ、助力と一緒に立ち上がる。

男「はぁ…はぁ…空気椅子は辛いなぁ……おばちゃん、クリームパン一つ。」

 立ち上がるときの勢いをそのまま購買部の受付にぶつかるようにしがみつく。

おばちゃん「無駄にがんばったねぇ!飲み物おまけしたげるわ!」
男「おぉ…太っ腹!」
おばちゃん「倍額取るぞ」
男「スリムウェストッ!!」

 デレデレと顔を綻ばせながら、購買のおばちゃんはカフェオレを2つくれた。

男「2つも良いと申すか…かたじけない…っ!!」

 言いながら、クリームパンの会計をすませた。

教室でゆっくり味わうか。

小銭を尻ポケットにつっこんで、友と連れ立って歩き出す。

男「おーおー、パン買い猛者があわてておるわい!」
友「お前のせいでありつけなくなる奴が一人くらい出るかもな」

男「ぐっ……それを言うなよ…」

友「でもまぁ、よかったよ。今日も来てくれて。」
男「?、なんで?」
友「「男が隠れてる」って購買のおばちゃんに嘘吐くところだった!」
男「え、いやいやいやいや!予定嘘もいいところだろ?!」

 どうころんでも嘘つきになるぞ、俺は隠れてなかったからな。

男「なんかもっとこう……友情味溢れる話かと思ったのに…」
友「友情味?たとえば、どんな?」
男「「一人で食うより百倍いいからなっ!」とかさぁ…」

友「それは今でも難しいんじゃないかな……たはは」

男「えっ…?」

 バツが悪そうに、友は俺の手元を指差した。

互いに立ち止まって、その指示の先を俺はゆっくりと眼で辿った。

そこには…――

男「なにも……ない…?!」

 そんなまさか!わざわざ昼食のために時を越えてきたというのに!

これがバタフライ・エフェクトというものなのだろうか。


男「これが…タイムトラベルのデメリット……!」
友「いやいや、違う違う。絶ぇ~っ対に違ぁ~う。」

友「お金払うだけ払ってパンを受け取ってなかったじゃないか。」
男「悪い、ちょっと急用を今お前に知らされた。行ってくる。」

 言い切るのもまどろっこしくて、言葉の途中から駆け出していた。

友「…走れエロスか……食欲なのにな。」


19 名前: ◆N1RGqRourg[]投稿日:2011/11/10(木) 00:53:30.30 ID:lOYosIw90

―――――。


男「ここ数十分で、この道三往復目だぞ…」

男「まぁ。主観だけだけど。」


 パン買い猛者勢が一通り購買部の在庫を片付けた直後、
震える声でおばちゃんに話しかけた今しがた。

おばちゃんの馬鹿笑いと共に忘れ物のビニール袋を贈られ、俺はまたまたこの廊下を通るのである。

男「パン買い猛者勢は凄い勢力なんだな…」
男「ラッシュが終わった途端、閑散としすぎだろうこの廊下…」


 昼休みは誰もが通る道だというのに…

などと嘆かわしく思いつつ、教室にて待たせる友のことを申し訳なく思っていると――


 「そこまでです、タイムトラベラー。」


 ―勝気な雰囲気の見知らぬ女生徒が、俺の前に立ちはだかった。



 
26 名前:お風呂で逆上せて遅れた ◆N1RGqRourg[sage. saga]投稿日:2011/11/10(木) 23:17:50.23 ID:lOYosIw90

―――――。


女「――聞いていますか?」


 一見さんの癖に俺がタイムトラベラーだと見抜いたこの生徒 ―名前は女というそうだ― は、
「ここでは人目につきます」と、場所を変えようと薦めてきた。

 もちろん俺は二つ返事で快諾。

だって、―――こんな機会そうそうないだろうっ?!


男「モチロン!聞いてる聞いてる!」

女「でしたら、私が言った様にこの手を離して欲しいのですけれど。」

 手を離して欲しいと何度も言われたが、そんなものは却下だ。

男「どこで俺の能力知ったの?!教えて教えてっ!!(ぶんぶん」

女「なぜっ、そんなにっ、よろこんでっ、いられるのっ、ですかっ!」
女「―あぁっ!もう煩わしいっ!!」

 喜びのあまり、握り締めた彼女の両手をぶんぶんと振り回してしまったが、
そのせいか手を振り払われてしまった。

そんなことよりも、彼女の疑問に応える事を優先した。

 なにせ一番言いたかったからっ!

