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女「そこまでです、タイムトラベラー!」男「またかよォッ?!」3/5

女「そこまでです、タイムトラベラー!」男「またかよォッ?!」


女「そこまでです、タイムトラベラー!」男「またかよォッ?!」



93 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/15(火) 17:03:44.87 ID:C9NJm7sB0

―――――。

 入り口で、チケットをスタッフに渡す。
一部をむしり、半券を返してもらう。
一枚を友に渡し、もう一枚は胸ポケットになおしておいた。

男「まず何見るか」
友「ん~…展示順にみていこうぜ~」
男「まぁそっすね」

 ほんと、それもそうか。
床を見ると、道なりに矢印が引いてある。
土産屋を横手にそのまま進む。

男「…土産屋って、帰りによるもんだよな」
友「んん?そうかなぁ」
男「友は、真っ直ぐ寄って、饅頭とか買いそうだな。」
友「………」

 嫌な沈黙が流れた、あわてて友を見ると―

友「………」

 図星を突かれたというように、頬を赤く染めていた。

男「おまえさん…」
友「なっ、なんだ!きょ、今日は行かんぞ!!」
男「いやいや、帰りに寄ろうよ。」
友「う、うぐっ…」
男「あ、ほらほら、アンモナイト。」

 ごまかさんと、近くの小化石ブースを指差し、二人でそちらへ歩み寄る。




元スレ

女「そこまでです、タイムトラベラー!」男「またかよォッ?!」
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94 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/15(火) 17:20:00.48 ID:C9NJm7sB0

 ガラスケースの中、いくつも並べられた小さな石のなかに、
葉っぱやアンモナイトの形を見受ける。

男「古代生物の糞とか、絶対コレ持って時間飛びたくないな。」
友「うえぇ…そういうこと言うなよぉ…」
男「あぁ、ごめんごめん」

 こういうものを見ると、何故かテンションがあがる。
もしかしたら、俺を作った奴は考古学に興味あるように作りたかったのかもしれない。

男「なんでだろうなぁ…」
友「最近そればっかだね」
男「うむ、悩む事はいい事だ。」
友「そうかなぁ」

 意外と賢いこいつに言われると、なんだか不安になる。

友「ここで何分粘るつもりだーい?」
男「あぁ、悪い。次行こうか。」

 自然と、友から手を繋がれた。

男として情け無いなんて思うが、考えすぎか。


95 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/15(火) 17:21:15.58 ID:C9NJm7sB0
おっと、そろそろ家を出ないと!

それでは、続きはまた夜に更新するつもりです!


96 名前:ただいまもどりました ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/15(火) 22:52:50.36 ID:C9NJm7sB0

 となりのブースには、巨大なパネルが設置されていた。
そのパネルには、俺たちが回りこんできた左手から右手へ向かって、地球の年表が簡素に描かれている。

男「46億年…から結構な密度で描いてますな。」
友「そだね」

 それだけ言って、友は先へととっとことっとこ行ってしまう。
俺はといえば、年表を一つ一つ流し読みしながら、友を追いかけた。

やっと追いついた友は、地球年表のごく最近の部分、紀元前十数万年程度の辺りをじぃっと見ていた。

男「どした?親でも見つけたか?」
友「ちょっとぉ~」

 頬を膨らませながらも、年表から眼を離さない友。
仕方なく、その横にならんで、同じ部分を見てみる。

男「ネアンデルタール人、ホモサピエンス…」
友「ねぇ、知ってる?」
男「ん?あぁ…何?」

 これから読みふけようと思ったところで、友から声がかかった。

友「古い地層から出土した化石の多くはね、大地の圧力によって急激に縮小された物だって話。」
男「…?あんまり聞いた事無いな、専門家かなんかのあれ?」
友「ううん、今考えた。」

 即興かよ…

男「…意外と、ありえる話かもな。」
友「ん…ほんと?」
男「あぁ…」


97 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/15(火) 23:00:58.88 ID:C9NJm7sB0

男「ただ、そういうことを専門家が考慮しないかってのは、別の話だと思う。」
友「……そだよね」
男「ふん…だとしたらウルトラサウルスとか、実物はすげぇ事になるかもな!」
友「人なんか勝てっこないねぇ~」

 話している間も、友はパネルから眼を離さなかった。

男「……お嬢さん、そちらのブースは当コースの終盤にございますよ。」
友「ん…あごめん、夢中になっちゃってた。たははっ」

 申し訳無さそうに頭をかく。

友「んじゃあ、先、行こっか?」

 尚も申し訳無さそうに笑う友に、軽く頭をなでてやる。

男「おう」

 そのまま頭を少し押し、紀元前数十億年のブースへと進入した。

ようこそ46億年へ。


98 名前:お腹空いた ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/15(火) 23:17:24.33 ID:C9NJm7sB0

男「当時の恐竜が、今の地球上に居たらどうなるんだろうなぁ。」
友「街が大混乱になるんじゃない?」
男「はは、どうだろうな。」

 多分、解釈の仕方によると思う。

男「隕石の衝突による気象の崩壊を生き延びたとして―」
男「今もまだ原始の時代が続いていたか、恐竜がスーツを着て人間に首輪を着けているか。」

男「もしくはその逆か。」
友「うぅむ、おっそろしいなぁ。」
男「俺たちがここに居るのは、物凄い偶然なんだと思うよ。」

 ほんとうにそうか?

男「………っ」
友「…?どしたぁ~?」
男「い、いや。なんでもない。」

 一瞬、今ここにたっていることが酷く滑稽に思えた。


99 名前:今夜中に中盤終わるかなぁ ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/15(火) 23:32:17.79 ID:C9NJm7sB0

―――――。

 粛々と二人で地球の誕生からを文字や文献で追いかけて、そろそろ出口に差し掛かるかというところ。
友があの地球年表で食い入るように見つめていたブースへと進もうとするとー

友「………。」

 ―友が寂しそうな表情で立ち止まった。

繋いだ手が歩につりあわず、こけそうになる。

男「どした?」
友「い、いやぁ…やっちゃったなぁ…たははっ」

 何かをごまかすように、友は笑いながら焦っていた。

友「ちょ、ちょっと思い出があれ過ぎたかな」
男「?お~い、行くぞ。」

 体の中の誰かが、友の挙動を執拗に気にかけている気がしたが、
早いところ売店で友と軽食を嗜みたかった俺は、友の手を握り返して強く引いた。

友「お、おう……ぉぅ…」

 ごくりと喉を鳴らした友は、逆に俺の手を引いて先へ先へと進んでいった。

男「ぉ、おうぉい!」

 思わず声を漏らした俺に、周りの人たちは何事かと振り返っている。
そんな様子も気に留めず、ついに一見もせずに友は”人類ブース”を抜けて、特設の”隕石ブース”へと進んでしまった。

友「……ッ………ぃ…っ!!…ぃ…でっ……!!」

 何事かをぼそぼそと呟きながら、そのブースすらも通り抜けてしまおうという勢いで進み続ける友。

も、もしかして……催しちまったとかか…?

そ、それは大変だ。
友の手をしっかりと握り、そのペースに合わせて一緒に進もうとし――


――視界の端に、それを見た。


100 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/15(火) 23:44:13.75 ID:C9NJm7sB0

男「…あ……れ…?」

 思わず、体が固まる。

思考がぐるぐると静止できずに回り続ける。

一つ一つ、何かが形成されてゆく意識の中――

友「…ぃ…でっ…みないでっみないでみないでっみないでみないでみないでみないでっ…」

――友の囁きの断片を、理解した。

男「…こ、こって……動物のブース……だっけ、か?」

 ”恐竜を絶滅させた隕石のかけら?!”とでかでかかかげられた小石の横、

―夢の中で見た、ケダモノの偶像が立っていた。

男「あ…れ……?…い、いやいやいや、あれは夢だったし……」

 言葉と裏腹に、冷めた思考で紹介文を読み解く。

男「え、っ…いやいや……閻魔帳の俺なんて知らないし……」

――隕石のかけららしきものをDNA解析して作り上げた、当時の生物らしき2足歩行生物のモデリングフィギュア――

男「いや、っ。だって、俺、こいつ殴り飛ばして、か…過去に……」

男「過去に……」

 冷静な判断など、出来なかった。

友「みないでみないでみないでみないでっみないでみないでみないでみないで…」


101 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/15(火) 23:54:53.78 ID:C9NJm7sB0

 ―確かめよう。

男「確かめよう。」

 これがなんなのか

俺は何を見たのか。

―確かめよう。

 拳を振りかぶり、小石のようなそれ――隕石のかけらが収納されたガラスケースに殴りかかる――

女「そこまでです、タイムトラベラー!」男「………」

男「……また…か」

男「…また………か…ぉ…」

男「…またかよぉっっっ?!?!?!!!!」

 振りかぶった拳を、突然俺の前に現れた女に向かって振り下ろ――

――思考の端に、蒼い銀河のイメージが割り込む。――

――突き出したはずの拳は、体の後ろで縛り上げられ、俺は地面に組み伏されていた。

女「…痛かったですよ。」

 ペッと、視界の端に赤黒い液体が落ちた。

男「…おまえ…おまえぇっ!!」

男「知ってるんだろ!!俺は何なのか!!俺がコイツを夢で見た理由も全部わかってるんだろ!!」

男「俺の中でうじゃうじゃ増え続けてる記憶だって全部!お前の仕業なんだろうっ?!?!?!」

 俺の上にのしかかっている女に向かって叫び続ける。

その叫びに―

友「ごめんね…」

―友が謝った。


102 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/16(水) 00:06:27.26 ID:w4y02TgV0

友「ごめんね、男。ごめんなさい。」

男「……?…」

 友の突然の謝罪に、赤く染まっていた俺の思考は、少し冷静になってゆく気がした。
――しかしそんなものはまやかしだった。

友「全部…全部私のせいです……」

男「…お、おい…何を言―」

女「貴方は少し黙っていなさい。」

 うなじの辺りに、女の脚だろうか、何かを強く押さえつけられて、息が辛くなっていく。

男「……グッ……ゲホッ………ゼヒュー…」

 それでも叫ぼうとして、喉が千切れるほど声を振り絞る。

友「全部……私の勝手なんです…」

友「全部……私が作ったんです…」

友「全部……全部、全部…」

 友、お前何言って―

友「だから、男…―」

 コツコツと、カーペットに沈んだ足音と、俺の黒いジーパンが近づいてくる。

友の顔は見えない。

友「―ごめんね。」

 その言葉を聞いた直後、俺を抑えていた重さが背中から消えた。

考える余地無く飛び起きて友を見る。

男「―…い……ない…?…」

 いくら見回しても、友と女と、”隕石ブース”が見当たらなかった。

とさり―

 と、何かが俺の後ろに落ちた。

振り返って下を見る。

男「?!」


 あの、”閻魔帳”が落ちていた。


103 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/16(水) 00:12:50.83 ID:w4y02TgV0