男「俺と同じ能力でも持ってたら嬉しいじゃないか!」

 ずるっ…と何も無い場所で女が足をくじいた。器用な奴だ。

女「貴方には、危機感というものが欠落しているのですか?」
男「危機感なんかより、孤独感が、好奇心が、ワクワクが勝っただけさ!」
女「…孤独感?」

 その一言を反芻し首をかしげる女に、バッと両手を開いて心から漏らす。

男「ん~……ぅっと、ずぅ~っと待ってたんだ!!」
男「俺が、"俺だけがこの時間で一人ぼっちじゃない"って教えてくれるような奴をさ!」

女「………へぇ」

 身を引き、警戒の姿勢を解かないまま、女は感心したように漏らした。

女「個人的には、同情致します。けれど、貴方には処罰を与えねばなりません。」


27 名前:お風呂で逆上せて遅れた ◆N1RGqRourg[sage. saga]投稿日:2011/11/10(木) 23:37:12.35 ID:lOYosIw90

男「あだ…素直に喋ってもごまかせなかったか……」

 なんとなく、ほんとになんとなくだけど、こいつからは警察のような厳かな雰囲気を感じていた。

多分、タイム○トロールとかそんな身分なんだろう。
だとしたら、毎日のように時間を飛び越えて面白おかしく過ごしている俺はなんらかの処置を施されるはずだ。


男「…危機感はあったさ、アンタが警察みたいな組織だったら、俺はただじゃ済まないんじゃないかってね。」
男「さぁ、なんでも言ってくれ。俺は単純に計算して3年分程の人の記憶を潰して過ごしてきた。」

男「今の間に覚悟は出来ている。」

 決まった!
俺の最期、カッコ良く決まったよ!!

女「…観察していた時とはずいぶん性格が違うのですね。」
男「実はこっちが素だよ。あんまりいろんな人と仲良くしたくないんでね。」
女「…口が軽いのは変わりませんが。」

 ぐっ…予想以上に容赦ないな…

男「それで…?処罰ってのは…」
女「そうですね……う~ん―」


女「では、タイムトラベル禁止で。」


 ………

男「………」

女「………(パラパラ…」

男「えっ」

女「えっ」

 えっじゃねぇよ、
女は手に持っていた羊皮紙のようなB4サイズの分厚い本を開いていた。

男「それだけ?」

女「それだけとは?」

男「えっ、あっ、いやいや、処罰ってのだよ!」

女「えぇ。記録を見るに、使用頻度の高さからしてかなり時間渡航に依存しているものと判断し、」

 パタン…とその本を閉じ―

女「やめさせれば十分な処罰になるかと思いまして。」

 とっても精神的…

男「いやいや!上司とかに相談しないの?!」
女「上司?そんなものは居りませんが。」

 アンタも大概口が軽いねぇっ!


28 名前: ◆N1RGqRourg[sage. saga]投稿日:2011/11/10(木) 23:55:06.65 ID:lOYosIw90

男「そういうのってホイホイ口にしていいことなのか?!」
男「ってか、それ以前に上司が居ないって……横社会企業かよ…」

女「……?」


 眠そうな瞳で首を傾げやがった!
俺がこいつから感じた緊張感はなんだったんだ…

男「わかんないならいい…」
女「そうですか。(パラッ…」

男「………」
男「…いやちょっとまて、前者だけは答えて貰おう。そんな重要なこと、ペラペラと喋っていいのか?」

女「?…あまり重要な事ではありませんでしたが。」

 パキッ!と、頭の片隅に蒼い銀河のイメージが割り込んだ。

 「―こうすれば納得していただけますか?」

 思わず頭を抱えそうになった瞬間、後ろからいきなり声をかけられ、肩で思いっきり驚いてしまった。

 遅れて跳ね返るように振り向くと、


―そこに女が居た。


男「………あぁ、なるほど…」
女「ご理解いただけましたね?」
女「こういうことですので、並大抵の人間風情の運動神経では、私の不意を突いたり組み伏したりは出来ません。」

男「……ナチュラルスケベィ」
女「遺憾です。」


29 名前: ◆N1RGqRourg[sage. saga]投稿日:2011/11/11(金) 00:06:53.16 ID:UlAwgUiM0

男「…お前、今未来から来ただろ」

 俺の指摘に女は、眠たそうな半眼を真ん丸く見開いた。

女「よく理解できましたね、予想外です。」
男「言っただろ、俺はこっちが素なんだ。」
女「ご指摘の通り、私は数十秒後に突然、私に向かって飛び掛ってきた貴方から逃げる為、そして貴方を納得させる為に時間を飛びました。」
男「いつぞやの俺がご迷惑おかけいたしましたぁっ!!(ドゲザァッ」

 疑問に思うのはわかるが解決策が強引過ぎるぞ消えた時間の俺!!
誤解を与えかねないだろうがっ!!

女「構いません。観察していた時からそういう人だとは理解していましたから……」
女「でも、少し怖かったです…」

男「本当にごめんなさい。」


30 名前: ◆N1RGqRourg[sage. saga]投稿日:2011/11/11(金) 00:12:12.62 ID:UlAwgUiM0

男「…お前、今未来から来ただろ」

 俺の指摘に女は、眠たそうな半眼を真ん丸く見開いた。

女「よく理解できましたね、予想外です。」
男「言っただろ、俺はこっちが素なんだ。」
女「ご指摘の通り、私は数十秒後に突然、私に向かって飛び掛ってきた貴方から逃げる為、そして貴方を納得させる為に時間を飛びました。」
男「いつぞやの俺がご迷惑おかけいたしましたぁっ!!(ドゲザァッ」

 疑問に思うのはわかるが解決策が強引過ぎるぞ消えた時間の俺!!
誤解を与えかねないだろうがっ!!

女「構いません。観察していた時からそういう人だとは理解していましたから……」
女「でも、少し怖かったです…」

男「本当にごめんなさい。」


31 名前: ◆N1RGqRourg[sage. saga]投稿日:2011/11/11(金) 00:35:37.75 ID:UlAwgUiM0

―――――。

男「冷静に考えて、あいつが時間を越えてきたのは良かったんだろうか?」
男「……いや、なにも言うまい。」

 どう転んでも死んだ俺が悪いのだ、
いきなり飛び掛るなんて…


男「ハァ……(パラ…」
友「昼休み中に教室でペンギンク○ブを堂々と読みながら溜息を吐く君は一体なんなんだ。」
男「研究だよ…(パラッ…」

 どういった挙動がそう捉えられかねないかのな…

友「(聞きたくなかったな)」
男「俺は今、読心術を会得したのか?(パタン」
友「………(ジー…」
男「………」

 そんな大層な術はいらなかったかな。

こいつの視線の先を見たら、何を求めているのか安易に理解できた。

 手に持ったクリームパンを動かす、と、友の視線がそれを追っていく。
動かす、追う。動かす、追う。

男「……(楽しいな」
友「イジワル…」

 涙目でそんな事を言うなよ。

童顔だから変にドキリとさせられる。

男「半分やるよ。」

 クリームパンを半分に割り、食いちぎられていない方を渡そうとするが―

友「ちょっとでいいよ(パク」

 差し出し損ねたきれいな半月が俺の手元に残った。

男「へいがーる」
友「……?なんか、はじめてこういうこと成功した気がする。」
男「…………。」

 そりゃあ、お前がそんなことする度に何度も時間を越えてやりなおしてますからね。

友「ふふん、まぁ嫌われてないみたいだしどうでもいいか!」

 おまえさん幸せそうですね。

教室全体「……………」

男「………」

 これは…案外あの処罰は効くかも知れない。


32 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)[sage]投稿日:2011/11/11(金) 00:39:58.85 ID:oXZItSoQo
友女?