 しがみ付くようにそれに飛びつき、ばらばらとページを捲る。

 男「友、友、友っ友っ!」

 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も

紙を捲った。

 何も浮かばなかった。

男「……っ……グゥッ…!!」

 歯を食いしばる。ギリリと顎が鳴る。

男「…いやっ!まだだっ」

 逆にページを辿ってゆく。

男「女、女、女、女、女、…」

 しかしー

男「……何も…出てこない……」

 愕然とした。

―この本には、そんな特殊な力など無いのではないか?―

 そんな邪念を振り払う気力も無く、ただただ、床の矢印に沿って歩き出した。



104 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/16(水) 00:26:52.32 ID:w4y02TgV0

―家に戻れば、友が居るのではないか?―


 その予感は、ゆっくりと薄れていく友との記憶に流された。


―友の家に行けば、友の義父さん義母さんに…―


 その考えは、薄れいく友の名前という記憶に流された。


どうすることも無気力感と、着々と記憶が無くなってゆく不安感に、ただただ出口へ向かって歩を進める事しか出来なかった。


 床の矢印が消え、コースを回りきった辺りで、行きとは逆の方向に土産屋をみつけた。

男「…あぁ、大回りしたのか…」

 無気力に、そんな客観的なことをぼやいていると―

店員「おんや?あんちゃん彼女さんはぃ?」


 土産屋の店員がそんな事を言った。


男「………」

 饅頭の棚を見てみる。
アンモナイトの焼印が押されたサンプルを見つけた。

ぎゅっと、肩を掴まれる。
 漫然とそちらに振り向く。

店員「…まさか、振られたのか…?」


 え

男「え」

店員「いやいや!何も言うない!ほらっこの”餡も無いとっ!饅頭”一個くれてやるからよぅ!」

 元気だしないっ!!―
店員はそんなことを言いながら、饅頭を俺の手に握らせて恋愛遍歴を語っていたが、
―しばらく呆然とした後、俺は土産屋から駆け出した。

男「店員さんっ!ありがとう!!」
店員「おぅっ!がんばんなぃっ!!」

 俺の前から、友は消えた。


記憶も徐々に消えている。

―けど、

男「―けど、完全じゃない!」

 希望が見えた気がした。


105 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/16(水) 00:39:44.53 ID:w4y02TgV0

―――――。

 薄れゆく自分の記憶の中、必死に帰路を手繰り寄せ、バスやタクシーも煩わしく走り続けた。

バンッ!!

男「ただいまっ!!」

 玄関をこじ開け、叫びながら靴も脱がずに2階へ駆け上がる。
階下から母親の「おかえり~!」という声が聞こえたが、そんなものに構っている暇は無い。

自室に飛び込み、日記を探す。
しかし見つからない。

男「いっつもここになおしとくのにぃぃぃぃ、むぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 イライラと、物を散らかしながらその中を探る。
記憶の中も探る。

男「えぇと…確か確か、あっ!昨日読んだ!!」

 その時、最後に置いた場所であるベッドの上を探す。
邪魔な毛布を投げ飛ばし、その下にあった日記をひっつかむ。
 開き放してあったので、そのページを覗き込む。

『男へ、』

 友の字で、そう始めに書かれた文章を見つけた。

『明日のデート(って男が言ってたんだしそれでいいよね)が、すっごく楽しみです!』

『初デート、良い思い出にしようね。』

男「あったりまえだばっきゃろー。」

 読んでいる間にも、その文章がうっすらと消えていって、俺の中の焦りを加速させた。

乱雑にページを捲り、自分の筆跡を探る。


106 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/16(水) 00:56:01.49 ID:w4y02TgV0

 しかし、みつける毎に、文字が消える。
その記録した時間へ飛ぶ間も与えられない。

男「くっそ、くっそ!くっそっ!!」

母「どうしたの~?」

 階段を上る足音と、母の声。
近づく存在が、更に俺を焦らせる。

男「お前なんかしらねぇっつぅんだよっ!!!」

 意味も無く叫ぶ。
反感をあらわにする叫びが聞こえたが、俺の耳には届かなかった。

男「ヤバイやバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイっ!!」

男「文字が全部消えてくってことは…俺の行為が書きかえられてるんだ!!」

男「友が本当に消えちまったんだとしたら、俺の行為全部が書き換わるって、そういうことだよなっ!!」

 古い記事へ、古い記事へと捲るも、ついに最古の文字はも完全に消えてしまった。

男「くそっ!!印刷文字まで辿るか…?…いや、印刷機に巻き込まれて終わりだ…」

 ぐぐっと握りこんだ表紙越しに、自分の指圧で手が痛みを感じる。
親指で押し込んだ部分はへこみ、少し千切れて―

男「!!」

 天啓―とはこういうことを言うのかもしれない。
文字が消えても、裏につく跡はどうだ?!