33 名前: ◆N1RGqRourg[sage. saga]投稿日:2011/11/11(金) 01:41:19.66 ID:UlAwgUiM0

―――――。

男「(右、左、前方、…)(キョロキョロ」

男「今だっ…(タタタタッ」


女「そこまでです、タイムトラベラー!」男「またかよォッ?!」


 午後に入ってからが、俺の本当の地獄だった。

女が下した俺への処罰で、友からの相次ぐアプローチを捌ききれずにメンタルダメージ。

そして、意外と心配性な女自身のダイレクトアタック。

 今日つける日記の予定は、順調にいつもより長くなっていった。


男「おまえ、いい加減にしろよ!」

女「と、いいつつ私がボロを出してもいいように、と人通りの少ないルートを選ぶ貴方は紳士気取りですか?」
男「余計な気遣いさせてんのはお前だっ!なんで現われる度に俺の正体を叫ぶ?!」
女「嘘は言っておりませんが…?」
男「それが問題なんだよぉっ!!」
 
 裏庭の清掃時に、気になる掲示物へと近寄った時。
 トイレで用足ししようと、ジャージのウェストバンド部分に付けられたネームスペースに手をかけた時。
 誰かの落し物を拾った時。
そして今―

 この女、事あるごとに「時間跳躍はさせません!!」と殴りこんでくるのだ。

男「心配しなくとも飛んだりしないからもう叫ばなんでくれ…」
女「そういいつつ、その今持っている本に記された情報を辿って過去へ飛ぶつもりですね。そうはさせません。(パラッ」

 勇ましく、あの本を開いて「かかってこい」といわんばかりの空気を醸し出す女。

男「借りてた本を返しに行くだけだっての…」
女「はっ、つまり図書室にて古い本を探すつもりですね。そうはさせません。」
男「………。」

 同じことを繰り返す女に、この話題を続けてはいけないという天啓を得た俺は、話をはぐらかそうとしてみる。


男「その本はなんなの?」
女「人の行いを、時を越えて記す書物です。」
男「(おっそろしいものを…)…それで何するつもり?」

女「貴方の恥ずかしい行為のみを抽出して音読します。」
男「えぇいっ!本の虫という名の害虫めっ!!」

 こいつは、飛ばないタイムトラベラーを社会的に抹殺するのが仕事なのだろうか。
ちっこい体躯に似合わず、こいつの声はどこでも良く通るので迷惑だ。

男「こんなことされても俺は飛んでないぞ!どうだ?!これをしばらくの信用にしてはくれないかっ!!」

女「いいでしょう。」
男「即決?!」

女「ただし、しばらくの…です。」
男「あ、あぁ!それまでに別の信用を用意しておこう…」
女「また私を襲おうとしたら、過去の貴方を叩きます。」
男「絶対しないって…」

 現にこうして距離をとり続けている。
物の本によると、ある種の男性は、女性に近づいただけで刑事事件として取り扱われるそうだ。

 こいつが延々と距離を詰め続けてくるのであまり意味は無いが…



34 名前:夢中で打ち込んでいたら長くなった、読みにくくてゴメンネ ◆N1RGqRourg[sage. saga]投稿日:2011/11/11(金) 01:47:16.96 ID:Bq3stNKz0

 …図書室の前でグルグルと回り続ける二人組み。
端からみれば奇妙だが、放課後の校舎には生徒は滅多にいないので心配無用だ。

女「…ですが、研究と称してあの本を読んでいたではないですか……溜息を漏らすほど熱心に…」

男「?!ま、まって?!何の話……あぁっ!!あれか!あれは真逆の勉強だ!!」
女「真逆……私にはそんな趣味はありません…ぴ、ピンヒールだなんて履きませんから…」
男「真逆のベクトルが違う!!というか意外と詳しいなお前!!」

 頭二つ分程小さなこいつを女王様と呼ぶつもりなど無い。
というか、誰にであろうとそんな敬称を使うつもりは無い。


女「”お前”ではありません。私には”女”という名前があります。」
男「?!」
女「貴方はすこし女性に対して「お前」だの「アイツ」だの「アンタ」だの言い過ぎです。」
男「えっ、あぁ、うんごめん。なさい…女さん…」
女「よろしい。貴方のそういった部分は良評価に値します。」
男「あ、え、はい。………って、違う!」

友「何騒いでんだーい?」

 あまりに声を出しすぎたせいか、図書室から友が顔を覗かせてきた。

男「あ、いや悪い。気にしないで。」
友「一人で騒いでたんかい?」
男「えっ」
友「えっ」

 周りを瞬時に見回す。

男「あ、あぁ!うん、一人なんだぁ~ははぁ~。すっごく胸糞悪いことから、タイムトラベルで逃げてきたからさ~ハハハハハ」
友「?………」

 しまった、逆に怪しかったか…?

友「ん~…時間を飛んで今に着いて騒いでたって事は……」
友「もしかして、その本に落書きでもして、それを辿ってきたりした?」

 よかった!こいつ考え過ぎてる!

男「あ、あぁ!そうそう。ごめんな、図書委員なのに迷惑かけて。」
友「ん~…バッッッカヤロ!!なんて言うほどでもないっしょ?ありふれてるし。」
男「あはは、あ、あとついでに、いつもこいつだのそいつだの言ったことも含めてゴメン!」
友「「コイツ」「ソイツ」って…本人相手にしてない時の言い方だよね」

男「あ」

友「ぷっ」
友「まぁいいや、意外と気にしてたみたいだから許してやろう。」
友「たはっ、この本の返却はボクが済ましておいてあげよう。」
男「…ありがとう」



35 名前:はい、友は女です。 ◆N1RGqRourg[sage. saga]投稿日:2011/11/11(金) 02:19:46.16 ID:UlAwgUiM0

―――――。

友「もしかして、さ…」
男「うん?」
友「ボクの仕事が終わるまで、いつも待っててくれてる?」

 図書室で適当な本を読みながら時間を潰していたら、
受付にいた友がローラーの付いた椅子に跨りながらスイスイとこちらに回り込んできた。

男「…どうだろうな。」
友「ふふん、寂しい奴め。」

 意外と傷つくな。

男「そういうお前……は大丈夫だな。委員仲間とも仲良いし、教室でも浮いてないし。」
友「あ…気にしてた…?」
男「そのことを今おま…友に気付かされたっす。」

 自己保身やら慈善的な判断やらで、俺はあんまり友達を作らない。
でしゃばりたがりを演じながら、その実誰よりも秘密を抱えている。

男「…真逆のものが合わさり最強に見える……」
友「そんなこと言ってるから友達が少ないんだよ。」
男「ウッセェ…ズズッ!きにしちゃいねぇやぁぃ!!」

友「大号泣じゃないか、悪かったよ…はい、君のハンカチ返すから。」
男「アリガド……ズビズバー!!って…これ探してたやつじゃねぇか。友に貸したまんまだったのか。」
友「色々助かったよ、ありがとう。……色々と」

 な、なんだ!その含みのある言い方は!

友「ふぇーっふぇっふぇっふぇっ!!」
男「俺のハンカチで何をした…?」
友「そこの受付でこぼした牛乳拭いた。」

男「クッッッッッセ!!!!!」

 友は図書委員と俺のハンカチを何だと思っているのか。

友「喜ぶかと思って」
男「喜ぶかぁっ!!」
友「だって男がよく読んでる本だと、よく女の子が牛乳被ってるじゃないが。」
男「それは教室限定での読み物だろうがっ!!」
男「それに、ビショビショの受付台と男物のハンカチを見て誰が喜ぶっ?!」

友「妄想たくましい人が…」
男「なぁ、近い内にあの本全部処分するからその考え方は辞めようよ。」

 俺が悪かったから…


36 名前:妄想たくましい人です。 ◆N1RGqRourg[sage. saga]投稿日:2011/11/11(金) 02:33:07.28 ID:UlAwgUiM0

友「さて!なら一緒に帰ろうやァ、あにさんよォ。」

 パンッと手を打ちながら、友はいつものセリフを言い放った。

男「あれ?仕事は?」
友「最後まで残ってたのは牛乳拭いてたボクだけだよ~」

 自分で仕事増やしてたんじゃねぇか

男「おっし、じゃあ送ってくよ。」

 マフラーを首に巻きながら、開き放した本を片付ける。
高い場所にある窓から見上げた空は、白い画用紙に筆で水を広げたように、うっすらと曇っていた。

男「図書室のあんな位置にあんな窓があってカーテンすら閉めていないなんて…」
友「君って細かいよね。」

 よく似た柄のマフラーを口元まで巻き込んだ友が、本棚の影からそんなことを言う。

男「何を言う、アルプスのコヤリの上位の広さはあるぞ。」
友「畳一畳にも満たないのか」
男「ばか者、空がコヤリを握り締めてこの星を支えておるのだ。」
友「タイムトラベル以外だとすぐふざける~」
男「まぁ気にするな。」