 紙をすらっとなぞる。

男「サラサラ)………他に手は…」

 ふと、あの”閻魔帳”を思い出す。

母「誰がしらねぇだって?」

 がちゃりと、母親が部屋に入ってきた。


107 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/16(水) 01:06:30.69 ID:w4y02TgV0

男「あぁ!ちょうど良い所に!!」
母「えっ」

 俺の熱烈な歓迎に、少々怒り肩に見えた母親も虚を突かれたように立ち尽くす。

男「分厚い本知らないですか?!ちょうどこのくらいの!B4サイズで!!」

 手に持っていた分厚い本を母親に見せる。

母「えっと…B4ってのがよくわからないけど、…それなら今目の前に…」
男「えっ」
母「えっ」

 手の先を見る。

しっかりと掴んでいた。

男「………」
母「………」

男「ただいま」
母「おかえり」

 そういって母は、「おやつあるから手荒っておきなさい」と言って部屋を後にした。

母親を眼にした途端、頭の中に両親との記憶がぽつぽつと湧き出てきたが、気持ち悪さを誘うだけで嬉しくもなんとも無かった。

男「とにかく今はこいつだ。」

 パラパラと”閻魔帳”を捲る。

考えるのは俺のこと。


108 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/16(水) 01:24:19.12 ID:w4y02TgV0

 一般的に知られているタイムトラベルと比べると、俺の能力は制約が特色が強すぎる気がするはずなのに、女は何も指摘しなかった。
その上、俺以外のトラベラーに会ったことは無いといった。
女は、何も記録した様子は無かったのに時間を飛び越えられた。

 これらを合わせて考えて、女は俺と能力の制約は同じだと見れる。
そうすると、何を頼りに時間を飛んでいるか…

それはズバリ――

男「―”閻魔帳”か…(パラパラ」

 アイツが俺にはじめてタイムトラベルを実演して見せた時、俺はアイツの話を特に理解していない素振りはしていない。
それなのに女が俺に「納得させるため」と称して未来から飛んできてみせたのは、
俺が未来で話した、もしくはこの本に記されていたと考えるべきだ。

 やがて文字が浮かび上がってきた。
それと同時に表紙から最初のページへと戻る。

冒頭に記されていたのは、やはり”ケダモノ”のこと。

男「…俺は、恐竜の絶滅をこの眼で見たのか…?」

 博物館での、”隕石ブース”を思い出す。

男「いや…今は友だろうが。」

 1ページ2ページと捲る。

男「!!」

 みつけた。

男「ここだ…」

 指でその部分をなぞる。

消える気配は感じない。

男「…”俺の正体ばれちゃった?!”……」

男「…なんて間抜けなんだ…ぷっはははは…」


 読み上げた部分に手を重ねる。


男「じゃあな、見知らぬマザー。これでこの時間のアンタとはオサラバだ。」

 体中を、冷たい蒼い光が包んだ。――



109 名前: ◆N1RGqRourg[saga]投稿日:2011/11/16(水) 01:37:45.29 ID:w4y02TgV0

―――――。

 暗い世界。遠くに窺える白い粒を目指して、俺は光速を越えていた。

蒼い光。

ただ見受けることの叶わぬ光。

儚き蒼が、麗しい青の星へと降り注ぐ。――


 ――校舎と食堂をつなぐピロティ、そこへ俺は降り落ちた。

蒼い光が霧散して、体を暖かさと重力が支配する。

男「……成功…したのか…?」

 不安になり、辺りを窺うと、――


女「そこまでです、タイムトラベラー!」男「またかよォッ?!」


―背後から、最早お決まりのようなセリフが聞こえ

た気がした。

男「………」

 振り返っても、誰も居なかった。

と、言うより。

男「人の気配がしない…」

 どこか遠くから生徒の喧騒ぐらい聞こえていたものだが……

男「…もしかして、場所だけ飛んで時間は巻き戻ってなかったり……?」

―バサッ―

 目の前に、何かが落ちた。

男「?…」

 近づいて、見下ろす。

男「!!」

 ”閻魔帳”だった。
あわてて手元を見るが、元々持っていた方は無くなっていた。

男「……っ……!!(ゴクリ」

 恐る恐る、それを手にする。


表紙を開いて、1ページ目を見ると――



『パラドックスへようこそ。』



――そう記されていた。




118 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/16(水) 09:46:48.46 ID:w4y02TgV0