 俺は俺の悩みで精一杯みたいなんだ。


37 名前: ◆N1RGqRourg[sage. saga]投稿日:2011/11/11(金) 02:49:58.56 ID:UlAwgUiM0

 友が準備室の戸締りをし終わるまで、出口でぼぅっと待っていた。
家に帰れば考えなければならない事が沢山あるな。

男「まずは日記にセーブでもするかぁ?」

 俺は毎日2回以上の日記をつけている。

その理由は単純で、何かの手違いで予想以上に時をさかのぼってしまった場合、日記を辿って未来に帰るのである。
理由はわからないが、手持ちの物は過去に飛んでも未来の形のままなのだ。
 タイムリープのようで、微妙に違う。所持品のみ引き継いで過去に現われる。
だから俺は、この力を大雑把にタイムトラベルと呼んでいる。

友「うぃ~っす」
男「うぃ~す」

 友が、鍵を持った手を小さく掲げながら走り寄ってきた。
小さなハイタッチを交えながら、友の鞄を手渡した。

男「鍵を持ちながらするもんじゃねぇなぁ。」
友「痛かった?」
男「ちょっとだけ。」

 季節は冬だからか、肌の痛覚が敏感になっているのだ。

二人並んで図書室を出ようとしたところで、友が貸し出し受付に振り返った。

友「…下品な牛乳…ケケケケッ」
男「謝ればピュアな頃の貴女に戻っていただけますか?」
友「無理な相談だ~」

 てっぺんがうっすら赤くなった鼻をマフラーからみせて、ススッと鼻を鳴らす友。
寒そうなので、うなじの辺りでマフラーを蝶結びにしてやった。

友「おぉー、かわいい~?」
男「さて、帰るか。」
友「おぉいちょっとまてぇい!!」

 家に帰ったら、俺が友をどう思っているかも整理しなけりゃならんかもな。


38 名前: ◆N1RGqRourg[sage. saga]投稿日:2011/11/11(金) 02:51:55.88 ID:UlAwgUiM0
今回はここまで~

次回からちょっとずつSFに寄っていきます。

書き溜めはあいも変わらずありません。


39 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(新潟県)[sage]投稿日:2011/11/11(金) 03:10:44.62 ID:GdfOIpX5o
乙!


40 名前: ◆N1RGqRourg[sage. saga]投稿日:2011/11/11(金) 15:00:36.89 ID:UlAwgUiM0

―――――。


 目の前で、小さな女の子が泣いていた。


男「どうしたの?」

 屈んで、目線の高さを合わせて話しかける。

 「友達がね…?忘れてたの……アタシのこと…」

 グズグズと鼻をすすりながら、嗚咽をこらえて言う。

男「そっかぁ、ひどい友達だなぁ…」
 「悪く、言わないで…?」

 腫れて真っ赤になった眼で見上げられて、ドキリとする。

男「あ、あぁ、ごめんごめん。」
男「…とりあえず、はいコレ。」

 ハンカチを渡す。
牛乳やら俺の鼻水やらが染み込んだアレではない。
アレを失くしてから、新たに買った同じ柄の新品だ。

 「グスッ……ありがど…、ございます…(スンスン」

 そういって受け取るも、それで涙を拭おうともしなかった。


男「――あぁ~、まぁ知らない人に渡されたらそうだよな。」
 「ね、ねぇ…おじさん……?」

 少しだけ落ち込んで空を見上げていると、小さな女の子は俺の袖を申し訳程度にひっぱった。
ハンカチで、涙でびちゃびちゃの手を拭っていたらしい。

男「ん?どうしたの。」

 「あのね…」

 涙も嗚咽も飲み込んで、震える声でその子は言った。

 「友達に、…なってくれませんか…?」

 ワシャッとその子の頭をなでまわす。

 「わっ!わわっ?!おわわわっ!!」
男「友達くらい、なってあげるよ!」


 ―おかしい。

いつもの俺ならそんなことは言わない。
ならこれはなんなのか、―それはうっすらとわかっている。

 これは夢だ。

女「何をしているのですか、ロリコン。」


41 名前: ◆N1RGqRourg[sage. saga]投稿日:2011/11/11(金) 15:37:01.81 ID:UlAwgUiM0

―――――。

男「夢じゃないっ?!――あでっ」

 予想通り、夢だった。
飛び起きた反動でベッドから落ちる。

男「―っててて……今、凄い飛んだなぁ」

 ベッドの中央で寝ていたはずなのに、ノーバウンドで床に落ちた。

男「………」
男「―以外、と、俺は女を怖がってるみたいだな。」

 コンコン…と、ベランダの窓が小突かれる音。

男「……鳥か。」

 ―コンコン―

男「今何時だろう」

 ―トントコトントコトコトトンッ!!―

男「…まだ学校までは時間あるな。」

 ―キュキュキュキュキュ~~ッ!!―

男「?!」

 窓ガラスを爪で引っかく音が聞こえた。
飛び上がってベランダのカーテンを開ける。

男「うおっ眩しっ」
女『アホですか。』

 俺はついに、悪夢の実体化まで会得してしまったのだろうか。

女『朝早くに失礼致します。』
男「まぁ構わんが…(ガラララ…」

男「さぶっ!?」
女「貧弱ですね、お邪魔します。」
男「ガラララ…バタン)玄関から来いよな…」
女「ご家族に迷惑かと思いまして。」

 父親も母親も、仕事の関係で中々帰ってこない。そして俺には兄弟が居ない。
なので今は家に俺しかいないのだが――

 ?!、ま、まてよ……
家に若い男女が二人だけ……これは青年誌的に非常にテンプレートな展開ではないだろうか…?!

こ、このままでは、意外と心配性な女が過去の俺へ制裁を加えかねない…

 コンマ2秒でそこまで考えた俺は、パソコンデスクのキャスター付きの椅子を用意した。

男「どうぞどうぞ。」
女「ベッドに失礼します、窮屈なのは苦手なので。」

 言いながらベッドの縁に腰掛けた女。
こいつ!!誘ってやがるのか?!?!し、しかし俺には昨日心に決めた人が――

女「お訊きしますが、時間跳躍を行いませんでしたか?」
男「へ…?」

 たったひとりの大戦争中に話しかけられ、少しほうける。
が、急いで持ち直した。

男「…いや、してないけど。なに?もう免罪符は期限切れ?」
女「そういうわけでは…ありますね。えぇ。まぁ知らないならいいのです。(パラ」

 遭遇すると一分以内に本を開く奴だな。


42 名前: ◆N1RGqRourg[sage. saga]投稿日:2011/11/11(金) 15:47:29.03 ID:UlAwgUiM0


男「…その本、名前はあるのか?」
女「特に銘打たれておりませんが、以前”閻魔帳”と呼ぶ人が居ましたね。」

 言いえて妙だな、中身を見たことはないが。

女「ただ、だとしたら酷いシステムですよ。」
男「?…なにゆえ?」
女「いいましたよね、コレは時を越えて人の行為を記す書物。―」

女「―要は、パラレルワールドの出来事ですら記されるのです。」

女「そんな理不尽な本を読んで、覚えの無い罪で地獄に落とされたら堪りません。」
男「はぁ、まぁ確かに。」

 お前が言えた事かと思ったが口にはしない。

女「なので私は、コレを”バタフライ・サンプル”と呼んでいます。」
男「ばたふらいさんぷるぅ?」
女「バタフライエフェクトをサンプリングする本、という意味です。時間渡航者を取り締まるにはもってこいなのです。」
男「ふ~ん、つまり俺は今、丸裸なのか。」

女「……貴方はすぐにそちらの方向に話を持っていきますね。」
男「待ちたまえ、とても遺憾だ。」

 どちらかといえばコイツが一番持っていっている気がするのだが。

男「俺のことしか書いてないの?」
女「今はそうですね。しかし、知りたい人の事ならばいくらでも表れます。」

 なんとなく、友が今どうしているかが気になった。

女「……スケベな顔をしていますね。」
男「……否定はしない。」
女「おや?今、パラレルワールドでは貴方がこの本を強奪して熱心に読みふけり始めたと書いてありますね。相手は…(バタン」
男「読まなくていい。」
女「残念です。」