―――――。

 ある男は、遠い未来から捨てられた。

人間たちに望まれて、身体を作る粒一つ一つから造られた男は、

”歴史を守る組織”と教えられて加入したのは、成長を見限り、現在までの歴史の安定のみにすがる弱者の集団であった。

男は、過去を守るのはもっともだと言った。―

―しかし、同時に今から未来を変えてゆくのは大切な事だとも言った。

 仲間たちはコレに不安を覚え、歴史の調停と称した雑務を男に与え、遠い時間の中に葬り去ろうとした。

超古代の生物の終末。――氷河期の到来を視認せよとの指令に、男は静かな憤りを感じた。

 命令違反とは知りつつも、ささやかな抵抗として、飛び越える期間を刻みながら目的の時代へと向かう男。

幾多の跳躍の中、男が見たのは人々の、喪失を憂う表情だった。


 男は大層驚いた。

未来では、誰もあんなに表情豊かではない。

人はあそこまで楽しく笑い、あそこまで悲しく涙するのかと感激した。

やがて男は、時を自在に操る自らの力に恐怖する。

―この力が、人々から未来を渇望する心を奪ったのではないか。―

 自己嫌悪が膨れ上がる。

胸がつまり、頭が重く感じる。

しかしいやいやと、その考えを振り払う。

―これまで見てきた人々は、皆過去を変えたがっていた。その人々の望みの結晶が私なのだ。―

 と、男は悟りを開いた。

ならば、人々が望むように、たった一人だけ救って見せようと強く願い、

――人類の始まりを一人、救って見せたのだ。


119 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/16(水) 09:59:06.61 ID:w4y02TgV0

 ある女は、原始の時代から救い出された。

遠い始まりの時代、弱肉強食の食物連鎖へと飲み込まれんとする寸でのところで、空から降り積った光に救い出された。

家族を喰われ、帰る場所も頼る当てもなくなった少女の腰に、蒼い光はやさしく腕をまわす。

光に抱かれた女は、ひんやりとした感触の中に、言葉は無くとも感じる、暖かな人の鼓動を聞いた。


 瞬く間に空へと連れ攫われる女。

こんなに美しい景色を見たことがあっただろうか。

放射状に拡大される星空の中、虹色の光の向こうの暗闇に、蒼い銀河をみる。

振り返ってはいけないという光の言葉もわからずに、女は自らの過去の姿を背後に見た。

その景色が、後の後まで女を大層狂わせてしまった。

 青い銀河を抜けた先、麗しい青い星に光とともに降り積った女は、男と永遠に切れない絆を得た。


120 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/16(水) 10:03:36.77 ID:w4y02TgV0

 やがて女は、光とともに永遠の時を過ごした。

―そして、その先で共に居た光がどのような試練を迎えるかも知ってしまった。

―光はやがて、永遠の時の流れに取り込まれ、いずれ野生へと帰っていってしまうことを…。


 光の一番傍であり続けた女は、時を操る力の片鱗を得た。

――そして女は、遠い未来から一人の男を救おうと決めた。


121 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/16(水) 10:08:48.14 ID:w4y02TgV0

 始祖を救いて自らを殺そうとした男と、

未来を憂いて友を失くさんとした女が、

 遠い未来から始まりの時へ―

全ての発端から悠久の時へ―


 ―互いに互いを救い合おうと心に決めた一組の番の思いは、やがて一つの時代で混ざり合う。

一つの新たな世界を築き上げた。


122 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/16(水) 10:22:38.39 ID:w4y02TgV0

―――――。

『パラドックスへようこそ。』

 ”閻魔帳”にはそう記されていた。

男「…えっ……、なん、なんだよ…」

 俺はただ、過去に戻って友に目の前から消えて欲しくなかっただけだ。
パラドックスなんてこれっぽっちも望んじゃいない。

『―けれど、その為には貴方はここへ来る必要がありました。』

 ―俺の思考を読んだかのような質疑応答に、「あぁそうか」と思い直す。

”閻魔帳”はパラレルワールドの事象すら記すんだったな。

『ご名答です。』

 ―だとしたら、異世界で誰かが俺のことを読んでいるのかもしれない。

『―ご名答です。』

男「―お前は…女か?」

『無関係ではない。と、申し上げておきましょう。』

 都合が悪くなるとうやむやにされそうな答えだったが、まぁ今はいい。
―それよりも、だ。

男「パラドックスって…なんだ…?」

 タイムパラドックスの事か…?

『またまたご名答です。』

 少し、こいつの文章は癇に障る。が―
―そんな事はほんとうに些細な事だ。今気にするべきとは思えない。

男「それで…俺はなんでこんなところに…パラドックスなんかにたどり着いちまったんだ?」

『失礼を承知でお訊ねします。』

『―貴方はどういうつもりで時を越えましたか?』

 …こっちが質問をしているのに質問で返すとは、宣言どおり失礼な奴だ。
……まぁ、いいか。

男「消えた友を……俺にとって必要な人を取り戻すためだ。」

 本来、この力ってそういうどうしようもない時に使うための力のはずなんだ。
ふと、考える。―こいつは友を知っているだろうか?

男「あ、友っていうのは、俺の…―」
『―惚気は結構です。』
男「あ、さいですか…。」

 親切心を一蹴された。



123 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/16(水) 10:38:39.72 ID:w4y02TgV0

『そう、貴方はその”友さん”とやらを失いたくないから、時間を越えた。』
『けれど、彼女は彼女自身が自白したとおりに、貴方が先ほどまでいらっしゃった世界を作った存在だった。』
『―お答え致しますが、貴方の元居た世界のままでは彼女は救えない。』

男「っ」

 予想は出来ていた。
世界を作った本人が、俺の前から消えた。
更には俺の中の記憶まで消えていた。

 ……あれ、そういえば―

男「―い、今はおれ、俺は友のことを全部覚えてるぞ!」

 今しがた居た時間――”閻魔帳”の言い方だと元居た世界――では消えていった記憶がだ。

『残念ながら、彼女が貴方に覚えていて欲しかった記憶は、あの世界で起きた事のみには留まりません。』
男「えっ」

『はっきり言います。』
『―貴方は、彼女の思い出の中の人の模倣なのです。』

男「………」

 今の俺は、似せて作った紛い物。
友が望んだ存在に、パッと見近いが別の存在…?

男「……っ…!!」

 拳を痛いくらいに握りこむ。

男「…それがどうした。」

 ほんと、それがどうした。

男「俺が友に傍に居て欲しいだけだ、」
男「―俺が偽者だろうが関係ないっ、」
男「――伊達に2日もなやんでねぇぞぉっ!!」

 そうだ、俺が何者かなんて悩み、答えは昨日出したんだ。

男「俺が何者か!なんてどうでもいいっ!!んな哲学に興味は無いっ!!」
男「俺がどうかなんて俺が生きて決めていく!」

男「―その為に、友には一緒に居て欲しいだけだっ!」

 心の奥から、ほんとうはずっと友に言いたかった言葉を吐き出した。
たった数日前に始まったばかりの人生なのに、それよりずっと前から、友のことを大切に思っていた気がする。

『……結構。』
『今ので、あらかた条件はそろったと思います。』

男「?」

 じょ、条件?…っ、てなんぞ?


124 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/16(水) 10:54:00.51 ID:w4y02TgV0

『失礼、実は話の途中だったのですよ?』
男「あ、あぁそれはどうも、もうしわけないことを…」

『貴方の元居た世界では、友さんという存在はもはや消えていった存在。』
『―しかし、世界の創造主が消えたというのに、友さんが居たという記憶を、貴方は最後まで失わなかった。』

『――…なにより、貴方の存在が消えなかった。』

『貴方を作るために造った世界なのに、―です。』
『彼女はどうやら、貴方を助けたかったのでしょう。』
『永遠の時間に閉じ込めてでも―ね。』

男「…永遠の…時間…?」

『別の世界の話をしましょう。』

『別の世界では、一人の時間渡航者が居れば、他にも数人居ると考えた方が良い。むしろ自然だ。』
『その理屈はわかりますね?』
男「ん、あ、まぁ…なんとなく…」

 それは俺も悩んでいたのだ。
些細な間と言えども、時間を繰り返したり無くしたり、未来まで変えたりして、
そこには必ず人為的なものを見て取れるはずなのだ。
それを全ての人が見過ごすのだろうか?―と。

『時間渡航者同士のいざこざは本当に恐ろしい…』
『能力者の多くは、本当に畳一畳分の機械に乗って飛び回ったり、一見するとなんの制約もないように見えたりもします。』
『―そんな中で貴方の能力の制約…これは中々に悪用されやすく、捨てられやすい…』

 な、なんか物騒な話になってきた…


125 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/16(水) 11:06:43.49 ID:w4y02TgV0

『そんな貧弱の能力しか持たない人が、とても優遇された能力者に眼をつけられないはずが無い。』

『なのに、友さんはタイムトラベラーが貴方のみの世界を作ろうとした。』
『―初めは、貴方から色々搾取するつもりかと思っていましたが、こちらで調べてみると、真逆だという事実が浮かんできましてね。』
男「真逆の…事実?」
『それに関しては、ご自分で見つけて差し上げてください。それを友さんは望んでいます。』

『―つまり、弱小な限定条件を振りかざして時を越える貴方を――貴方の原作を守りたかったのでしょう。』
『外敵の居ない、かごの中で。』

男「まっ、待った!」

『なんでしょう?』

男「まるで、と、友がとんでもない存在みたいじゃないか!そんな素振りは一つも…―」

『―「いつの時間だろうと、ボクがそこにいればボクはボクだと思うし。」―』

男「っ!!」

『「今のボクと記憶が違うのなら、それはどうしたってボクとは言い切れないから。」』

『極めつけは、貴方が時間を越える度に言う誰かへの別れの挨拶に対し―』

『―「いつも言ってるよね。」』

 友のマヌケ……
隠しきれてないじゃないか…


126 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/16(水) 11:18:43.67 ID:w4y02TgV0

『それを言うならば、それに感づかなかった貴方も貴方です。』
『時間渡航者なら、誰だって簡単に閉鎖された世界を作り出せるのですよ。』

『―今の貴方のようにね。』


 はっと周囲を見回す。

何も聞こえない、何も動いていない。

男「どうなっているんだ…」

『ようこそ、パラドックスへ。』

『ここは貴方だけの世界の始まりです。』
『貴方以外はまだ、時の流れを受けていません。』

『貴方がその世界を好きに作り変えてゆけるのです。』

『物事に関連する過去は変えられませんがね。』

男「…なら、なんで”閻魔帳”がここにあるんだ…」

『それは、貴方が持ち込んだものです。』

男「…だって飛ぶときはしっかりと握って…!――」

『―貴方が飛んだ先の時間では、その本は誰が持っていましたか?』

 ………

男「っ!!」

 女だ!