43 名前: ◆N1RGqRourg[sage. saga]投稿日:2011/11/11(金) 16:02:55.80 ID:UlAwgUiM0

男「なんとな~く察しはついてるんだけどさ…」
女「はい?」

男「その本で、自分のことは見たりしないの?」
女「貴方は、この本を手にしても尚そんな恐ろしいことを言えますか?」
男「…どうだろうなぁ」

 むしろ、人の事を読まないと思う。
タイムトラベル以上のズルをして、俺が更なる卑屈にならないヴィジョンは想像できない。


女「1ページ読めばわかりますが、全ての人は常に生きるか死ぬかの選択をしています。」

女「選べる行為が100以上あっても、そのうち50は死ぬ道、残り50が生きる道になっていることがわかります。」

女「過去にのこした蟠りを紐解いて、あの時あぁしていれば生活がもっとよくなったかもしれない。という勝手な目算が真実だった時―」

女「――それまで歩んできた時間を全て後悔することになるのですよ。」

女「そうなって、すぐ傍にあった死の選択をした人を、この本越しにですが、いつも見ています。」

女「自分もそんな内の一人だとは……怖くてとても思いたくありません。」


 女の独白は、時間渡航者である俺だからこそ共鳴するところがあって、
そしてその辛さはこの苦しい想像をはるかに凌駕するんだろう。

 けど―

男「女さん、貴女は昨日、学校で俺に似たようなことしようとしましたよね。」

 恥ずかしい事を抽出して叫ぶとか何とか。


44 名前: ◆N1RGqRourg[sage. saga]投稿日:2011/11/11(金) 16:12:27.85 ID:UlAwgUiM0

女「理屈で追い詰めようとも、私にはこの本があります。敵に回さないでください。」
男「いや、うん、悪かった。気にしないでくれ。」

 得意のはぐらかしでうやむやにした。
だって反撃が怖いじゃないか!!今さっきだって恥ずかしい項目増やしたばかりなんだし!!

女「では――」

 そういって、女は俺にその本を寄越した。

男「へっ…」
女「貴方も、この本を読めば、タイムトラベルに慎重になるかと思いまして。」
女「私が持っていますので、ご自由なページをめくって下さい。」

 突然の出来事にしどろもどろになるが、その魅力的な提案に俺は半ば折れていた。
もともとタイムトラベルには慎重なのだ、これ以上何を失う?

 ゴクリと喉を鳴らし、俺はゆっくりと本を開いた。

男「さ、索引はいずこに?」
女「そんなものはありません。適当に開いて、知りたい人を思い浮かべてください。」

 ぱらぱらと紙を送り、自分のイマジネイションに集中する。

俺が知りたいのは…―

俺が知りたいのは…―


45 名前: ◆N1RGqRourg[sage. saga]投稿日:2011/11/11(金) 16:14:56.47 ID:UlAwgUiM0
行動選択。

>>48

1、俺のこと。

2、女のこと。

3、友のこと。

4、その他。


46 名前: ◆N1RGqRourg[]投稿日:2011/11/11(金) 16:18:22.69 ID:UlAwgUiM0
もう家を出ないと!

すいません、じっくり思いついた設定全部書こうかと思ったのですが、
ルート選択で端折らせていただきます。

じっくり全部読みたいという奇特な方がいらっしゃれば、4番を選択していただけると幸いです。


47 名前:今日は凄く疲れた ◆N1RGqRourg[sage. saga]投稿日:2011/11/11(金) 22:31:11.17 ID:UlAwgUiM0
失礼、
どなたもいらっしゃらないようなので、じっくりやっていこうと思います。

完結にはかなりの時間がかかると思いますので、ゆっくりやらせていただきます。


しかし、今夜の更新はお休みです。


48 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)[sage]投稿日:2011/11/11(金) 23:04:27.62 ID:QEVvNrppo
居るが安価じゃなく自分で進めてもらいたい
駄目なら安価下


49 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(山口県)[sage]投稿日:2011/11/11(金) 23:21:37.02 ID:XqzHSnW00
念のため4番を選択しておく

出版社とかに応募する場合と違って、ネット上に書くなら容量や時間の制限がないのでじっくりやってください


関連記事
[ 2012/02/04 18:13 ] 男「」or女「」 | TB(0) | CM(0)
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック:
この記事のトラックバック URL
http://yajirusiss.blog.fc2.com/tb.php/187-b3cc6d77

プロフィール

LACK

Author:LACK
うーっす
当ブログはノンアフィリエイトです
何か(不満、ご希望、相互リンク・RSS、記事削除、まとめ依頼)等はコメント及びメールフォームまでオナシャス!
SSよみたいかきたい!!!1
不定期更新で申し訳ない

カテゴリ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。
アクセスランキング ブログパーツ