この時間では確かに女が、ちっこいくせに勝気な表情でこの本を持って「そこまでです、タイムトラベラー。」と俺を呼び止めたんだ。

『その本はですね、パラドックスの影響を受けにくいのです。』

男「受けにくい…?」

『難しい話になるので、割愛しますが…まぁ近い内にわかりますよ。』



127 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/16(水) 11:29:59.34 ID:w4y02TgV0

『そちらの世界、貴方はどうしたいですか?』

男「………」

 そんなもの決まってる。

男「友を、女を、俺の生活を取り戻す。」

『結構!その身勝手さは、まさに”男”の名を名乗るにふさわしい!!』

『友さんがオリジナルとして慕った男は、身勝手なくせに人の為ならば何だってするような奴でした!』

『人と関わった記憶の極度に薄い貴方が”男”になれるか心配でしたが―』

『―”閻魔帳”を見るに、今の貴方は確かに全ての”男”と深いところで繋がっています!!』

『さぁ、その本を握り締めて、貴方の見た夢を辿ってください!』

『貴方の見た夢は、友さんと貴方の思い出です…。』

男「……ひどいネタバレをされた気がする。」

『愚鈍な貴方の事です。コレぐらいのサービスは特別ですよ。』

 ボロクソに言われながらも、”閻魔帳”の最初のページを開く。

―飛ぶ先は、”ケダモノ”とやらから少女を守る場面だっ!!


『―頑張れよ、俺。こっちは女ちゃんとの約束があるんだから…』

男「…まかせとけ、オリジナル。」

『そういう卑屈なところが違うのかなぁ~…』

 情け無い異世界の俺のぼやきを視界の端に見受けながら、俺の体は再び蒼い光に包まれた。




 
132 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/16(水) 23:14:48.03 ID:w4y02TgV0

―――――。

男「―――ッ!!」

 舞い落ちる。

降り積る。

ケダモノが少女に飛びつかんとしている様が上空から既に確認できた。

これは、俺が夢でみた景色だ。

―空気うっすいっっっ!!―

 着地と同時に踏み込み、腰だめに構えた拳を後部に半歩前へ出る。

これだけで少女に奴のまがまがしく尖った爪とか牙とかは届かないはずだ。

―後は、拳を全力で叩き込むだけ―

 だが、

―みえねぇぇぇぇぇ!!―

 蒼い光が体から外へと霧散していて、視界が確保できない。

露ほどもない、第6感に頼ろうとして、止める。


―奴の熱を感じれば、いけるんじゃないか・・・―


 違和感を察知したのだ。

いつもなら、蒼い光が体から剥離していくと同時に、外気の温度の高さに安らぎを感じるはずなのに、
今回に限ってはあたたかさなどかけらも感じない。

―状況が状況だからなのかも知れないが、使えそうだと咄嗟に思考を切り替えた。





133 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/16(水) 23:32:43.95 ID:w4y02TgV0

 周囲を濃く包む蒼い光の粒子達。

それが空中で静止しているように視えた。

しかし、僅かだが、確かに流れ動いている。

一定の方向、俺から離れるように、全ての光は動いていた。


 視界前方に、違和感を覚える。


2,3粒程の光が、俺の方へと戻ってくる。


―跳ね返ってる…?そうかっ!!―

 こちらへ漂ってくる粒子を撃ち抜くように、その更に向こう側へと拳を突き出す。

繰り出す合間にも、腕から無数の蒼い光が爆発するように散ってゆく。


突き出した拳が、何か不快な暖かさを持った柔質感に包まれる。


 その時を待っていたかのように、辺りの景色が加速を始める。

体を包む薄い暖かさ。

光を吐き出し続ける拳がケダモノの腹にめり込んでいた。

 一瞬の生暖かさに眉根を吊り上げ、腕がはちきれんばかりに拳を振りぬく。


「――――ァッ!!」


 よろめきながら、小さな怒号を漏らす。

上手く重心が乗ったようで、ケダモノはおもしろいぐらいに目の前の傾斜を転がり上ってゆく。


134 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/16(水) 23:49:38.07 ID:w4y02TgV0

 安定しそうに無い姿勢を、そのまま前転の勢いに使う。

肩、背中、腰と地面を転がり、脚がつくとそのまま立ち上がった。

―あー…さて……。―

 問題はここからだ。

この後、かっこつけたこと叫びながら一発お見舞いしようとしたのは覚えてるが―

―決まったか決まってないかは覚えてないんだよなぁ~……―

 というか視ていない。

思わず前傾姿勢でガクリと肩を落とすが、あわてて姿勢を正す。

先ほど踏み出した足を、今度は半歩後ろに引く。


―確か、手が派手に蒼く光ってたよな…―

 今の、跳躍後の余韻の中かました正拳よりも派手に光が溢れていたはずだ。

だが今、跳躍時の蒼い光は完全に失せてしまっていた。

―…ということは、またどこかの時間に飛びながらかますのか…?―


 なんという4次元さっぽう。


しかし、媒介とする情報が手元に何も無い。

―”閻魔帳”は、多分、この時間にあるべき場所にとんでっちまったはずだ。―

 パラドックスの影響を受けにくい…はずだったから。



136 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/17(木) 01:24:39.90 ID:HPCLQx3M0

眼だけで、簡単に周りを見まわす。

クレーターの縁にぐるりと囲まれているが、それ以外になにかタイムトラベルの媒介になりそうなものは――


――あ、そうか。――

 数時間前まで居た、”隕石ブース”を思い出す。

こいつの再現人形みたいなものが展示されていたはずだ。

―あぁ……そうかそうか…―

 夢の中での叫びを思い出す。

そういうことか。

つい、口端がつり上がった。


―でも、そんなことできるだろうか…?―


 いや、必ず出来るんだろう。

オリジナルめ…、”貧弱な能力”だなんて大嘘こきやがって…



 蒼い光を呼ぶ。

クレーター内側の溝から噴出した光が、うねりながらも幾本もの筋となって大量に拳にまとわりつく。

男「小さい女の子を泣かせる奴は…っ」

男「過去に飛ばされて死んでしまえっ!!」

 同じく腰だめに構えた拳を、今度も全力で打ち込まんとする。

ギリッと歯を食いしばり、体中の筋をビキビキと軋ませて繰り出した殴打。

男「~~~~~ァァーーーーーッ!!!」

 感じた事も無い痛みに、毛の先一本一本まで悲鳴を上げているようだった。


男「ガァッ!!」

 泣き言をかみ殺す。
更に全身を力ませて、蒼い光の流れを思考だけで操る。

男「―俺も一緒に行くかもなぁっ!!」

 ケダモノの体は、完全に蒼い光へと粒子化した。

前へと突き出した腕からは、まだ蒼い光は離れてくれない。

空へと吹き上がる、竜巻のような光の奔流。


足から、腕から、粉々になって巻き込まれていく感触がする。


男「おぉ…俺、このまま隕石衝突直後の時間に飛ぶのかな……」


 体の粒子化が、肘膝まで及び、覚悟をゆっくりと固める準備を――


友「だめぇっ!!!」


137 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/17(木) 01:46:23.11 ID:HPCLQx3M0

 俺の体を蝕む、蒼い渦の中から、友が飛び出してきた。

男「友っ?!」

 友はそのまま俺の体にしがみつく。

―あぁ!抱きしめ返したいのに何でこういうときだけ腕が無いっ!―

 たった数時間だが何日間にも感じた間、俺が望んでいた人が、目の前にいるのに。

友「ばかっ!!ばっかやろう!!!ボクがどれだけ頑張ってお前をあの世界に作ったと思ってんだ!!」

友「お前を助けるために!どれだけガマンしたと思ってるんだ!!」

 首をがっちりと両手でホールドされて、友の顔は窺えない。
しかし―

男「へいがーる、涙声でそんなこと言わんでよ…」

友「うっさいっ…!!泣いてない!!!」

 頬や首筋に感じる冷たい感触は……俺の冷や汗なのかな。

男「悪い、友。」

友「なんだばっかやろう…」

男「正直、また会えただけで悔いは無い。」

友「…っ!!」

 首元に抱きつく力が、ぐっと強くなった。

友「ばっかやろう…ほんとにばっかやろうっ!!」

男「それしかいえんのか」

友「だまればか!また、またお前は私の前から消えるのか!!」 

友「一番最初の友達だった時も!仕事の相棒だったときも!!」

友「やっと普通の恋人になれると思ったのに、お前は消えるのか!!」

友「私の命だけ救って!そうして消えるのか!!なんどやりなおせばずっと一緒にいてくれるんだお前はぁっ!!」

友「お前はなんでいつも私を助けるんだぁっ!!」
男「………」

 俺が生まれた理由。―

―こいつが望んだから。

俺がここにいる理由は、―

男「お前と一緒に居たいからだっ!」


138 名前: ◆N1RGqRourg[sage, saga]投稿日:2011/11/17(木) 02:01:21.71 ID:HPCLQx3M0

男「やっと言えた…」

友「ばかっ!!こんな時に言うな!」

男「いいや!こんな時だからこそ言うね!俺はお前が居ないとだめだ!だめだめだ!」

友「あきらめるなよばかぁっ!!」

男「ばかばかいうなばか!俺だってあきらめたくねぇよ!!」

友「わかった!私が男の物で時間を未来に辿るから…っ」

男「もうほとんど残ってねぇよ!お前だって今巻き込まれてんだぞ?!とっとと離れろ!!」

友「やだっ!離れない!!一緒に居るっ!!」

 友の肩まで、粒子化しはじめている。

男「この俺のことは諦めろ!!他の俺を当たれ!」

友「なんで……なんでそんな酷い事言うんだよぉ…」

 ここは心を鬼にして、泣かしてでもこいつを引き剥がさなければならない。

俺の手足を完全に砕いてか、光の嵐は勢いを増して、明滅する巨大なすり鉢型の壁に見える。

友「私の…私の思い出を全部詰め込んで……私のかけらなのに…」

友「この男じゃなきゃ!…そうじゃなきゃ…もう立ち上がれないよ…」

友「……男…諦めないでよ…」

友「私だって、男に助けられて、パラドックスに放り込まれて、男がいない世界を知っちゃったんだよぉ……」

友「だから…だから…っ!!」

女「そこまでです、お惚気トラベラー共…」

 えっ

―――――。




 
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